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犬の僧帽弁閉鎖不全症がステージDに進行したら?|ステージDの治療と日常ケア

犬が僧帽弁閉鎖不全症のステージDと診断されたら、飼い主様は不安や戸惑いを感じるでしょう。
僧帽弁閉鎖不全症は犬によく見られる心臓病の一つであり、その中でもステージDは病気がもっとも進行した状態です。
僧帽弁閉鎖不全症のステージDは適切な治療とケアが不可欠です。

この記事では犬の僧帽弁閉鎖不全症のステージDについて詳しく解説します。
愛犬が僧帽弁閉鎖不全症と診断された飼い主様は最後までお読みいただき、今後の生活の参考にしてみてください。

犬の僧帽弁閉鎖不全症ステージDとは

僧帽弁閉鎖不全症は小型犬に多い心臓病で、左心房と左心室の間にある僧帽弁がうまく閉じず血流が逆流する病気です。
僧帽弁で血液の逆流が起こると、心臓に負担がかかったり、肺に水が溜まって呼吸が苦しくなる肺水腫を発症することもあります。
犬の僧帽弁閉鎖不全症は米国獣医内科学会によりステージA〜Dに病期が分けられ、ステージDはもっとも進行した段階です。
僧帽弁閉鎖不全症のステージDは標準的な治療を行なっても病気のコントロールが難しい治療抵抗性の状態を指します。
ステージDでは心臓の負担を減らすための薬を使用しても、肺水腫や呼吸困難を繰り返すことが多く、生活の質が大きく損なわれます。

僧帽弁閉鎖不全症ステージDで見られやすい症状

口を開け、舌を出して呼吸する犬

僧帽弁閉鎖不全症のステージDの代表的な症状は呼吸困難です。
僧帽弁閉鎖不全症が進行すると、心臓のポンプ機能が低下し、本来は全身に流れるはずの血液の一部が肺に溜まる肺水腫を起こします。
ステージDは肺水腫を繰り返すため、以下のような症状が見られやすいです。

  • ハアハアと浅く速い呼吸を続ける
  • 首を伸ばして苦しそうな姿勢を取る
  • 舌や歯茎が青紫色になる(チアノーゼ)
  • 夜間や安静時にも激しく咳をする
  • 咳と同時に白色やピンク色の泡状の痰を吐き出す

これらの症状が見られた場合は命に関わるケースも少なくありません。
少しでも犬の異変を感じた場合はすぐに動物病院を受診しましょう。

僧帽弁閉鎖不全症ステージDの治療

僧帽弁閉鎖不全症ステージDに進行した犬では、心臓の機能が著しく低下し、標準的な治療だけでは症状のコントロールが困難になります。
そのため、複数の治療法を組み合わせて犬の苦痛をできるだけ軽減し、生活の質を保つことが最優先です。
ステージDの治療では

  • 強心薬
  • 利尿薬
  • 血管拡張薬

などを最大限の量で組み合わせて使うことが多いです。
特に利尿薬は複数種類を併用したり、点滴や注射薬での投与が必要になることもあります。

肺水腫や呼吸困難を繰り返す場合は酸素吸入も欠かせません。
酸素吸入を行うことで、呼吸を楽にし、体への負担を和らげることができます。
また、犬の状態によっては外科手術が行われることもあります。

僧帽弁閉鎖不全症ステージDの予後

一般的に、僧帽弁閉鎖不全症のステージDと診断された犬の予後は数週間から数か月程度とされています。
ステージDでは、多くの犬で肺水腫の再発や重度の呼吸困難などがたびたび見られるようになります。
治療を組み合わせても効果が安定しないことが多く、回復や長期の安定した状態を維持することが困難です。

ただし、ステージDと診断されたからといって、すぐに諦める必要はありません。
適切な治療や日々のきめ細やかな管理によって、犬の苦痛を最小限に抑え、穏やかな日々を過ごすことができます。

飼い主様ができる僧帽弁閉鎖不全症ステージDの犬のケア

愛犬を抱っこしている親子

僧帽弁閉鎖不全症ステージDの犬に対するケアは動物病院での積極的な治療同様に、ご家庭での細やかな心配りがとても重要です。
ここでは、飼い主様が自宅でできるケアのポイントをご紹介します。

呼吸状態や体調の観察

僧帽弁閉鎖不全症の犬は呼吸状態のチェックが重要です。
寝ている時の犬の安静時呼吸数は10〜20回/分が正常です。
呼吸数が30回/分を超える場合は肺水腫を発症している可能性もあるので注意しましょう。
呼吸以外にも

  • 咳の有無
  • 舌の色
  • 食欲

などの小さな変化も見逃さないことが大切です。
犬の状態はメモなどで記録しておくと、獣医師との情報共有に役立ちます。

リラックスできる環境づくり

ストレスや興奮は心臓の負担になり、僧帽弁閉鎖不全症の症状が悪化することもあります。
犬が落ち着いて過ごせるように、静かな場所にベッドや布団を用意しましょう。
寝ている時間が多い場合は体圧分散マットや柔らかいタオルで床ずれを防ぎ、こまめに体の向きを変えてあげることも大切です。

体温調節に気をつける

体温の低下や上昇も犬の心臓には負担になります。
寒い日は毛布やヒーターでほどよく温め、暑い日は風通しをよくして過ごさせてあげましょう。
必要に応じてクーラーなどで温度や湿度を調整できる環境が望ましいです。

食事のサポート

僧帽弁閉鎖不全症ステージDの犬は全身状態が悪化し、食欲が落ちることも多いです。
エネルギー不足は体力の低下を招くため、必要に応じて食事のサポートを行いましょう。
ただし、一度にたくさん食べさせると負担がかかるため、ふやかしたフードや流動食などを複数回に分けて与える必要があります。

酸素ケアの導入

僧帽弁閉鎖不全症ステージDの犬では呼吸が苦しくなることが多いです。
自宅でも呼吸が苦しい場合は酸素室の設置を検討しましょう。
日常的に酸素室で過ごしてもらうことで、呼吸状態の悪化を防ぐことができます。

まとめ

僧帽弁閉鎖不全症ステージDでは心不全症状により、犬の生活の質が低下します。
ステージDの犬はできる限り苦しみが少ない楽な時間を過ごせるようにすることが大切です。
飼い主様は獣医師とよく相談しながら、愛犬にとって最良のケアを選んでいくことが重要ですね。

当院では犬の僧帽弁閉鎖不全症の治療に力を入れています。
僧帽弁閉鎖不全症の治療でお悩みの飼い主様は気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q.犬の咳は感染症やアレルギーでも起こりますか?

A.犬の咳は心臓病以外にもウイルスや細菌による感染症やアレルギーなどでも生じます。
これらの咳は短期間で治ることも多く、症状の経過や同時に現れる症状が心臓病とは異なる場合があります。
咳が続く際は自己判断をせず、必ず獣医師の診察を受けて原因を特定しましょう。

Q.犬が咳をしている時、自宅でできる応急処置はありますか?

A.まず犬を安静にさせ、ストレスや興奮を避けることが大切です。
乾燥や強い香りなど、咳を悪化させる環境因子を取り除きましょう。
可能であれば、咳をしている時に様子を動画で撮影すると診断の手助けになります。

Q.犬の咳を予防するために日常で気をつけることはありますか?

A. 定期的な健康診断やワクチン接種で感染症予防を行うことが重要です。
また、タバコの煙やハウスダストを避け、部屋を清潔に保つことで呼吸器の負担を減らせます。
肥満も咳を悪化させる要因なので、適度な運動とバランスの取れた食事で健康維持を心がけることも咳の予防に役立ちます。

渋谷区・恵比寿・代官山の動物病院
HALU代官山動物病院

 
 

担当獣医師

内科・循環器科・軟部外科

游 (ユウ, Yu)HALU代官山動物病院 院長

English/Chinese Speaking Veterinarian
「たとえ病気になったとしてもその中で一番幸せに暮らせるように」
患者さん、家族、獣医師間の密なコミュニケーションを大切にしています。

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