「子犬の口の中をのぞいたら、乳歯と永久歯が並んで生えていた」
このような経験をしたことのある飼い主様は多いのではないでしょうか?
犬の乳歯は通常、生後4〜7か月ごろまでに自然に抜け、永久歯へと生え替わります。
ところが、時期を過ぎても乳歯が抜けないケースは決して珍しくありません。
特に小型犬は乳歯が抜けないことが多く、放置すると歯並びの乱れや歯周病の原因となります。
今回は、獣医師の立場から犬の乳歯が抜けない場合のリスクや動物病院での治療について詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の歯を守るための参考にしていただけると幸いです。
犬の乳歯が抜けない乳歯遺残とは

永久歯が生えてきた後も乳歯が抜けずに残っている状態が乳歯遺残(にゅうしいざん)です。
通常は永久歯の成長に伴って乳歯の根が吸収され、乳歯が抜けていきます。
しかし、何らかの理由でこの流れがうまく進まないと、乳歯が口の中に残ってしまいます。
乳歯遺残は
- トイ・プードル
- チワワ
- ヨークシャー・テリア
- ポメラニアン
などの小型犬に多く、避妊・去勢手術の際に乳歯遺残が見つかる子は少なくありません。
たとえば、太い犬歯のすぐ横に細く尖った歯が残っている場合は、乳歯遺残の可能性があります。
生後7か月を過ぎても乳歯が残っている場合は、乳歯遺残を疑いましょう。
乳歯が抜けないまま放置するリスク
犬の乳歯が抜けないまま放置すると、歯並びや歯周病などさまざまなトラブルの原因になりかねません。
乳歯と永久歯の狭い隙間には、食べかすや歯垢がたまりやすくなります。
歯ブラシも届きにくいため、歯垢を取り除くのが難しく、歯周病につながりやすいです。
若い犬でも、歯ぐきの赤みや口臭を単なる生え変わりの変化と決めつけないことが重要です。
また、乳歯が永久歯の生える場所を妨げると、永久歯が本来とは異なる方向へ伸びる場合があります。
たとえば、下あごの犬歯が内側に向くと歯の先端が上あごに当たり、歯ぐきなどを傷つけることも少なくありません。
歯並びの問題は痛みにつながることもあるため注意しましょう。
乳歯遺残は、将来の歯の健康を左右する問題としてとらえることが大切になります。
乳歯が抜けないときに見られるサイン
乳歯遺残は目立った症状がないことがほとんどです。
ただし、乳歯遺残によって歯周病や歯並びのトラブルが起こると次のようなサインがみられることがあります。
- 生え替わりの時期に口臭が強くなる
- 乳歯と永久歯の間の歯ぐきが赤く腫れている
- 片側だけで噛む、食べるのに時間がかかる
- 口元を触られるのを急に嫌がるようになる
口臭や歯ぐきの赤みは、すでに歯垢がたまり、歯周病を発症している可能性が考えられます。
食べ方の変化は、噛み合わせのずれで口の中に歯が当たり、痛みが出ているときに見られる場合も少なくありません。
乳歯遺残は見た目の変化と行動の変化の両方に気を配ることが、早期発見のポイントです。
乳歯が抜けないときの動物病院での治療

乳歯が抜けない場合の基本的な治療は、動物病院での抜歯です。
乳歯遺残は自然に治ることがほとんどなく、時間がたつほど永久歯や歯並びへの影響が大きくなるのが特徴です。
そのため、永久歯が生えてきた段階で、残っている乳歯を早めに抜くことが推奨されています。
犬の抜歯は全身麻酔下で行われます。
乳歯の根は細く長いため、無理に抜こうとすると根が折れて歯ぐきの中に残ってしまうため注意が必要です。
避妊・去勢手術を予定している場合は、同じ麻酔の機会に乳歯の抜歯を行うことも可能です。
避妊・去勢手術と同時に行うことで麻酔の回数を減らせるため、愛犬の負担軽減につながります。
乳歯が抜けないと気づいたら、まずは動物病院で診察を受け、最適な治療時期を相談してください。
乳歯が抜けない子犬のために飼い主様ができること
乳歯が抜けないトラブルを早く見つけるには、生え替わりの時期に飼い主様が口の中をこまめにチェックすることが何より重要です。
乳歯遺残を早期発見できれば、永久歯への影響を最小限に抑えられます。
ご家庭では、次のポイントを意識しましょう。
- 生後4〜7か月の間は、週に1〜2回を目安に口の中を観察する
- 同じ場所に2本の歯が並んでいないか確認する(特に犬歯)
- 抜けた乳歯を見つけたら、どこの歯か記録しておく
ただし、ぐらついていない乳歯を指やおもちゃで無理に抜こうとするのは避けてください。歯が途中で折れて残ったり、歯ぐきを傷つけたりする危険があります。
日々のチェックで
「おかしいな」
と感じたら、自己判断せずに動物病院へ相談することが、愛犬の歯を守る近道となります。
まとめ
犬の乳歯が抜けない乳歯遺残は、小型犬を中心に多く見られる歯のトラブルです。
放置すると歯周病や噛み合わせの悪化を招き、歯の健康に影響しかねません。
生後7か月を過ぎても乳歯が残っている場合は、自然に抜けるのを待つより、動物病院での抜歯を検討するようにしましょう。
当院では子犬の歯科相談も受け付けているので、生え替わりの時期に気になる点があれば、お気軽にご来院ください。
愛犬の一生の歯の健康を、当院が全力でサポートいたします。
よくある質問
Q.犬の乳歯が抜けず、永久歯も見えない場合はどうすればよいですか?
A.永久歯が生まれつき存在しない場合と、あごの骨の中に埋まっている場合が考えられます。
見た目だけでは判断できないため、レントゲン検査で確認することが大切です。
Q.抜けない乳歯の治療で、レントゲン検査が必要なのはなぜですか?
A.歯ぐきの中にある乳歯の根や、永久歯との位置関係は、口の中を見るだけでは確認できないためです。
レントゲン検査では、乳歯の根の長さや向きなどを調べられます。
これらの情報は、近くの永久歯を傷つけるリスクを減らし、適切に抜歯するために重要です。
Q.抜けない乳歯を抜歯した後、食事や歯磨きで気をつけることはありますか?
A.抜歯後は傷口を刺激しないよう、獣医師の指示に応じて、ふやかしたフードなどの軟らかい食事を与えます。
硬いおやつやおもちゃは控え、処置した部分の歯磨きは歯ぐきが治るまで休みましょう。
食事や歯磨きを通常どおりに戻す時期は、抜歯の範囲や傷の状態によって異なります。
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