脱毛

【ホルモン性脱毛】高齢犬の脱毛は皮膚病だけとは限らない!

犬の毛が抜けるのは自然な現象で、換毛期や加齢に伴う新陳代謝の低下が大きく関係しています。しかし、皮膚に異常がある場合や部分的に脱毛している場合は病気が隠れているかもしれません。

今回は、「加齢に伴う皮膚症状だろう」と片付けられてしまいがちな2つの病気をご紹介いたします。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症とは甲状腺機能低の低下により、甲状腺ホルモンの分泌が少なくなる病気です。

甲状腺とは頚部にあり、気管の左右に2つについています。

甲状腺ホルモンとは代謝の促進に関わっているホルモンです。

甲状腺機能低下症の犬のほとんどは甲状腺自体の自壊が原因で起こります。

この病気は猫より犬で多く認められ、4~10歳の犬で最も一般的にみられます。

【皮膚症状】

  • ラットテイルと呼ばれるしっぽの脱毛
  • 体の左右対称の脱毛
  • 皮膚の色素沈着(皮膚の色素が黒く変化する)
  • 繰り返す皮膚感染
  • フケが多くなる

【全体的な症状】

  • 元気がなくなる
  • 肥満傾向
  • 睡眠時間の増加
  • 寒さに弱くなる

※甲状腺ホルモンの欠乏は、全ての臓器に影響を及ぼすため症状は様々です。

【診断】

甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの減少によっておこるため、基本的に血液検査で甲状腺関連ホルモンの測定によって診断を行います。しかし、ホルモン測定だけでは診断が難しい場合が多いので症状と血液検査の結果を総合的に判断して治療を行う必要があります。

【治療】

不足してしまった甲状腺ホルモンをお薬で補充します。症状の改善には数週間から数カ月かかる場合が多いです。治療の効果は症状や身体検査、血液検査で確認し薬の量を調節します。

甲状腺の機能自体を回復させることは難しいため、基本的には生涯飲み続ける必要があります。

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

はじめに、副腎とは腎臓のすぐ近くにある小さな臓器です。

コルチゾールという「免疫の抑制」「血圧の維持」「代謝」「抗炎症作用」など生命維持に欠かせないホルモンです。

クッシング症候群とは多くの場合(85~90%)脳下垂体に腫瘍ができたことが原因となり、副腎からステロイドホルモンであるコルチゾールが過剰分泌されることにより引き起こされます。クッシング症候群はゆっくりと進行していくため、初期症状を見過ごしたり、加齢が原因ではないかと思われがちです。6歳以上の中齢から高齢の犬に多く見られます。

【皮膚症状】

  • 体の左右対称の脱毛
  • 皮膚が薄くなる
  • 痒みや炎症

【全体的な症状】

  • 多飲多尿
  • 食欲増加
  • 腹部膨満
  • 筋力の低下
  • 活動が鈍る

※症例によっては脱毛だけしか見られないこともあります。

免疫が低下するため様々な感染症にもなりやすくなります。糖尿病を併発することがあり、放置すれば命に関わります。

【診断】

– ACTH刺激検査

ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を注射します。注射前、注射後の2回採血を行い血中のコルチゾール濃度測定を行います。クッシング症候群の場合注射後のコルチゾールが大きく上昇します。

– 血液検査

肝臓の数値の上昇が見られることが多くあります

– 超音波検査

肝臓や副腎の大きさや形を確認します。多くの場合肝臓が肥大しています。

【治療】

内服薬で副腎から分泌されるコルチゾールを抑えます。

根本的に治癒する治療ではないため、生涯薬を飲み続ける必要があります。

また、原因となる腫瘍が脳下垂体ではなくまれに副腎そのものが腫瘍科している場合があります(10~15%)その場合は外科手術が第一選択になります。

まとめ

今回は特徴的な脱毛症状が現れる甲状腺機能低下症と副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)を紹介しました。2つの病気のように脱毛や皮膚疾患だけではなく、怖い病気が隠れていることがあります。

人より年齢を重ねるのが早いわんちゃん、ねこちゃんは6歳を越えるとシニア期に入ります。健康そうに見える子でも知らず知らずのうちに病気にかかっていることがありますので、病気の早期発見・予防に努めるために1年に1度の健康診断をお勧めいたします。

当院ではわんちゃん、ねこちゃんの健康診断を通年行っておりますのでお気軽にお問い合わせください。

 【猫専門診察】
HALU+動物病院
渋谷区代官山町14-20 カトルズ代官山103
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【本院】
渋谷、恵比寿、代官山の動物病院(年中無休、年末年始も診察している動物病院)
HALU代官山動物病院

担当獣医師

皮膚科

成田 (ナリタ, Narita)日本獣医皮膚科学会・皮膚科認定医

飼い主さまとのコミュニケーションを大事にし、日常生活における食事や習慣、スキンケアまでを一緒に考え、治療に取り組んでいきます。

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