血尿

【尿石症】犬、猫 尿石症〜腎・尿管・膀胱・尿道結石〜

今回は日頃よく遭遇する膀胱結石や尿道結石、あまり気がつかない腎・尿管結石などの尿石症についてご紹介します。

【尿石症とは】

尿の通り道である尿路系(腎、尿管、膀胱、尿道)に結石(ミネラル成分の塊)できることで、種々の症状を示す病気のことです。
結石が尿路系のどこに形成されるかによって病気の名称が異なり、腎臓内にできれば腎結石、膀胱と腎臓をつなぐ尿管内にできれば尿管結石、膀胱内にできれば膀胱結石、尿道内にできれば尿道結石と呼びます。
結石の種類にはいくつかあり、ストラバイト結石、シュウ酸カルシウム結石、尿酸アンモニウム結石、シスチン結石などが代表的ですが、これらが混合してできる結石もあります。

【原因】

多くは先天的に代謝異常やそれらに関連した疾患を持っていることが原因となりますが、そのほかにホルモンや遺伝、運動活動性や栄養摂取などにも関連していると考えられています。また尿路感染や副腎機能亢進症、門脈体循環シャントなど多くの病気との関連性が知られており、特に尿路感染と尿石症は併発していることが多いです。
また尿道結石の場合、ほとんどがオス犬やオス猫で見られます。これはオスの方がメスよりも尿道が長いため、膀胱でできた結石が尿道につまりやすいためです。

【好発種】

犬:種々の犬種で発症が見られますが、結石の種類によっては特定の犬種で出やすいという報告があります。
シュウ酸カルシウム:ミニチュアダックス、ミニチュアシュナウザー
尿酸アンモニウム:ダルメシアン、ヨークシャテリア
シスチン:イングリッシュブルドッグ

猫:膀胱結石などは多くの猫種で認められますが、中には好発と考えられている猫種もあります。
腎結石や尿管結石:アメリカンショートヘア、ノルウェージャンなど

【症状】

尿石症における主な症状は、血尿や排尿痛、排尿困難など排尿に関わる問題が挙げられます。ただし腎結石や尿管結石などの場合は特定の症状として見られることは少なく、状況によって元気食欲の低下や発熱、腎障害などが見られることがあります。

「おしっこが出ない」「何度もトイレに行く」「排尿時に変な鳴き声をする」「血尿がでる」といった症状があれば膀胱結石や尿道結石などの可能性があります。
「ご飯を食べない」「元気がない」「お腹を丸めている」といった症状は他の病気にも当てはまりますが、尿管結石などによる腹痛や腎不全などの可能性も考えられます。

【診断】

尿検査と画像検査、血液検査によって診断します。
尿検査では、尿中に結石の成分である結晶や細菌感染、炎症の有無などを見ることができます。特に膀胱結石や尿道結石などで見つかりやすいです。
画像検査では、腹部のレントゲン検査やエコー検査を行うことで、腎臓、尿管、膀胱、尿道内のどこに結石が存在するのかを判断することができます。
血液検査では、結石によって腎不全や炎症、感染などを引き起こしていないか、他の病気が隠れていないかを評価することができるため、全身状態の把握を行うことが可能です。

【治療】

結石の存在する場所によって治療法が少し異なりますが、多くは結石を外科的に摘出する必要があります。ただしストラバイト結石などは食事療法による内科治療で結石を溶かすことができることもあります。そのため結石の種類を同定することは重要です。ただしどんな結石の場合も食事療法の併用が必要となります。
また尿管結石の場合は、腎不全を引き起こし命に関わることもありますので、点滴治療を併用しながら早期の治療が必要です。
腎結石の場合は、特に症状や悪影響を認めない限り、食事療法のみで経過観察を行うことも多いです。

【まとめ】

今回は尿石症について紹介しました。
結石のできる場所によって症状が異なり、膀胱結石や尿道結石は膀胱炎や排尿困難といった症状がわかりやすいですが、腎結石や尿管結石は特定の症状がないため気がついた時には状態がかなり悪くなっていることが多い病気です。特定の犬種や猫種ではかかりやすい子もいるため、日頃からしっかりと健康診断を行うことが大切です。尿検査やエコー検査、レントゲン検査はほとんど動物に負担をかけない検査ですので、いつでもご相談いただけたらと思います。

【症例紹介】

①膀胱炎の症状で尿検査を行なった犬:尿中にストラバイト結晶が見られました。抗生剤治療と食事療法により結晶は消え、定期検査によって経過観察をしています。

(写真)ストラバイト結晶です。

②腎結石と尿管結石で腎不全を起こした猫:腎臓のエコー検査で尿管への入り口が拡張し、尿管の一部で結石を認めました。点滴治療と尿管結石摘出の手術を行い今では定期検診で元気に過ごしております。

(写真)腎臓のエコー画像:白く写る結石があります

(写真)尿管のエコー画像:青い十字の印の間の部分が、結石で拡張した尿管です。

(写真)細い尿管に詰まった結石を確認し、メスで尿管を切開して結石を摘出するところです。

(写真)手術によって尿管にあった結石を摘出したものです。ごく小さなものですが、細い尿管に詰まると重篤な症状を引き起こします。

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