愛犬が何の前触れもなく突然倒れたら、飼い主様は大きな不安を感じるのではないでしょうか?
犬が倒れる原因にはさまざまな疾患が考えられますが、意外と見落とされがちな原因の一つに不整脈が挙げられます。
不整脈は心臓の拍動リズムが乱れる病態であり、重症化すると突然死を引き起こすこともある危険な疾患です。
本記事では、犬の不整脈で倒れる原因や前兆となる症状などを獣医師が詳しく解説いたします。
犬の飼い主様はぜひ最後までお読みいただき、不整脈を見逃さないための参考にしていただけると幸いです。
犬の不整脈とは

犬の不整脈とは、心臓の電気的活動に異常が生じ、拍動のリズムが乱れた状態を指します。
正常な心臓は一定のリズムで収縮と拡張を繰り返しながら、全身に血液を送り届けています。
しかし不整脈が発生すると、この規則正しいリズムが崩れ、全身への血液供給が不十分になりかねません。
特に脳への血流が一時的に途絶えた場合、犬は意識を失って突然倒れることにつながります。
不整脈には心拍数が速くなる「頻脈性不整脈」と、心拍数が極端に遅くなる「徐脈性不整脈」が存在します。
いずれのタイプも進行すれば命に関わる深刻な事態を招きかねません。
そのため、不整脈は早期の発見と適切な対応が不可欠です。
不整脈で犬が倒れるときの症状と前兆は?
不整脈の代表的な症状は犬が突然倒れる失神と呼ばれるものです。
失神はてんかん発作と混同されやすいものの、両者にはいくつかの違いが認められます。
てんかん発作では体の硬直やけいれんを伴うケースが多い一方、不整脈による失神では体が脱力するように崩れ落ちるのが特徴的です。
さらに、てんかん発作後は意識がもうろうとした状態が長く続く傾向にあります。
しかし、不整脈の失神では比較的短時間で意識が回復する点も大きな違いといえます。
犬が不整脈で倒れる際、まったく前触れなく突然起こることも少なくありません。
しかし、以下のような前兆が観察できる場合もあるため、日頃からの観察が大切です。
- 歩行中に急に力が抜けてふらつく
- まっすぐに歩けなくなる
- 呼吸が浅く速くなる
- よだれを垂らす
- 歯茎や舌の色が青白く変化する
上記の症状は、不整脈により心臓からの血液供給が不安定になっているサインと考えられます。
一つでも該当する場合は、すみやかに動物病院を受診しましょう。
不整脈で倒れるリスクが高い犬種はあるの?

不整脈はすべての犬種で発生しうる疾患ですが、遺伝的な要因から特にリスクの高い犬種が存在します。
代表的な好発犬種として挙げられるのは
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- ミニチュア・ダックスフンド
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- ミニチュア・シュナウザー
- ボクサー
などです。
若齢であっても遺伝的素因を持つ犬種は重篤な不整脈を発症する可能性があるため、年齢を問わず注意が必要です。
該当する犬種を飼育している場合、定期的に動物病院で心臓のチェックを受けましょう。
犬が不整脈で倒れる場合に考えられる原因
犬の不整脈は単独で発生するケースもありますが、多くの場合は基礎疾患が引き金となって生じています。
ここでは犬の不整脈の原因について詳しくみていきましょう。
心臓自体が原因となるケース
不整脈のもっとも一般的な原因は心臓病です。
不整脈の原因となる代表的な心臓病は以下の通りです。
- 僧帽弁閉鎖不全症
- 拡張型心筋症
- 心臓腫瘍
- 心内膜炎
これらの疾患によって心臓に過度な負担がかかると、電気信号の伝達に異常が生じて不整脈を誘発します。
なかでも拡張型心筋症は重篤な不整脈との関連性が非常に強く、突然死のリスクも高いため注意が必要です。
一方で、こうした基礎疾患が見つからず不整脈のみが単独で認められることもあります。
心臓の電気的活動そのものに異常が生じていると考えられる状態ですね。
基礎疾患がないケースでも、重度の場合は失神の危険性があるため、定期的な経過観察が求められます。
犬の拡張型心筋症については以下の記事もチェックしてみてください。
犬の拡張型心筋症とは|命を守るために知っておくべき初期症状と治療法
心臓以外の疾患が原因となるケース
心臓病以外にも、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患や、低カリウム血症や高カルシウム血症といった電解質異常なども不整脈を引き起こす要因の一つです。
心臓の拍動は電気信号によって制御されているため、体内のホルモンやミネラルのバランスが崩れると不整脈が引き起こされるケースは珍しくありません。
原因が心臓以外にある場合は、基礎疾患の治療が不整脈の改善に直結する点を理解しておくことが重要です。
犬の不整脈の診断方法
不整脈の診断において中心的な役割を果たすのが心電図検査です。
心電図は心臓の電気活動を記録する検査であり、不整脈の種類を正確に特定するうえで欠かせません。
ただし、院内での短時間の心電図検査では不整脈を捉えきれない場合も少なくありません。
そのようなケースでは、24時間以上にわたって心電図を記録できるホルター心電図検査が有効な手段となります。
心臓超音波(心エコー)検査も重要な診断手段の一つであり、
- 心臓の大きさ
- 弁の動き
- 心筋の状態
をリアルタイムで確認できます。
心臓超音波検査は不整脈の背景に心臓の構造的な異常が隠れていないかを調べるうえで、非常に有用な検査です。
愛犬が一度でも倒れた経験がある場合は、複数の検査を組み合わせた精密検査を受けることをおすすめします。
不整脈で犬が倒れる場合の治療法と対応

犬の不整脈の治療は、原因に応じて方針が大きく異なりますが、基本的には抗不整脈薬を用いて心拍リズムの正常化を図る内科治療を行います。
不整脈が心臓疾患やホルモン異常などの基礎疾患に起因する場合、基礎疾患の治療を並行して行うことも欠かせません。
内科治療で十分な効果が得られない重度の症例では、ペースメーカーの埋め込み手術が選択肢に含まれることもあります。
治療方針は個々の犬の状態によって大きく左右されるため、獣医師と十分に相談したうえで決定することが大切です。
また、治療開始後も定期的な心電図検査によるモニタリングが必要となります。
抗不整脈薬は効果が出るまでに時間を要する場合があり、薬の種類や投与量の微調整を繰り返すケースも珍しくありません。
自宅では愛犬の呼吸数や活動量を日常的に記録しておくと、症状の変化を早期に把握でき、治療効果の判断にも大いに役立ちます。
まとめ
犬の不整脈は、失神だけでなく突然死にもつながる危険な疾患です。
日頃から愛犬の様子を注意深く観察し、歩行時のふらつきや歯茎の色の変化といった前兆を見逃さないことが、早期発見への第一歩となります。
特にリスクの高い犬種を飼育している場合は、定期的な心臓のチェックが欠かせません。
愛犬が突然倒れた際は、可能であればその様子を動画で撮影しておくと診断に役立ちます。少しでも気になる症状がございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
よくある質問
Q.犬が不整脈で突然倒れたときにできる応急処置はありますか?
A. まずは落ち着いて、犬の周りにある物や家具をどかし、安全なスペースを確保してください。
体を強く揺さぶったり、無理に口を開けたりするのは危険です。
数秒〜数分で意識が戻ることが多いですが、可能であれば倒れている様子をスマートフォンで撮影しておくと、後の診断に非常に役立ちます。
Q.不整脈があっても犬は通常の生活ができますか?
A.不整脈の重症度や治療の有無によりますが、軽度な場合やコントロールされている場合は通常通りの生活が可能なこともあります。
ただし、突然の失神や症状の悪化が見られる場合には安静を心がけ、獣医師の指示に従うことが重要です。
Q.不整脈は若い犬でもなりますか?
A. 不整脈は中高齢の犬に多いですが、若い犬でも発症する可能性があります。
特に、遺伝的な素因を持つ犬種(ボクサーなど)では、若くして重篤な不整脈が見られることがあります。
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