皮膚のしこり

【乳腺腫瘍】猫の乳腺腫瘍~猫の皮膚のしこり?~

今回は、当院で手術した乳腺腫瘍の猫の症例をご紹介します。

猫の乳腺腫瘍について

まず、乳腺腫瘍とは、その名の通り乳腺にできる腫瘍のことで、乳腺腫瘍は良性、悪性に大きく分けられますが、猫の乳腺腫瘍は80〜90%の確率で悪性と言われています。さらに、猫の乳腺腫瘍の25%は発見時にすでにリンパ節転移をしているという報告もあります。また、乳腺腫瘍は肺にも転移しやすく、発見時にすでに肺転移をしている症例もいます。

これらのことからも、猫の乳腺腫瘍はかなり悪性度が高いと言えると思います。

腫瘍のステージは、腫瘍のサイズ、領域リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無によって判断されます。

猫は左右に4つずつ乳頭があり、下の猫の黄色い丸が腋窩リンパ節、青い丸が鼠径リンパ節です。

診断や治療法は?

診断は腫瘍へ針を刺し細胞を取る、いわゆる細胞診と呼ばれる検査をまずは行います。そこで他の明らかに判別できる腫瘍ではないことが分かると、次は確定診断として、腫瘍を切除して病理検査を行います。その際に、必ずリンパ節も切除し、転移の有無を調べることも大切です。

治療法は、乳腺の切除になります。しかし、犬の乳腺腫瘍の切除では腫瘍のある乳腺のみ切除することもありますが、猫ではここが大きく異なります。猫では、その方法では再発率が高いため、片側、あるいは両側の乳腺切除を行います。さらに、ステージⅢやⅣでは、外科手術だけでは治療が不十分であることも多く、抗がん剤での治療を追加することもあります。

予後はステージにもよりますが、初期にしっかりと治療をすれば予後は良好とも言われていますが、3センチ以上だと4〜6ヶ月との報告もあり、早期発見早期治療が大切です。

乳腺腫瘍は初回発情までに避妊手術をすることで発生率はぐっと下がります。将来の乳腺腫瘍予防のためにも避妊手術は早めに実施することをおすすめします。

では、実際の症例を紹介します。

症例紹介

猫は8歳の猫で、乳腺部位に4個しこりがあり、リンパ節の腫れも認められたので、全てに針を刺して細胞診検査を行ったところ、乳腺腫瘍が疑われ、またその時点でリンパ節への転移も疑われる結果が認められました。

幸い、レントゲン検査で肺への転移は認められませんでした。

また、そのほかに全身状態の確認とさらに転移の有無を調べるために、血液検査と超音波検査も追加で行い、全身状態に異常はなく、リンパ節の腫大も領域リンパ節以外には認められませんでした。

手術を前提として当院の腫瘍専門外来にてもう一度診察を行い、手術に関することなどを詳しくご相談して、後日手術にて片側乳腺切除、腋窩リンパ節、鼠径リンパ節両方の切除を実施しました。

写真は、1枚目から、術前のもの(乳腺の位置を示しています)、術中、術後になります。

病理検査の結果としては、やはり悪性の乳腺腫瘍、いわゆる乳がんで、そしてリンパ節転移も認められ、ステージⅢと診断できました。

術後の経過は良好で、現在術後2ヶ月ほどですが元気に過ごしてくれています。

しかし、リンパ節転移もあったことから、今後も肺への転移などは継続して注意深く見ていく必要がある症例でしたが、飼い主様とも相談し抗がん剤での治療はせずに経過を観察しています。

繰り返しになりますが、猫の乳腺腫瘍は早期の避妊手術で発生率を下げることができます。

当院では、生後半年程度での避妊手術をお薦めしております。迷われている方は一度ご相談ください。

今回のように、以前に乳腺腫瘍を切除しても、またできてしまうケースもよくあります。そうした場合に、当院では腫瘍専門医としっかりと相談して治療方針を決定しております。

他院で腫瘍と言われたけれど治療方針に迷っている、今まで病院にあまり行っていなかったけれどできものがある、などの方は一度当院へご相談ください。

渋谷、恵比寿、代官山の動物病院(年中無休、年末年始も診察している動物病院)
HALU代官山動物病院
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info@halu.vet

担当獣医師

腫瘍科

佐々木 (ササキ, Sasaki)獣医腫瘍科認定医1種、JAHA内科認定医

腫瘍の治療は画一的なものではなく、同じ疾患であってもその子やご家族の状況によって、最適と考えられる治療方法は異なります。
何かお困りの事があればご相談ください。

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