こんにちは!
皆さんの中に、わんちゃんの皮膚病がなかなか治らないという方はいらっしゃいませんか?特に、左右ともに毛抜けてきた、しっぽの毛が薄くなってきた、膿皮症を繰り返しているなどといった症状が続いているという方もいるのではないでしょうか?
皮膚が弱い、アレルギーかも?と思っている方も少なくないと思います。しかし、このような症状には、実は甲状腺機能低下症という病気が隠れているかもしれません。
今回はこういった皮膚症状も引き起こす、甲状腺機能低下症という高齢のわんちゃんに多い疾患の症例をご紹介します。
そもそも甲状腺とは・・・
甲状腺はのどの近くにある小さな臓器ですが、とても大切な役割をしています。甲状腺から出るホルモン、つまり甲状腺ホルモンは脳からの刺激によって放出され、身体の代謝を調節していて、心臓や腸の動きや皮膚の代謝、骨髄など全身の細胞に深くかかわっています。
では甲状腺機能低下症とはどんな病気でしょうか?
甲状腺機能低下症とは甲状腺から出されるホルモン量が減ってしまう疾患です。原因は様々ですが、わんちゃんの場合は多くが免疫疾患によって、自分の甲状腺を攻撃してしまい、甲状腺が萎縮してしまうことが原因と言われていますが、他にも甲状腺腫瘍や甲状腺炎なども原因となってきます。
症状としては、全身の細胞の代謝が落ちてしまうことから
・なんとなく元気がない、活動量が下がった
・ダイエットしているのに痩せない
・心拍数の低下
・左右対称の脱毛
・しっぽの脱毛(ラットテイル)
・膿皮症
・貧血
・高脂血症
・悲しそうな顔
など他にも幅広い症状が見られます。
診断は血液検査によって甲状腺ホルモンの量を調べます。甲状腺ホルモンの量が少なく、脳から甲状腺に向けて出るホルモンが高ければ確定診断になります。
血液検査によって診断が出れば、甲状腺ホルモンのお薬を飲みます。これはほとんど生涯飲む必要があるお薬です。
ちなみにラットテイルと呼ばれる尾の脱毛や悲しそうな顔は甲状腺疾患でよくみられる症状で、下の写真のような症状です。
そんな甲状腺機能低下症の症例をご紹介します。
症例紹介
症例は10歳のわんちゃんで、脱毛と痒みを主訴に来院されました。
来院されたときには下の写真のような皮膚状態でした。
背中も少し脱毛があり、また、身体検査では心拍数の低下も認められました。このことから、通常の皮膚検査に加えて、血液検査にて甲状腺ホルモンの量も測定することにしました。
その結果、他の数値に異常はありませんでしたが、甲状腺ホルモンの量の低下が認められたため、甲状腺機能低下症として治療を開始しました。
また、この症例はアトピーも併発していたため、同時にアトピーの治療も開始していますが、現在では痒みも落ち着いてきており、以前よりも活動的になってきて、最近では少し心拍数も上がってきています。この症例はアトピーの慢性化によって皮膚が分厚くなってしまっていたため、お腹の毛量や皮膚状態の改善にはもう少しかかりますが、甲状腺機能低下症に関しては落ち着いています。
甲状腺ホルモンの数値が安定するまでおおよそ2週間ほどかかりますが、以降は検査の期間も空けていくことができます。
甲状腺ホルモンの低下からくる症状から別の病気を引き起こしてしまうことがあります。しかし甲状腺ホルモンのお薬を飲むとこれらを防ぐこともできますので診断が出た場合には一緒に治療を頑張りましょう。
この甲状腺機能低下症は高齢のわんちゃんに多いことから、なんとなく元気がなくなったり、毛が薄くなったり、太りやすくなったり、といったほとんどの症状が年齢によるものと思われやすいですが、実はこんな病気が隠れているかもしれません。
当院では、高齢のわんちゃんには通常の健康診断項目に加えて、甲状腺ホルモン測定もお勧めしております。
もし、ご自宅のわんちゃんで当てはまる症状や気になる症状があればご相談ください。
また、当院では皮膚科専門診療も実施しております。なかなか良くならない皮膚病や、何度も繰り返している皮膚病などございましたら、一度お気軽にご相談ください。
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