犬の心臓病は命を脅かす深刻な病気の一つです。
特に拡張型心筋症は大型犬に多く見られ、進行すると心臓のポンプ機能が低下し、さまざまな症状を引き起こします。
拡張型心筋症は早期に発見し適切な治療を行うことが、犬の健康を守るために非常に重要です。
この記事では犬の拡張型心筋症について詳しく解説します。
愛犬を拡張型心筋症から守るために、ぜひ最後までお読みください。
犬の拡張型心筋症とは
拡張型心筋症は心臓の筋肉が薄くなってしまう病気です。
心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割を担っていますが、拡張型心筋症になるとポンプ機能が低下します。
心臓のポンプ機能が低下すると、全身の臓器に血液が行き渡らなくなり、さまざまな症状が現れます。
犬の拡張型心筋症は遺伝的な要因が考えられており、以下のような大型犬種で多いです。
- ドーベルマン
- グレート・デン
- ボクサー
- アイリッシュ・ウルフハウンド
このように拡張型心筋症は大型犬によく見られる病気ですが、アメリカン・コッカースパニエルなどの中型犬でも発症することがあります。
拡張型心筋症は栄養不足が原因のことも
犬の拡張型心筋症は遺伝的な要因で発症することが多いですが、栄養不足が原因とされることもあります。
特にタウリンやL-カルニチンなどの特定の栄養素の不足は拡張型心筋症の発症に関連していると考えられていますね。
タウリンは心筋の健康を維持するために重要なアミノ酸であり、心臓の機能において重要な役割を果たします。
タウリンが不足すると、心筋の収縮力が低下し、拡張型心筋症のリスクが高まるため注意が必要です。
L-カルニチンは心筋のエネルギー代謝に関与しており、L-カルニチンが不足すると心臓の機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
最近の研究では、グレインフリー食が拡張型心筋症の発症に関連している可能性が指摘されています。
グレインフリー食は豆類や肉を多く含む一方で、タウリンやカルニチンが不足しがちです。
タウリンやL-カルニチンの不足が拡張型心筋症のリスクを高めるため、犬の食事にはこれらの栄養素が十分に含まれていることが重要です。
犬の拡張型心筋症の症状
犬の拡張型心筋症は初期段階では無症状であることが多く、気がつかないうちに病気が進行している場合も少なくありません。
しかし、病気が進行すると以下のような症状が現れます。
- 元気や食欲が低下する
- 運動を嫌がるようになる
- 咳をする(特に運動後や夜間)
- 呼吸が早くなる
- 失神する
さらに症状が進行すると、心不全による胸水や腹水が溜まったりすることもあります。
また、不整脈を起こし、突然死をするリスクもあるので注意しましょう。
拡張型心筋症の治療
残念ながら、犬の拡張型心筋症を完全に治す治療法はありません。
しかし、適切な治療を行うことで、病気の進行を遅らせ、犬の生活の質を維持することができます。
ここでは拡張型心筋症の治療について詳しくみていきましょう。
薬物療法
拡張型心筋症は心臓のポンプ機能が低下する病気であるため、心臓の収縮力を高める強心剤を使用します。
強心剤を使用することで血液を効率的に全身に送り出すことが可能です。体内の余分な水分を排出させ、心臓の負担を軽減するために利尿剤を使用することもあります。
栄養管理
拡張型心筋症を防ぐにはタウリンやL-カルニチンを十分に摂取することが大切です。
これらの栄養素が不足している場合はバランスのよい食事に変更したり、サプリメントでタウリンやL-カルニチンを摂取する必要があります。
心臓の負担を軽減するための特別な療法食を使用することもあります。
その他の治療法
拡張型心筋症が進行すると、心不全により胸水が貯留することもあります。
胸水が溜まってくると犬は苦しくなるので、針を使って液体を排出する処置を実施します。
また、呼吸が苦しい場合には酸素吸入も重要です。
犬の拡張型心筋症の予後
犬の拡張型心筋症の平均的な生存期間は発症から半年から2年程度とされています。
特にドーベルマンは予後が悪いと言われているので注意が必要です。
しかし、拡張型心筋症は早期発見と適切な治療により、症状を緩和し、寿命を延ばすことができる可能性があります。
拡張型心筋症を早期発見するためには定期的な健康診断や心臓検査を受けることが大切です。
拡張型心筋症は若齢で発症することもあるので、好発犬種を飼っている場合は若いうちから定期的に獣医師の診察を受けましょう。
まとめ
犬の拡張型心筋症は完治は難しい病気ですが、早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。
特に好発犬種を飼っている場合は定期的な検査が重要です。
当院では循環器科の診療に力を入れています。
犬の心臓の健康が気になる方は気軽にご相談ください。
よくある質問
Q.拡張型心筋症はどのくらいの年齢で発症しやすいでしょうか?
A. 拡張型心筋症は中年齢から高齢の犬で発症しやすい傾向がありますが、犬種によっては3〜4歳など、比較的若い年齢から発症するケースもあります。
特にドーベルマンなどの好発犬種は若いうちから定期的な心臓検査を受けることがおすすめです。
Q.一度拡張型心筋症と診断された場合、他の家族犬もチェックした方が良いですか?
A.拡張型心筋症は遺伝的な要因が関与しているとされています。
特に親子、兄弟犬などがいる場合は健康に見えても症状が出る前から心臓検査を受けることが理想的です。
Q.拡張型心筋症の犬の日常生活で注意した方がよいことはありますか?
A.激しい運動やストレスは心臓に負担をかけるため、安静を保ち、散歩も体調を見ながら無理なく行いましょう。
また、獣医師の指導に従った栄養管理を心がけることが大切です。
定期的な検査と体調の変化の観察も忘れず行ってください。
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