「最近、犬が散歩を嫌がるようになった」
「犬が夜中に咳き込むことが増えた」
もしかしたら、このような症状は拡張型心筋症のサインかもしれません。
拡張型心筋症は大型犬に多く見られる心臓病で、発症から平均6ヶ月〜2年で命に関わる状態に進行する可能性があります。
しかし、早期発見と適切な治療により、犬の生活の質を保ちながら寿命を延ばすことが可能です。
この記事では、獣医師として多くの心臓病症例に携わってきた経験をもとに、拡張型心筋症の症状から治療法まで詳しく解説します。
特に大型犬の飼い主様はぜひ最後までお読みいただき、拡張型心筋症の理解を深めましょう。
犬の拡張型心筋症とは
拡張型心筋症は、心臓の筋肉が薄く伸びてしまい、心室(心臓の部屋)が異常に拡大する病気です。
正常な心臓は筋肉が収縮することで血液を全身に送り出しますが、拡張型心筋症では以下のような変化が起こります。
- 心筋が薄くなり、収縮力が低下する
- 心室が風船のように拡大し、効率的に血液を送り出せなくなる
- 全身の臓器への血液供給が不足し、心不全の状態に陥る
この結果、拡張型心筋症が進行すると肺に水が溜まる(肺水腫)、お腹に水が溜まる(腹水)などの重篤な症状が現れます。
拡張型心筋症は大型犬に多い?
拡張型心筋症は遺伝的要因が強く関与しており、特定の犬種で発症リスクが高いことが知られています。
特に
- ドーベルマン
- グレート・デン
- ボクサー
- アイリッシュ・ウルフハウンド
- セント・バーナード
などの大型犬に多いです。
また、大型犬だけでなく、アメリカン・コッカースパニエルなどの中型犬でも発症することがあります。
これらの犬種を飼っている場合は、若齢期(2〜3歳)から定期的な心臓検査を受けることをおすすめします。
拡張型心筋症の初期症状

拡張型心筋症の初期段階では無症状であることが多いです。
飼い主様が異変に気づいたときには、すでに病気がかなり進行しているケースも少なくありません。
拡張型心筋症を初期段階で発見するには日常の小さな変化を見逃さない観察力が重要になります。
拡張型心筋症の初期に見られるサインは以下の通りです。
- 散歩の途中で立ち止まることが増えた
- 階段の上り下りを嫌がるようになった
- 咳き込むようになった
- 寝ているときに呼吸が速くなった
また、拡張型心筋症により心臓のポンプ機能が低下すると、全身の臓器への血流が不足し、食欲不振や元気消失といった症状が現れます。
食欲や体重の変化は他の病気でも見られるため、拡張型心筋症と気づきにくいことがあるので注意しましょう。
拡張型心筋症の命に関わる危険なサインとは
拡張型心筋症が進行すると、命に関わる危険な状態に陥ることも少なくありません。
以下のような症状に気をつけましょう。
- 突然倒れる、失神する
- 舌や歯茎が青白い、紫色(チアノーゼ)
- 座ったまま動けず、横になれない
- 口を開けたまま激しく呼吸している
これらは心臓が危険な状態にあることを示すサインです。
数時間で命に関わる状態に進行する可能性があるため、様子を見ることなく、動物病院を受診してください。
犬の拡張型心筋症の治療法はあるの?

残念ながら、拡張型心筋症を完全に治す方法は現在ありません。
しかし、適切な治療により病気の進行を遅らせ、犬の生活の質を維持することは可能です。
拡張型心筋症の治療では、以下のような薬剤を組み合わせて使用します。
- 強心剤:心筋の収縮力を高め、血液を効率的に送り出す
- ACE阻害剤:血管を広げることで、心臓への負担を減らす
- 利尿剤:体内の余分な水分を排出する
また、薬剤だけでなく栄養面からのアプローチも重要です。
拡張型心筋症はタウリンやL-カルニチンなどの不足で発症することもあります。
タウリンやL-カルニチンの欠乏が確認された場合はサプリメントで補充することもあります。
拡張型心筋症の症状が進行し、呼吸困難などが見られる場合には酸素室での管理が必要です。
酸素濃度の高い環境で安静にすることで、心臓への負担を最小限に抑えます。
このように状況に合わせて適切な治療を行うことで拡張型心筋症の犬が快適に過ごせる時間を延ばすことができます。
犬の拡張型心筋症とフードの関係については以下の記事をご覧ください。
犬の拡張型心筋症はフードが関係する?|心臓を守るための食事の考え方
犬の拡張型心筋症の予後
犬の拡張型心筋症の余命や予後は、診断された時点の病期と、その後にどれだけ適切な治療・管理が行えるかによって大きく左右されます。
拡張型心筋症は進行性の心臓病であり、症状が出てから発見された場合、すでに心不全を伴っていることも少なくありません。
一方、無症状の段階で見つかれば、薬物療法や食事管理によって心臓への負担を軽減し、病気の進行を緩やかにすることが可能です。
一般的に、拡張型心筋症と診断されてからの生存期間は半年〜2年程度とされていますが、これはあくまで平均的な目安です。
早期に発見され、継続的な治療と定期的な心臓検査を行っている犬の中には、それ以上の期間を安定した状態で過ごせるケースもあります。
拡張型心筋症は若齢期からの定期検査が予後を左右する重要なポイントとなります。
まとめ
犬の拡張型心筋症は重い病気ですが、早期発見・継続的な治療で、穏やかな生活を送ることが可能です。
拡張型心筋症の好発犬種を飼っている方は定期的に心臓検査を受けることをおすすめします。
当院では循環器診療に力を入れ、拡張型心筋症の検査や治療にも対応しています。
愛犬の心臓の健康が気になる方は、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q.拡張型心筋症の犬に日常生活で気を付けるべきことはありますか?
A.激しい運動や急な温度変化は心臓へ負担をかけるため避けましょう。
また、ストレスを減らす静かな環境づくりと栄養バランスの取れた食事管理が大切です。
定期的な体重測定と呼吸数のチェックも早期発見に役立ちます。
Q.拡張型心筋症の犬で突然死はどの程度起こりますか?
A.特に症状が強くなった進行期では、心臓のリズム異常から突然死するケースが報告されています。
ドーベルマンなど一部犬種でリスクが高く、定期検診と治療の継続が突然死を防ぐ上で非常に重要です。
Q.拡張型心筋症の予防に効果的な方法はありますか?
A.完全な予防法はありませんが、タウリンやL-カルニチンを含む良質なフードの給与、適度な運動が心臓の健康維持に役立ちます。
また、好発犬種では2歳頃から年1回の心エコー検査を受けることで、早期発見・早期治療につながります。
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