「数日間ご飯を食べないだけだから大丈夫」と思っていませんか?
猫は犬に比べて食べない期間が続くと肝臓に脂肪が蓄積しやすい動物です。
特に肥満気味の猫では数日間の食欲不振が命に関わる「肝リピドーシス(脂肪肝)」へ発展することがあります。
今回は猫の肝リピドーシスについて原因・症状・治療・予防法について解説します。
■肝リピドーシスとは?
肝リピドーシスとは、肝臓に大量の脂肪が蓄積し、正常な肝機能が障害される病気です。
猫が何らかの理由で十分な食事を摂れなくなると、体は脂肪をエネルギーとして利用しようとします。
しかし、猫では大量の脂肪をうまく処理することができず、肝臓に脂肪が蓄積してしまいます。
肝臓は
- 栄養の代謝
- 解毒
- 胆汁の産生
- タンパク質の合成
など生命維持に重要な役割を担っています。そのため、肝リピドーシスが進行すると全身状態が急速に悪化します。
■なぜ猫だけ起こりやすいのか?
猫はもともと肉食動物であり
- 脂肪代謝の特徴
- 高タンパク質を必要とする代謝
を持っています。
食事を摂れない状態になると短期間で脂肪が大量に動員され、肝臓への負担が急激に増えてしまいます。
特に、肥満の猫が急に食べなくなった場合は最も危険です。
■原因
肝リピドーシス自体は「食べないこと」が原因で起こります。
食欲不振の原因には以下のような病気があります。
- 慢性腎臓病
- 膵炎
- 胆管炎
- 糖尿病
- 消化器疾患
- 腫瘍
- 歯周病、口内炎
- ストレス(引っ越し、新しい猫との同居など)
つまり、「食べない原因」を見つけることが治療では非常に重要になります。
◇こんな猫は要注意
- 肥満
- 中高齢
- 数日間ほとんど食べていない
- 急激なダイエット
- 最近大きな環境変化があった
- もともと何らかの病気を持っている
■症状
初期には目立つ症状は見られないが、進行すると
- 黄疸(白目や歯茎が黄色い)
- 嘔吐
- よだれ
- 脱水
- 筋力低下
- 神経症状
などが見られることがあります。
黄疸が出てから来院されるケースも少なくありません。
■診断方法
- 血液検査
- ALT
- AST
- ALP
- GGT
- 総ビリルビン
- 胆汁酸
などを評価します。
- 超音波検査
肝臓が全体的に白く見えることがあります。
- 細胞診・生検
必要に応じて肝臓の細胞を採取し、診断を行うことがあります。
ただ、全身状態を優先し、血液検査と画像検査から治療を開始することの方が多いです。
■治療
- 最も重要なのは栄養管理
肝リピドーシスの治療の中心は「十分な栄養を確保すること」です。自力で食べられない場合には、
経鼻カテーテルや食道チューブなどを設置し栄養を与えます。
チューブ給餌は「かわいそう」と思われがちですが、無理やり口にご飯を入れることより、猫への精神的な負担が軽減される事、設置することで安定して栄養を摂取でき、回復につながる大切な治療です。
- 点滴治療
脱水や電解質異常を改善します。
特にカリウムやリンの管理が重要となります。
- 吐き気止め・食欲増進剤
状態に応じて
- 制吐剤
- 制酸剤
- 食欲増進剤
などを使用します。
- 原因疾患の治療
腎臓病や膵炎など原因となる病気がある場合には、その治療も同時に進めます。
■入院期間
重症度によりますが、数日~数週間以上の入院が必要となることも珍しくありません。
退院後も自宅で給餌を続けるケースもあります。
■予後
早期に十分な栄養管理を開始できれば、回復が期待できます。
一方で
- 黄疸が重度
- 食欲不振が長期間続いた
- ほかの重い病気を併発している
場合には予後が慎重となることもあります。
重要なのはできるだけ早く栄養補給を開始することです。
■予防方法
完全に予防することは難しいですが、
- 肥満にしない
- 急激なダイエットを避ける
- 食欲が落ちたら早めに病院に相談する
- 慢性疾患をしっかり管理する
ことで発症リスクを下げられます。
特に「48時間以上の食欲が低下している」場合は早めの受診をお勧めします。
■まとめ
肝リピドーシスは猫で非常に重要な肝臓疾患の一つです。
特に肥満の猫が食欲不振になると、短期間で重症化することがあります。
「食べないだけ」と様子を見るだけでなく、早期に原因を調べ、必要に応じる栄養管理を開始することがポイントです。
気になる症状がありましたら、お早めに当院までご相談ください。
