愛犬の口の中をのぞいたとき、歯が黒く見えて驚いた経験はありませんか?
犬の歯が黒い場合、単なる汚れではなく、歯石の蓄積や歯の内部のダメージが隠れている可能性があります。
原因によっては、見た目以上に炎症や感染が進んでいることもあるため注意が必要です。
本記事では、獣医師の立場から犬の歯が黒くなる原因や、ご家庭でできる予防法までをわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の歯を守るための参考にしていただけると幸いです。
犬の歯が黒いときに考えられる原因

犬の歯が黒く見える場合、原因は一つではありません。
歯の表面に黒いものが付着している場合もあれば、歯そのものの色が変わっている場合もあります。
ここでは犬の歯が黒いときに考えられる原因を詳しくみていきましょう。
歯石の蓄積
犬の歯が黒く見える原因として、まず考えられるのが歯石です。
犬の歯には、食べかすや細菌などからできる歯垢が付着します。
歯垢をそのままにすると、唾液に含まれるミネラルと結びついて硬い歯石へと変化します。
歯石は黄色や茶色に見えることが多いものの、長期間付着していると濃い茶色や黒色に見えることが多いです。
特に、犬歯や奥歯の歯と歯ぐきの境目に黒っぽい塊が付着している場合は、歯石の可能性があります。
また、歯石が多く付着している犬では、歯ぐきの赤みや口臭を伴うことも少なくありません。
このような場合には、歯周病が進行している可能性があるので早めの対応が重要です。
歯の内部のダメージ
犬の歯そのものが灰色や黒っぽく変色している場合には、歯の内部にある組織が障害を受けている可能性があります。
歯の中心には、神経や血管が集まった歯髄(しずい)と呼ばれる組織があります。
犬が硬い物を噛んだり、事故などで歯に強い衝撃を受けると、歯髄への血流が障害されることも珍しくありません。
歯髄が傷つくと、歯全体が灰色や黒っぽい色に変化することがあります。
たとえば、左右の犬歯を比べたときに片方だけ色が暗くなっている場合には、過去の衝撃によって歯髄が傷ついている可能性があります。
歯髄がダメージを受けると、歯の根元で細菌感染が起こり、痛みや腫れにつながることもあるので注意しましょう。
歯の破折による黒い変色
犬が硬い物を噛むことで歯が欠け、その部分が黒く見えることもあります。
犬が骨や非常に硬いおもちゃなどを噛むことで、歯の表面が欠けたり、大きく折れたりする可能性があります。
歯が大きく欠けると、内部にある歯髄が露出することも少なくありません。
露出した歯髄は時間が経つと黒っぽく見えることがあります。
歯髄が露出したままになると、口の中の細菌が歯の内部へ入り込み、感染が進行する可能性があるため、注意しましょう。
虫歯の影響
犬は口の中がアルカリ性に近く、人に比べて虫歯になりにくい動物です。
ただし、糖分の多いおやつなどを頻繁に与えていると、歯の表面に黒っぽい虫歯ができるケースがあります。
歯に黒い点や穴のようなくぼみがあり、その部分が徐々に大きくなっている場合には、虫歯も原因の一つとして考える必要があります。
犬の歯が黒いときに確認したい症状と受診の目安
犬の歯が黒いことに気づいたら、口の中やふだんの様子にほかの変化がないかを確認してください。
次のような症状が見られる場合は、動物病院の受診をおすすめします。
- 口臭が強くなる
- 歯ぐきが赤く腫れている、出血している
- 片方の歯だけで噛む
- 硬いフードを嫌がるようになる
- 口元を触られるのを嫌がる
- 目の下や頬が腫れている
歯が黒い状態を放置すると全身にも影響が出ることも少なくありません。
たとえば、歯石がついたまま放っておくと、歯周病が進行することが多く、注意が必要です。
歯周病が進行すると、歯を支える骨が溶け、歯がぐらついて抜けてしまいます。
小型犬の場合は、あごの骨が細いため、歯周病が原因であごの骨が折れることも珍しくありません。
さらに、口の中の細菌が血液に乗って全身に運ばれ、心臓や腎臓に負担をかける可能性も指摘されています。
「歯が黒いだけで元気はあるから大丈夫」
と様子を見ずに、早めに動物病院を受診することが犬の健康を守ることにつながります。
犬の歯が黒い場合に動物病院で行う検査と治療
犬の歯が黒い場合には、まず黒くなっている原因を特定することが大切です。
動物病院を受診し、黒い部分が歯石なのか、歯そのものの変色なのかをチェックしてもらいましょう。
ただし、犬の歯科疾患は見た目だけでは判断できないことも少なくありません。
特に歯の根元や歯ぐきの下で起きている異常は、口の中を見ただけではわからないことがあります。
そのため、必要に応じて麻酔をかけた状態で詳しい歯科検査が行われます。
黒い部分が歯石であり、歯周病も認められる場合には、麻酔下で歯石除去が行われることが多いです。
歯石除去では、歯の表面だけではなく、歯と歯ぐきの溝に入り込んだ歯石も取り除くことが大切です。
歯周病が重度に進行している歯では、歯を残すことが難しく、抜歯が必要になる場合もあります。
歯髄がダメージを受けている場合には、抜歯や根管治療などが検討されます。
根管治療とは、歯の内部にある傷んだ歯髄を取り除き、内部を洗浄して薬剤などで封鎖する治療です。
どの治療方法が適しているかは、歯の損傷の程度、犬の状態によって異なります。
気になることがあれば、獣医師とよく相談しながら治療プランを決めていきましょう。
歯が黒くなるのを防ぐには?

犬の歯が黒くなる原因のすべてを予防できるわけではありませんが、日頃のケアによって歯石や歯周病のリスクを減らすことはできます。
もっとも基本的な歯石や歯周病の予防方法は、毎日の歯磨きです。
犬の歯には毎日歯垢が付着します。
歯垢の段階であれば、歯ブラシを使って取り除くことができます。
一方、歯垢が歯石に変化すると、家庭での歯磨きだけでは取り除けません。
そのため、歯石になる前に歯垢を落とすことが重要です。
犬が歯磨きを嫌がる場合には、最初からすべての歯を磨こうとしないことも大切です。
まずは口元を触ることから始め、慣れてきたらガーゼや歯ブラシを使うなど、少しずつ段階を進めていきましょう。
また、歯髄へのダメージを防ぐためには、硬すぎるおやつやおもちゃにも注意が必要です。
骨やひづめなどの非常に硬い物は、犬が強く噛んだときに歯を傷める原因となることがあります。
さらに、定期的に犬の口の中を確認する習慣も重要です。
飼い主様が普段から歯の色や歯ぐきの状態を見ておけば、
「以前より歯が黒くなった」
「片方の犬歯だけ色が違う」
といった変化にも早く気づけます。
毎日の歯磨きと定期的な口腔チェックを続けることが、歯のトラブルを早期に発見するための基本になります。
犬の歯磨きについては以下の記事もチェックしてみてください。
犬が歯磨きを嫌がる原因は?|歯磨きを無理なく慣れさせる方法を獣医師が解説
まとめ
犬の歯が黒く見える原因には、歯石や着色だけでなく、歯の破折、歯髄の障害などがあります。
特に、歯の表面ではなく歯そのものが灰色や黒色に変化している場合には、歯の内部で異常が起きている可能性があります。
また、口臭や歯ぐきの腫れ、食べ方の変化などを伴う場合にも注意が必要です。
犬は歯の痛みを隠すことがあるため、普段通り食事をしていても安心とは限りません。
愛犬の歯が黒いことに気づいたら、早めに当院までご相談ください。
よくある質問
Q.犬の歯が黒く見えるのは、食べ物やおやつの着色が原因のこともありますか?
A.食べ物やおやつに含まれる色素によって、歯の表面が一時的に着色することはあります。ただし、見た目だけで判断するのは難しい場合があります。
歯磨きをしても黒さが取れない場合や、徐々に色が濃くなる場合は動物病院で確認しましょう。
Q.子犬の歯が黒く見えることがありますが、乳歯でも問題になることはありますか?
A.子犬の乳歯でも、外傷や歯の内部のダメージによって黒っぽく変色することがあります。また、乳歯が抜けずに残る乳歯遺残があると、汚れや歯石がたまりやすくなる場合もあります。
永久歯への生え替わり時期に歯の色や並び方が気になる場合は、健診時に獣医師へ相談すると安心です。
Q.犬の歯が黒くなっていても、痛がっていなければ様子を見ても大丈夫ですか?
A.犬は歯の痛みがあっても、普段通り食事をすることがあります。
そのため、痛がっていないからといって問題がないとは限りません。
特に、1本だけ歯の色が変わっている場合や、以前より黒さが強くなっている場合には注意が必要です。
症状がなくても、気づいた時点で一度診てもらうと安心です。
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