帝王切開は、胎子が産道の大きさを上回ったり、出産の予定日を過ぎても生まれてくる気配のない場合、又は出産予定日前に胎子に異常が認められた場合等に行う手術になります。
人間の妊娠・出産では帝王切開を行いますが、実はワンちゃん、ネコちゃんの妊娠・出産においても帝王切開が行われます。
今回は、ワンちゃんの帝王切開についてお話しします。
ワンちゃんの妊娠期間は母犬の体調や年齢、お腹の胎子数によっても違いはありますが、平均約62日で前後5日程の誤差が生じます。また、お腹にいる胎子数が多い場合は妊娠期間が延長し、逆に少なければ妊娠期間は短縮される傾向があります。
胎子数の確認は妊娠約30日目頃から超音波検査上、45日目頃から頭や背骨がレントゲン上で確認できるようになりますが、小型犬の場合は、骨格が薄い為約50日目辺りで映ってくることもあります。
出産予定日、当日付近では母犬はそわそわと落ち着きがなくなり、食欲低下、排尿排便回数が増えたりといった症状がみられ、分娩から出産の流れとなります。
しかし、場合によっては妊娠56日目頃に出産する「早産」、逆に65日目以上になっても分娩状態に至らない「遅産」があります。早産の場合、生まれてきた新生児の管理が適正であれば問題なく成長することは可能です。
ですが、遅産では胎子が母体内でより成長するため、頭の大きさが母犬の骨盤の大きさを上回る等、産道を通過することが難しくなります。このまま時間が経過すると、最悪の場合胎子の命、母犬の命にも関わってきますので、その時は開腹手術にて胎児を取り出す必要があります。
今回、当院で行った帝王切開の一例をご紹介します。
【症例紹介】
患者さんは交配してから54日目で、胎子数の確認と出産予定日の確認のため来院されました。
レントゲン検査にて胎子数は3頭、母体の骨盤の大きさと胎子の頭の大きさを測定しました。


来院時のレントゲン画像です。
お腹に3頭確認することができます。
頭の幅(頭幅)が2.1cmで、母体の骨盤幅が2.3cmで、現段階では自然分娩は可能であることが分かります。
妊娠59日目に再来院された際に、再度レントゲンを撮影したところ、胎子の頭幅が2.38cmと母犬の骨
盤幅と同じ大きさまで成長していました。

オーナー様と検討した結果、帝王切開を行うことになりました。
当院では、帝王切開を行う際に母体に負担が掛からない様に使用する麻酔を選択し、且つ胎児に麻酔薬が行き着く前に母体からスムーズに摘出し、獣医師、看護師で役割分担をしスムーズに医療処置をすることを心がけています。
3頭の胎児はみんな無事、健康に産まれてきてくれました。その後の経過観察でも順調に成長してくれています。
帝王切開は時間との戦いではありますが、命の誕生のお手伝いができるとても喜ばしいことでもあります。
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