足腰が痛い、歩き方がおかしい

【前十字靭帯断裂】犬の前十字靭帯断裂、足をケンケンする、足がつかない。

こんにちは!

今回は中高齢犬の小型犬に多いと言われている前十字靭帯の断裂の症例を紹介します。

まず、前十字靭帯とはどこにあるのか、どんな役割をしているのでしょうか?

前十字靭帯とは・・・

膝関節の中にある靭帯で、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)を結び付けて、脛骨が大腿骨の前にスライドしてしまうのを防ぐ役割をしています。

前十字靭帯が断裂してしまうと、膝関節が不安定になってしまい、半月板や関節軟骨に損傷が起こったり、負担がかかってしまいます。

原因と症状

小型犬で多い原因は、膝関節の脱臼が素因となっている場合や前十字靭帯の変性、外傷によるものがあります。お家のワンちゃんが動物病院で「膝が外れやすいですね」と言われたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、そういったワンちゃんの場合、脱臼の度合いにもよりますが長年脱臼しやすい状態のまま過ごしていると、前十字靭帯断裂につながってしまうこともあります。

症状は後肢の挙上が多くみられます。後ろ足を挙げて痛そう、といった症状の場合にはすぐに診察に行くことをお勧めします。

治療

治療法は基本的に2パターンに分けられ、

①安静にして内科的治療(膝蓋腱骨脱臼がない場合)
②手術

に分けられます。基本的に基礎疾患がなく、1週間ほど内科治療を行っても反応がない場合には②の手術を行うことが多いですが、体重や年齢なども含めて検討していきます。

また片方を手術しても、前十字靭帯が変性している場合には高確率で1~2年以内に反対側の前十字靭帯も断裂してしまうと言われています。

では、今回の前十字靭帯断裂の症例のご紹介です。

症例は8歳のトイプードルで、急に後肢を上げて3本足で歩くようになったとのことでした。

身体検査、レントゲン検査の結果、前十字靭帯の断裂と診断し、この子は基礎疾患もなかったため飼い主様とご相談の結果手術をすることになりました。下の画像がレントゲン検査の画像で、左の正常の肢と比べて右はすねの骨が前に出ているのが分かるかと思います。

前十字靭帯の手術方法はいくつかありますが、当院では関節外法といって、関節の外側に人工靭帯を入れる方法をとっています。画像の矢印のものが人工靭帯となります。この症例は膝蓋骨脱臼、半月板損傷もあったため、膝蓋骨脱臼の整復術、損傷した半月板の除去も行い、関節外に人工靭帯を入れました。下の画像の黄色い矢印が靭帯となるものです。

この症例は手術が終わり1週間ほど入院して、退院しました。

術後は基本的には1か月~2か月は安静、その後少しずつ歩かせてもらうという経過になります。足をつけるようになるまでにはまだかかりますが、少しずつ正常歩行に戻ってきます。

この症例は、退院後1週間、1か月の再診時にも関節のレントゲン、触診でも問題なく、元気に過ごしてくれていました。

今回のように前十字靭帯の負担は少しずつ体の中でかかっていますが、外から見ると突然症状が現れて驚かれると思います。ワンんちゃんは見た目平気そうにしてることもありますが実際はとても痛いと言われています。

若い時に膝蓋骨脱臼があると言われたワンちゃんの場合には特に注意してみていてあげましょう!また、高齢になって後肢を突然痛そうにする、挙上するといった場合には早めの診察をお勧めします。

当院では整形の専門外来も実施しています。後肢だけではなく、前肢やその他の部位でも何かご不安がある場合には一度当院までご相談ください。

渋谷、恵比寿、代官山の動物病院(年中無休、年末年始も診察している動物病院)
HALU代官山動物病院
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担当獣医師

整形外科

安川 (ヤスカワ, Yasukawa)獣医学博士

言葉を発することができない彼らが示すサインを的確に見極め、本当に手術が必要な場合に最高水準の治療をしてあげられるよう外科技術を研鑽してきました。

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