目が赤い

【眼瞼炎】犬の眼瞼炎~まぶたが腫れているときの診断と治療~

 「眼瞼炎」とは?

「眼瞼炎」は、眼瞼(まぶた)に何らかの原因によって炎症が起き腫れる疾患です。当院でもよくみられる疾患のひとつです。

眼瞼炎は原因によって症状や治療法が変わってきますので、診断基準などをふまえて紹介していきます。

まぶたが赤く腫れている犬

このトイプードルの子は、瞼が腫れていると来院されました。はじめは片眼の症状だけでしたが、次第に両眼の眼瞼が腫れてきました。他の病院で感染の可能性を疑われ治療をしていましたが、あまり改善が見られなかったとのことです。

このように「まぶたが腫れている」という主訴の場合、まず眼瞼のどこがどのように腫れているのかに注目します。

例えば、眼瞼の一部が腫れている場合は腫瘤性病変を疑います。下の写真の症例は、マイボーム腺腫として外切除を行いました。

まぶたにできものができている犬

また、眼瞼の縁に沿った分泌腺であるマイボーム腺に感染や炎症が起こるとマイボーム腺炎となり、この場合も部分的なマイボーム腺の腫れが見られます。

一方、眼瞼炎では瞼全体が腫れてきます。眼瞼をめくると眼瞼結膜の全体に炎症が起きて腫れているのが分かります。

まぶたと結膜が赤く腫れている犬

このような症状の違いを考えると、この症例は眼瞼炎と判断できます。

眼瞼炎は何が原因となり、どのような治療が必要になる?

眼瞼炎の原因は大きく2つに分かれます。一つは感染性、もう一つは免疫介在性です。

〇感染性

細菌感染、寄生虫感染、真菌感染があげられますが、どれも動物の免疫が著しく落ちていないと発症しなかったり、特定の地域でしか見られない病原体であったりと、発症する可能性は限られてきます。また、両眼に同じように感染が起こることはまれであるため、通常は片眼のみに発症します。

感染性の眼瞼炎が疑われる場合は、抗生剤など病原体に合わせた治療が必要です。

〇免疫介在性

自身の免疫が異常にはたらいてしまい、眼瞼の組織に炎症が起きてしまいます。全身性の疾患であるため、両眼の眼瞼に症状が出ます。犬の眼瞼炎の多くがこの免疫介在性と言われています。

免疫異常が原因であるため、免疫抑制剤での治療が必要です。一般的には即効性のあるステロイドで治療を行い、減薬をしながら他の免疫抑制剤を使用していきます。治療をやめると再発することが多く、生涯の治療が必要となることも多々あります。

今回の症例は…?

ここでもう一度、今回の症例の経過を考えてみます。

まぶたが赤く腫れている犬

時間差はあるものの両眼で同じような眼瞼炎が発症していること、さらに感染に対する治療では改善が見られなかったことを考えると、免疫介在性の眼瞼炎と判断できます。

この症例は、ステロイドの治療を開始し症状が改善したのを確認し、将来的に副作用が出ないようステロイドを減薬し、その代わりに副作用の少ない免疫抑制剤を使用しました。

治療を開始してから3ヵ月ほど経過しましたが、ステロイドは休薬し再発なく過ごせています。

最後に

眼瞼炎はよく見られる疾患ではありますが、しっかりと治療をしないと炎症がおさまらず、治療が長引いてしまいます。目の違和感から眼瞼をこすってしまい、出血している子も見かけます。

まぶたが赤く腫れ、出血している犬

症状が悪化する前に、気になる症状がある場合は早めの診察にいらしてください。

 
 

担当獣医師

内科・眼科

宮本 (ミヤモト, Miyamoto)

English Speaking Veterinarian
動物たちからたくさんのことを感じ取り、からだへの負担をできる限り少なくすること、ご家族さまとのコミュニケーションの中で治療方針をご一緒に考えていくことを大切にしています。

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