元気がない

【乳腺腫瘍】犬の自壊してしまった乳腺腫瘍

犬の乳腺腫瘍については以前お話ししたことがありますが(犬の乳腺腫瘍 ~お腹にしこりがあったら注意!~ – 代官山のHALU動物病院)、
今回はその中でも自壊してしまった乳腺腫瘍についてお話ししたいと思います。

乳腺にできるしこりを乳腺腫瘍といいますが、避妊手術を行っていないメスに多く、犬の乳腺腫瘍は良性と悪性の発生率は50%ずつと言われています。
良性であっても悪性であっても乳腺腫瘍は大きくなることがあり、大きくなりすぎると腫瘍自体に栄養が行き届かなくなり、内部が壊死したり破裂してしまうことがあります(自壊)。

自壊してしまうと腫瘍から漿液(透明や血混じりの液体)が浸出したり、細菌感染を起こし排膿することがあります。
また、強く痛みを伴うケースが多いです。

自壊してしまった乳腺腫瘍は、基本的には外科的に切除することが推奨されます。

しかし、年齢や持病など何らかの理由で手術ができない場合は、消毒や洗浄処置といった対症療法で傷口のコントロールをする場合もあります。

実際の患者さんのご紹介です。

今回は11歳の未避妊の女の子で、ここ最近で急激に乳腺腫瘍が大きくなってきたとのことでした。
本来であれば手術が推奨されるのですが、この子は持病があったため、すぐには手術はできない状態でした。
膵炎治療のために入院している間、洗浄・消毒処置を毎日行い、退院後もおうちで毎日洗浄・消毒をしてもらいました。

自潰直後の写真です。

※刺激の強い写真ですので苦手な方はご注意ください。

自壊した犬の乳腺腫瘍

そして洗浄・消毒処置を始めて12日後の写真です。

洗浄・消毒できれいになってきた自壊した乳腺腫瘍

さらに1週間後の様子です。

きれいになった自壊した乳腺腫瘍

飼い主さんの日々の処置により、傷はとてもきれいになりました!

しかし乳腺腫瘍がなくなったわけではなく、また時間がたてば大きくなって自潰してしまう可能性が高いため、体調が万全になった時点で外科的に乳腺腫瘍を切除し、同時に避妊手術も行いました。

今回は洗浄・消毒処置によりとてもいい経過を取る事ができましたが、なかには自壊による感染や痛みが強く生じ、コントロールする事が難しい場合もあります。

一番の予防法は早めの避妊手術です。

2回目の発情(生理・ヒート)までに避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍の発生リスクをかなり抑えることができます。

また未避妊の女の子は乳腺腫瘍だけでなく、子宮や卵巣疾患も多く起こりますので、できるかぎり早めの避妊手術をすることを強くお勧めします。

麻酔や手術にご不安があればいつでもご相談ください。

よくある質問

Q.自壊した乳腺腫瘍は他の臓器に影響を与えることはありますか?

A.乳腺腫瘍が自壊すると、細菌感染をきっかけに全身状態が悪化することがあります。
腫瘍そのものが悪性の場合には血管やリンパを通じて肺や肝臓など他の臓器に転移する可能性もあります。
傷の管理と経過観察をしっかり行い、少しでも異常があればすぐに動物病院へご相談ください。

Q.おうちでの洗浄や消毒の際に注意すべきことは何ですか?

A.自壊した傷口はとても繊細なため、ゴシゴシと強くこすったり、不適切な市販薬を使うと症状が悪化する場合があります。
獣医師から指示された消毒薬や方法を守り、清潔な手や道具で処置してください。
痛みが強い、悪臭・膿が増えるなど異常があればすぐに受診しましょう。

Q.もし腫瘍が再度自壊した場合、飼い主としてどう対処すればいいですか?

A.再び自壊が起こった場合は、まずは出血や浸出液を清潔なガーゼなどで軽く抑え、無理に圧迫しないようにしましょう。
ご自身で消毒・洗浄を行う前に、できるだけ早く動物病院を受診し、適切な処置・アドバイスを受けることが大切です。

渋谷、恵比寿、代官山の動物病院(年中無休、年末年始も診察している動物病院)
HALU代官山動物病院
03-6712-7299
info@halu.vet

 
 

担当獣医師

腫瘍科

佐々木 (ササキ, Sasaki)獣医腫瘍科認定医1種、JAHA内科認定医

腫瘍の治療は画一的なものではなく、同じ疾患であってもその子やご家族の状況によって、最適と考えられる治療方法は異なります。
何かお困りの事があればご相談ください。

内科・循環器科・軟部外科

游 (ユウ, Yu)HALU代官山動物病院 院長

English/Chinese Speaking Veterinarian
「たとえ病気になったとしてもその中で一番幸せに暮らせるように」
患者さん、家族、獣医師間の密なコミュニケーションを大切にしています。

内科・眼科

宮本 (ミヤモト, Miyamoto)

English Speaking Veterinarian
動物たちからたくさんのことを感じ取り、からだへの負担をできる限り少なくすること、ご家族さまとのコミュニケーションの中で治療方針をご一緒に考えていくことを大切にしています。

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