犬の心臓病は早期発見と適切な治療が命を左右する病気です。
心臓病治療の中でも利尿剤は症状の悪化を防ぎ、生活の質を維持するために欠かせない薬剤として知られています。
しかし、
「心臓病治療になぜ利尿剤が必要なの?」
「利尿剤の副作用が心配」
と思われる飼い主様もいるのではないでしょうか。
今回は犬の心臓病治療に使われる利尿剤について詳しく解説します。
心臓病の犬を飼われている飼い主様は、ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の心臓病治療の参考にしてみてください。
心臓病の犬に利尿剤が必要な理由
僧帽弁閉鎖不全症をはじめとする犬の心臓病が進行すると、心臓のポンプ機能が低下し、全身に血液を送り出す力が弱まります。
心臓のポンプ機能が低下することで、血液が心臓や肺に溜まりやすくなります。
特に肺に水分が溜まってくると肺水腫を発症する危険性があり、非常に危険です。
肺水腫になると犬は溺れているような状態になり、呼吸が苦しくなってしまいます。
体内に過剰な水分が貯留するのを防ぎ、肺水腫のリスクを下げるために使われる薬が利尿剤です。
利尿剤は過剰な水分を尿として体外に排出する働きがあり、心臓病の症状改善に大きく貢献しますね。
犬の心臓病で使用される利尿剤の種類と特徴

犬の心臓病治療で用いられる利尿剤にはいくつかの種類があり、それぞれ作用機序や特徴が異なります。
利尿剤は犬の病状や他の薬との併用などを考慮し、最適なものを使用します。
犬の心臓病治療で使われることが多い利尿剤は以下の通りです。
ループ利尿剤
ループ利尿剤は犬の心臓病治療でもっとも使用されることが多い利尿剤です。
ループ利尿剤は効果が出るまでの時間が早く、短時間で体内の水分を排出できるため、肺水腫などの緊急性の高いケースでも用いられます。
ただし、長期間の使用で体の電解質バランスが乱れ、体調を崩すことがあるので注意が必要です。
カリウム保持性利尿剤
カリウム保持性利尿剤は他の薬剤と異なり、カリウムの排泄を抑えながら利尿作用を示します。
他の利尿剤に比べ、電解質バランスが乱れるリスクが少ないことが特徴です。
カリウム保持性利尿剤は心臓の筋肉を保護する効果もあり、長期的な心臓病の管理に優れています。
サイアザイド系利尿剤
サイアザイド系利尿剤はループ利尿剤ほど強力ではありませんが、持続的な利尿作用を示します。
サイアザイド系利尿剤はループ利尿剤に対する抵抗性がある犬に対して使用されることが多いです。
犬の心臓病治療において他の利尿剤と併用することで、より効果的な利尿作用を得ることができます。
知っておくべき利尿剤の副作用
利尿剤は心臓病の治療に有効な薬ですが、副作用が現れることがあるので注意しましょう。
もっとも気をつける必要がある利尿剤の副作用は腎障害です。
利尿剤は腎臓に作用に尿量を増やすため、腎臓に負担がかかることがあります。
特に高齢の犬や腎疾患の持病がある犬は注意が必要です。
また、カリウムやナトリウムなどの電解質バランスが崩れることもあります。
特に低カリウム血症は筋肉の脱力感や不整脈などを引き起こす可能性があり、気をつけなければなりません。
利尿剤を使用する場合は上記の副作用に注意し、日頃から愛犬の様子をよく観察することが大切です。
利尿剤投与時の注意点
利尿剤を犬に投与する際には、いくつかの重要な注意点があります。
これらの注意点を理解し、適切に管理することで、犬の健康を守ることができます。
水分補給の確認
利尿剤は尿量を増加させるため、体内の水分を失い、脱水症状を起こしやすくなります。
脱水症状を防ぐためには、常に新鮮な水を自由に飲めるようにしておくことが重要です。
ただし、体の水分量が増えると心臓に負担がかかることがあるため、一度に大量の水分摂取は避けてください。
定期的な経過観察
利尿剤は腎臓に負担をかける可能性があるため、定期的に血液検査を行い、腎機能をモニタリングすることが推奨されます。
特に、腎機能が低下している犬に利尿剤を投与する際はこまめにモニタリングを行い、必要に応じて用量を調整することが重要です。
また、食欲や飲水量なども注意深くチェックするようにしましょう。
投与スケジュールの厳守
利尿剤を犬に与える際は決められたスケジュールを守りましょう。
利尿剤は適切に投与できないと、心臓病のコントロールがうまくできなかったり、副作用が出やすくなってしまいます。
獣医師が指示した用法・用量を厳守し、自己判断での投薬の中止や変更は避けることが大切です。
まとめ
犬の心臓病において、利尿剤は命を守る重要な薬です。
しかし、利尿剤には副作用のリスクもあるため、飼い主様は正しい知識を持って管理することが不可欠です。
当院では循環器科の治療に力を入れています。
愛犬に心臓病の疑いがある場合や利尿剤の使用に不安がある場合は気軽にご相談ください。
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