愛犬が拡張型心筋症と診断されると、これからの生活をどう支えていけばいいのかと不安になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
中でも、毎日口にするフードは健康に関わる大きな要素です。
「今までの食事を続けてよいのか」
「もし見直すとしたら何を基準に選べばよいのか」
と、悩まれる飼い主様も少なくありません。
犬の拡張型心筋症のおもな原因は体質や遺伝ですが、一部の犬では食事内容が関係している可能性もあります。
この記事では、犬の拡張型心筋症とフードの関係についてわかりやすく解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、愛犬の心臓を守るための一助としていただければ幸いです。
犬の拡張型心筋症とは?

犬の拡張型心筋症は、心筋の働きが弱くなって十分に収縮できず、全身へ血液を送り出す力が低下してしまう病気です。
進行すると心不全を引き起こし、命に関わる状態になることもあります。
初期の段階では症状がわかりにくいこともありますが、病気が進むにつれて以下のような症状が見られます。
- 疲れやすい
- 散歩を嫌がる
- 咳が出る
- 呼吸が荒い
- 失神する
犬の拡張型心筋症は、一般的にはゴールデンレトリバーやボクサーなどの大型犬に多いです。
ただし、アメリカン・コッカー・スパニエルのような中型犬でも報告されています。
拡張型心筋症の好発犬種でないからといって安心できる病気ではないため、日頃から体調の変化に気を配ることが大切です。
犬の拡張型心筋症とフードの関連は?
「特定のフードを与えていると、犬が拡張型心筋症になるらしい」
と耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし実際には、犬の拡張型心筋症とフードの関係について、すべてが明確に解明されているわけではありません。
ここでは、現時点でわかっている犬の拡張型心筋症と食事の関係について解説していきます。
タウリン・L-カルニチン
犬の拡張型心筋症の中には、タウリンやL-カルニチンといった、栄養素の不足が関係して起こるタイプがあることが知られています。
タウリンは、心筋の健康維持に関わる栄養素です。
心筋の収縮力を保つ働きを持ち、不足すると心筋の機能が低下して拡張型心筋症のリスクが高まる可能性があります。
L-カルニチンは、心臓がエネルギーを作って動き続けるために必要な栄養素です。
L-カルニチンの量が足りない状態が続くと、心筋がエネルギー不足になり、心機能に悪影響を及ぼす可能性が考えられています。
グレインフリー(穀物不使用)フード
近年、グレインフリーフードを食べている犬で拡張型心筋症が見つかるケースが報告され、注目を集めています。
グレインフリーフードは、穀物の代わりにエンドウ豆やレンズ豆などの豆類が主原料として使われていることが多いです。
こういった原材料の構成が拡張型心筋症の発症に影響している可能性が指摘されています。
グレインフリーフードを継続して与えた場合、一部の犬では心臓の健康維持に重要なタウリンやL-カルニチンが不足し、心機能に影響を及ぼすことがあります。
ただし、グレインフリーフードが拡張型心筋症を直接引き起こすと断定できる科学的証拠はまだ不十分です。
拡張型心筋症の犬には、どんなフードを与えるといいの?

では実際に、拡張型心筋症の犬にはどんなフードを与えるといいのでしょうか。
基本の考え方は、「総合栄養食かつグレインフリー以外のフード」です。
その上で、病気の進行度や症状に応じて、「低ナトリウム食」を検討しましょう。
総合栄養食かつグレインフリー以外のフード
拡張型心筋症の犬には、まず栄養バランスの取れた総合栄養食を選ぶことが大切です。
パッケージに「総合栄養食」と表示されている、グレインフリー以外のフードを選びましょう。
グレインフリーフードは、穀物の代わりに豆類・イモ類が主成分となっていることが多いです。
結果として動物性タンパク質の割合が相対的に低くなり、心筋の健康を維持するのに重要な栄養素が不足する恐れがあります。
また、豆類に多く含まれる成分がタウリンの体内利用に影響する可能性も指摘されています。
ただし、豆類が含まれているから危険、というわけではありません。
大切なのは、特定の原材料に偏らず、さまざまな栄養素がバランスよく含まれているフードを選ぶことです。
また、拡張型心筋症の背景にタウリンやL-カルニチンの低下が疑われる場合は、サプリメントの摂取も検討されます。
低ナトリウム食
拡張型心筋症に限らず、心臓病の犬では低ナトリウム食が推奨されます。
心臓の機能が落ちるにつれて体内に水分やナトリウムがたまり、症状が悪化しやすくなるためです。
栄養バランスを保ったうえでナトリウム制限を行うことは手作り食では難しいため、心臓病用のフードにしましょう。
なお、低ナトリウム食は味が薄く、食いつきが悪くなったり食べムラが出たりすることもあります。
その場合は、トッピングで食欲を刺激してあげるのもおすすめです。
拡張型心筋症の犬でフードを変更するときに気をつけたいこと
拡張型心筋症と診断された犬では、フードの見直し方にも注意が必要です。
フードの急な変更は下痢や嘔吐、食欲低下などといった体調を崩すきっかけになることがあります。
これまでのフードに新しいフードを少しずつ混ぜ、7〜10日ほどかけて段階的に切り替えましょう。
また、フードを変えたからといって、拡張型心筋症そのものが治るわけではありません。
食事療法は、あくまで心臓の負担を減らし、治療を支えるためのサポートです。
必ず内服薬などの治療と併せて、獣医師と相談しながら続けていくことが大切です。
まとめ
犬の拡張型心筋症と食事の関係は、近年注目されていますが、まだわかっていないことも多い分野です。
タウリンやL-カルニチンといった栄養素の不足や、グレインフリーフードとの関連が指摘されていますが、すべての犬に当てはまるわけではありません。
拡張型心筋症の犬の食事で基本となるのは、栄養バランスの取れた総合栄養食を選ぶことです。フード選びや変更に迷った際は、当院までご相談ください。
どうすれば愛犬にとって無理のない食事管理ができるか、一緒に考えましょう。
