みなさん、怪我をした時などに温める電気を当てる治療をしたことはありますか?
この方法が近年獣医療でも発達してきて、痛みがあるときや、皮膚が悪い子に使用する「スーパーライザー」という医療機器が発達してきています。
しかし、この治療法は人医療ではよく使われているものの、獣医療ではまだまだ広くは知られていません。「本当に効果あるの?」「光を当てるだけ?」など気になることがあると思います。
そこで今回は、そのスーパーライザー(温熱療法)についてご紹介です。
スーパーライザーとは、ある特定の波長の光を出す医療機器のことで、レーザーによる光線効果と温熱効果を両方持ち合わせます。
主に椎間板ヘルニアや変形性脊椎症などの慢性疼痛の疼痛管理を目的としています。また、慢性的な皮膚病、とくに繰り返す膿皮症などに対する殺菌効果も認められていたり、術後の傷口の治癒を早める効果や抗腫瘍効果もあると言われています。
ではどういった仕組みで鎮痛効果が得られるのでしょうか?
鎮痛効果の作用機序
まず、痛みというのは、神経系を経て発痛物質が放出され、それが知覚神経に作用することで痛みを感じます。この痛みによって、血管が収縮して発痛物質の代謝が遅れてしまい、痛みが続くという悪循環に陥ります。
それを、温熱効果と光線効果で断ち切るのがスーパーライザーで、下の図がスーパーライザーの作用を示したものです。
この図で示したように、スーパーライザーの光線効果(レーザー)によって知覚神経を通して痛みの認知へ至るプロセスをブロック、温熱効果によって血管収縮を緩和し、局所の虚血による発痛物質の生成のブロックや、発痛物質の代謝を促進するという面から、鎮痛効果をもたらします。
また、温かさによって血管を広げてくれるので、血流を促進して術後の組織修復の役割も期待できます。
さらに、この温熱効果は腫瘍細胞にも効果があります。腫瘍は、正常な細胞よりも血管が豊富でもろい構造をしているため、スーパーライザーによる光線効果と温熱効果によって腫瘍細胞のみを殺滅することが期待されています。
もちろん、腫瘍によって抗がん剤が効果的な腫瘍、外科適応が良い腫瘍など様々ですが、基礎疾患がありそれらの方法が出来なかったりすることもあります。
そのような場合に、近年はこのスーパーライザーを当ててみるのも一つの選択肢になってきています。
ではスーパーライザーを当てるとどのような感じなのでしょうか?
スーパーライザーはある特定の波長の光のみを出しているので、体の内部を少しずつ温めるイメージですが、表面が熱くなってやけどをする心配はありません。もちろん私たちスタッフの皮膚にも当ててみましたが、決して熱いということはなく、体の中がじんわりと温まるかなと感じるような温かさでした。
下の写真のプローブを痛みのある個所に一定時間当てることで効果が得られます。
左の写真がピンポイントで当てるタイプのプローブ、右の写真が広く当てるタイプのプローブです。
実際に当てると下のようになります。ワンちゃんは気持ちよさそうにじっとしていてくれます。
また、下の写真のプローブは特に皮膚病用のプローブになっています。上のプローブとの違いは、こちらのプローブでは殺菌作用が得られる光が出され、そのため、皮膚病用として広く効果が期待できます。
従来、痛み止めとしては非ステロイド性の鎮痛剤というのが一般的でした。
しかし、非ステロイド性の鎮痛剤というのは、効果はすぐに得られますが、その分身体への副作用に注意しなければなりません。実際の副作用としては、胃潰瘍や腎不全の悪化などが言われています。短期的な鎮痛剤としては効果は優れていますが、慢性的な痛みにたいして慢性的に使用することはできません。
そこで、非ステロイドの鎮痛剤と合わせてこのスーパーライザーを使用することで、鎮痛剤の使用回数を減らしたり、あるいは近年の研究では、光線効果は鎮痛剤と同等の効果を得られたとの報告もあります。
痛みがずっと続いている子、なかなか鎮痛剤が手放せない子、皮膚病が良くならない子など、慢性疾患にお悩みの飼い主様、一度スーパーライザーを試してみませんか?副作用はありませんので、お気軽にご相談ください。
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