わんちゃん・猫ちゃんの目の病気は、ご家族様が気が付きやすいものの一つです。
ご家族様が来院されるきっかけとして、『目が白くなった』『白内障が心配』といった声も多く聞きます。
今回は、目が白く見える『白内障』という病気と、白内障と間違われやすい『核硬化症』、またその他に目が白く見える病気について紹介していきます。
白内障ってどういう病気
白内障は人間でも知られている病気ですので、聞いたことがある方も多いと思います。一方で『目が見えなくなるの?』『手術が必要なの?』『放っておくとどうなるの?』など多くの疑問も耳にします。
では、白内障とは実際にはどのような病気なのでしょうか。
目の中にはレンズの役割をする『水晶体』があり、ものを見るときにピントを調節しています。
この水晶体は多くの繊維組織からできており、この繊維組織の状態が変化すると水晶体が白く濁って見えます。
水晶体が濁ると視覚が妨げられるため、白内障が進行すると失明に至ります。また、水晶体の状態が変化することで、目の中で他の病気が引き起こされることもあります。
白内障は、その原因と進行の程度によって分類されます。
◆白内障の原因の例
・加齢…加齢に伴い、水晶体の繊維組織が固くなり、水晶体が白濁します。
・糖尿病…異常な糖の代謝物が水晶体に蓄積します。
・炎症…
・外傷…猫のに引っ掻かれたり、他の犬に噛まれたりして水晶体が傷つきます。
・遺伝…遺伝的に若齢で発症することがあります。進行が早いことが特徴です。
◆白内障の進行の分類
・初発白内障…水晶体の15%以下の混濁が見られます。
・未熟白内障…水晶体の15%以上の混濁が見られますが、視覚に異常はありません。
・成熟白内障…水晶体の混濁により、視覚の異常が見られます。
・過熟白内障…水晶体が膨化したり、萎縮したりします。水晶体脱臼やぶどう膜炎を併発するリスクがあります。
白内障が引き起こす他の病気
白内障が進行すると他の病気を引き起こす原因になります。白内障を点眼薬で治療することはできませんが、白内障に伴う他の病気を予防するために点眼薬を使うことがあります。
◆白内障が引き起こす病気の例
・ぶどう膜炎…水晶体の蛋白質が眼内に溶け出すことで、炎症が起こります。
・水晶体脱臼…水晶体の大きさが変化することで、脱臼が起こりやすくなります。
・緑内障、網膜剥離など
このような併発疾患により失明する可能性もあります。
白内障と間違われやすい『核硬化症』
水晶体の中央の『核』の部分で繊維組織が固くなると、その部分が白く濁って見えます。見た目では白内障と似ていますが、『スリットランプ』という拡大鏡で検査をすると違いが分かります。
核硬化症は加齢変化のひとつであり、失明の原因にはなりません。
←スリットランプを用い、動物の目を観察している様子
目の表面が白く濁る病気
白内障や核硬化症は目の中の水晶体が白くなる病気ですが、目の表面の『角膜』が白くなる病気もあります。
◆角膜に結晶が沈着する病気
角膜の表面にさまざまな物質が沈着することがあります。この沈着物により目の痛みが出たり、角膜潰瘍が起こることもあります。
・角膜ジストロフィー
遺伝性で、両側の目の中央部に円形の沈着物が見られます。コレステロールやリンが沈着することが多いです。
・角膜脂質症
甲状腺機能低下症や糖尿病など、脂質代謝に関わる全身性疾患が原因で、角膜に脂質の沈着物が見られます。
・角膜変性症
ぶどう膜炎や角膜炎などの他の目の病気や、カルシウム異常を伴う全身性疾患が原因で起こります。
◆角膜内皮の問題
・角膜内皮ジストロフィー
角膜内皮は角膜の水分の調節をおこなっていますが、ここに障害が起きると角膜が浮腫み、白濁して見えます。ボストンテリアやチワワ、ダックスフントで多いと言われています。
角膜潰瘍の原因にもなります。
◆角膜に炎症が起こる病気
・角膜潰瘍
角膜上皮が欠損します。潰瘍の周囲が浮腫や沈着物によって、白く見えることもあります。
・慢性表層性角膜炎
ミニチュア・ダックスフントやジャーマンシェパードなどの犬種に多い、免疫異常による病気です。角膜に血管を伴う組織が発生します。
・表層点状角膜炎
ダックスフントやシェルティに多く見られる、免疫異常による病気です。
当院で眼科専門医による診療を
このように、「目が白い」と言っても、様々な病気が考えられ、治療も異なります。
また、よく知られている白内障でも、年齢のせいだから…と放っておくと他の病気が起きてくることもあります。
目の変化は、ご家族が自宅で気が付きやすいことの一つです。また、視覚はご家族とのコミュニケーションにも大切です。普段の生活で気になる様子がある場合は、遠慮なくご相談ください。
当院では月に一度の眼科専門医による診療もおこなっております。
ご予約をお待ちしております。
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