呼吸が苦しい

犬が泡を吐くのは肺水腫かも?|命に関わる犬の肺水腫を獣医師が詳しく解説

犬が泡を吐いているのを見つけたとき、多くの飼い主様は不安になられることでしょう。
泡を吐くのは単なる吐き戻しに見えても、実は肺水腫という命に関わる病気が隠れていることがあります。
肺水腫は心臓病などによって肺の中に水が溜まる状態で、早急な治療を行わなければ呼吸困難から死に至ることもあるので注意が必要です。

この記事ではなぜ肺水腫で泡を吐くのかなどを詳しく解説します。
犬の飼い主様はぜひ最後までお読みいただき、肺水腫の理解を深めましょう。

犬が泡を吐くときに考えられる原因とは?

犬が泡を吐くときは呼吸器系もしくは消化器系のトラブルを起こしていることが多いです。
ここでは犬が泡を吐く代表的な病気を解説します。

肺水腫

肺水腫は心臓病などによって肺に水分がたまってしまう病気です。
肺水腫では肺にたまった水分が気道内で空気と混ざることで泡状になり、犬が咳とともに白色やピンク色の泡を吐き出します。
特に高齢犬や心臓病をもつ犬に多くみられ、非常に重篤なサインです。

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎は食べ物や嘔吐物が誤って気管や肺に入ってしまい、肺が炎症を起こす病気です。
肺の中で炎症を起こし、分泌物が増えることで泡状の液体を吐くことがあります。
誤嚥性肺炎も呼吸状態が悪化しやすく、重症の場合は命に関わることもあります。

胃腸炎

胃腸炎では胃や腸の炎症によって消化液が逆流し、泡を含んだ液体や白い泡を吐くことがあります。
下痢や食欲不振を伴うことが多いのも胃腸炎の特徴です。
胃腸炎の多くは1週間程度で改善しますが、原因によっては重症化する場合があるので注意しましょう。

犬の肺水腫はなぜ起こる?

クッションの上で寝ているヨークシャーテリア

犬が肺水腫になると、正常に呼吸できなくなり、酸素を取り込めずに呼吸困難を起こします。
肺水腫には大きく分けて以下の2つのタイプがあります。

心原性肺水腫

心原性肺水腫は犬の肺水腫の原因でもっとも多く、心臓病が原因で発症します。
心臓病によって心臓のポンプ機能が低下し、血液が肺に滞ることで水分が肺に染み出します。
特に小型犬では僧帽弁閉鎖不全症がもっとも多い原因です。
僧帽弁閉鎖不全症に関しては以下の記事をチェックしてみてください。犬の僧帽弁閉鎖不全症の初期症状を見逃さない!|早期発見のポイントを解説

非心原性肺水腫

非心原性肺水腫は、心臓の問題以外の原因で肺に水分がたまる状態を指します。
非心原性肺水腫の原因は

  • ショック
  • 中毒
  • 発作
  • 肺炎

などが挙げられます。
いずれのタイプでも、肺水腫は急速に進行し、命に関わるので注意が必要です。

犬の肺水腫のおもな症状と泡を吐く以外のサイン

肺水腫で泡を吐く症状は、すでに肺のダメージが限界に近い末期段階で現れます。
肺水腫は泡を吐く前にもいくつかのサインが見られることが多いので、見逃さないようにしましょう。
代表的な肺水腫の症状は以下の通りです。

  • 湿った咳をする
  • 苦しそうに呼吸をする
  • 横になれず、座ったまま眠ろうとする
  • 舌や歯茎が紫色(チアノーゼ)になる

泡を吐く前にこれらの異常をキャッチできれば、重症化を防ぐことにつながります。
日頃から犬の呼吸や行動の変化に注意しましょう。

犬が泡を吐いたときにやるべきこと

犬の聴診をする獣医師

犬が泡を吐き、肺水腫の可能性がある場合はすぐに動物病院へ連れて行きましょう。
動物病院へ連れて行くまでの間は以下の点に注意して見ておくことが大切です。

  • 呼吸の様子
  • 意識状態
  • 舌や歯茎の色

また、できるだけ犬を安静にさせ、口や鼻まわりを軽く拭き取り、気道の確保を補助しましょう。
無理に口の中の泡をふき取ろうとするのは犬の負担になるので要注意です。

肺水腫で泡を吐いている時の治療

犬が肺水腫で泡を吐いている場合は緊急かつ集中的な治療が必要です。
まず、最優先されるのは酸素吸入です。
酸素室や酸素マスクで呼吸をサポートしたり、状況に応じて気管にチューブを入れ人工的に呼吸を補助することもあります。
次に、肺の水分を排除するため、利尿薬を注射し、余分な液体を早急に体外へ排泄させます。
心臓病が原因の場合には、心臓の負担を軽減する強心薬や血管拡張薬の投与も重要です。
肺水腫で泡を吐いているときは命に関わる状態なので、適切な対応と迅速な治療が犬の命を救います。

まとめ

犬が泡を吐くとき、背景には肺水腫という重大な疾患が隠れていることがあります。
肺水腫による泡は単なる吐き気ではなく、肺の機能が深刻に損なわれている証拠です。
犬が泡を吐いた場合は決して様子見せず、すみやかに動物病院を受診しましょう。

当院では循環器科の診療に力を入れています。
犬の呼吸の異変を感じたら、早めにご相談ください。

よくある質問

Q.肺水腫になりやすい犬種はいますか?

A.心臓病が原因となる心原性肺水腫は特定の犬種で発症しやすい傾向があります。
特に、僧帽弁閉鎖不全症が多く見られる

  • キャバリア
  • マルチーズ
  • チワワ
  • シーズー

などの小型犬は注意が必要です。
ただし、心臓病以外の原因もあるため、犬種を問わず肺水腫を発症する可能性はあります。

Q.肺水腫を予防するために、日常生活でできることはありますか?

A.肺水腫を完全に予防することは困難ですが、発症リスクを低減させることは可能です。
もっとも重要なのは、原因となりうる心臓病の早期発見・早期治療です。
定期的な健康診断で心臓のチェックを受けましょう。

Q.犬が一度だけ泡を吐いた場合でも、すぐに動物病院を受診すべきですか?

A.一度だけ泡を吐いた場合でも、特に高齢犬や心臓病の持病がある場合は注意が必要です。
呼吸が苦しいなどの変化もある場合は早急な受診をおすすめします。

渋谷区・恵比寿・代官山の動物病院
HALU代官山動物病院

 
 

担当獣医師

内科・循環器科・軟部外科

游 (ユウ, Yu)HALU代官山動物病院 院長

English/Chinese Speaking Veterinarian
「たとえ病気になったとしてもその中で一番幸せに暮らせるように」
患者さん、家族、獣医師間の密なコミュニケーションを大切にしています。

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