呼吸が苦しい

猫の心筋症は甲状腺機能亢進症が原因?|心筋症との関係性と治療の考え方

猫の心筋症は、心臓の筋肉に異常が起こり、血液をうまく送り出せなくなる病気です。
猫の心筋症にはさまざまな原因がありますが、そのひとつとして甲状腺機能亢進症が関係しているケースがあります。
心筋症は進行すれば命に関わることもあるため、早い段階で気づき、原因を正しく見極めて適切な治療につなげることがとても大切です。

この記事では、
「心筋症と甲状腺機能亢進症にはどんな関係があるの?」
「心筋症と甲状腺機能亢進症が併発している場合の治療はどう考えるの?」
「心筋症は治るの?」
といった疑問に、できるだけわかりやすくお答えします。
ぜひ最後までお読みいただき、愛猫にとって適切な治療と、安心して過ごせる毎日につなげていただければ幸いです。

猫の心筋症とは?

猫の心筋症は、心臓の筋肉(心筋)に異常が起こり、心臓が血液をうまく全身に送り出せなくなる病気です。
心筋が厚くなったり硬くなったりすることで、心臓の動きが制限され、体に十分な血液が行き渡らなくなります。
心筋症は初期には目立った症状が出にくく、元気そうに見えることも少なくありません。
しかし進行すると、呼吸が苦しくなる肺水腫や、血の塊が血管に詰まる血栓塞栓症など、命に関わる状態を引き起こすことがあります。
猫の心筋症には、心臓そのものに原因がある場合だけでなく、甲状腺機能亢進症など他の病気が影響して起こるケースもあります。
そのため、心筋症と診断された際には、原因を丁寧に調べることが、その後の治療や予後を考えるうえでとても重要です。

なぜ猫の甲状腺機能亢進症で心筋症が起こるの?

顎を撫でられて気持ちよさそうにする猫

猫の心筋症は、甲状腺機能亢進症が原因となって起こることもあります。
甲状腺機能亢進症とは、首のあたりにある「甲状腺」から甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう病気で、多くは高齢の猫で発症します。
甲状腺ホルモンは、体の代謝や心臓の動きに関わり、エネルギーの使い方や体温を調整する重要なホルモンです。
そのため、甲状腺機能亢進症では「しっかり食べているのに痩せてくる」「活動性が高まり、怒りっぽくなる」といった症状が現れやすいです。
また、甲状腺ホルモンにより心臓が「常にフル稼働」の状態となってしまい、大きな負荷がかかります。
この負荷に適応しようとして、心筋が少しずつ厚くなることがあります。
このような心臓の変化が、猫の甲状腺機能亢進症で心筋症がみられる理由です。

猫の心筋症と甲状腺機能亢進症が併発している場合の検査

猫で心筋症が見つかった場合、まず大切なのは「心筋症がなぜ起きているのか」を見極めることです。
猫の心筋症には、心臓そのものの病気として起こるタイプだけでなく、甲状腺機能亢進症など他の病気が影響して二次的に起こるケースがあるためです。
そのため、心エコー検査で心臓の状態を詳しく調べると同時に、血液検査や血圧測定などを行い、甲状腺機能亢進症の有無を含めて全身の状態を確認します。
心筋症が他の病気による二次的に起きたものである可能性が高い場合は、心筋症だけではなく、その原因も含めて治療することが重要です。
原因を正しく把握することで、治療の選択肢や見通しが大きく変わることもあります。

猫の心筋症と甲状腺機能亢進症、どう治療するの?

おやつを食べている猫

猫の心筋症の治療では、まず心臓の負担を減らし、命に関わる状態を防ぐことが重要です。
猫の心筋症では、全身に血液を送り出す力が低下し、心拍数が過剰に増えてしまいます。
そこで、心拍数を抑える薬や心臓の働きを助ける薬を用いて、心臓が無理なく血液を送り出せる状態を目指します。
すでに肺水腫や胸水などの心不全症状がある場合には、利尿薬を用いて呼吸を楽にする治療が優先です。
また、状態によっては血栓塞栓症を防ぐ治療が必要になることもあります。
心筋症の原因として甲状腺機能亢進症が関係している場合には、心筋症の治療を行いながら、甲状腺の治療を併せて行うことが大切です。
甲状腺ホルモンをコントロールすることで心臓への過剰な負担が軽くなり、結果として心筋症の改善につながる可能性があります。

猫の甲状腺機能亢進症のおもな治療法は、内服薬です。
チアマゾールという薬を使い、甲状腺ホルモンの合成や分泌を抑えることで、体への負担を減らします。
内服薬での管理が難しい場合や、副作用などで継続ができない場合には、ヨード(ヨウ素)を制限した療法食を選択することもあります。
心筋症の重症度や経過は猫ごとに異なるため、心エコー検査などで定期的に状態を確認し、その時々に合わせた管理を続けることが大切です。

猫の心筋症と甲状腺機能亢進症は治るの?

猫の心筋症は、原因や状態によって経過が大きく異なる病気です。
すべての心筋症が元の心臓に戻るわけではありませんが、甲状腺機能亢進症が原因の場合は、治療によって心臓の状態が改善する可能性があります。
一方で、すでに心筋の変化が進行している場合や、甲状腺とは無関係の心筋症がある場合には、心臓の状態が完全に元に戻らないこともあります。
そのため大切なのは、「治るかどうか」だけでなく、治療によって心筋症がどのように変化していくのかを継続して評価することです。
なお、猫の甲状腺機能亢進症は、基本的に完治する病気ではなく、長期的な管理が必要です。
しかし、内服薬によって甲状腺ホルモンを適切にコントロールできるケースは多く、安定した生活を送れる猫も少なくありません。
いずれの場合にも、治療を始めたあとは定期的な血液検査や心臓のチェックを続けることが、良好な予後につながる大切なポイントです。

まとめ

猫の心筋症には、甲状腺機能亢進症が関与しているケースがあります。
甲状腺機能亢進症は高齢の猫に多くみられ、気づかないうちに心臓へ負担をかけてしまう病気です。
心筋症は一生付き合っていく必要のある病気ですが、原因を正しく見極め、適切に治療を行うことで心臓の状態が改善する可能性も十分にあります。
定期的な検査を続けながら、日々の小さな変化に気づいてあげることが、愛猫と穏やかな時間を過ごすための大切なポイントです。
ご心配なことや気になる様子がありましたら、気軽に当院までご相談ください。

よくある質問

Q.猫の甲状腺機能亢進症は予防できますか?

A.猫の甲状腺機能亢進症の明確な予防法はありませんが、早期発見が重要です。
7歳以上の猫は年に1回以上の健康診断や血液検査を受けることで、甲状腺の異常を早く見つけることができます。

Q.甲状腺機能亢進症や心筋症の猫が自宅で見せやすい注意サインはありますか?

A.甲状腺機能亢進症では多食なのに痩せる、多飲多尿などの症状が見られます。
心筋症では呼吸が早い・苦しそう、元気や食欲の低下などが見られます。
ちょっとした変化でも早めに相談しましょう。

Q.猫の心筋症は遺伝しますか?

A.メインクーンやラグドールなどの大型猫種では遺伝性肥大型心筋症が知られており、親猫から子猫へ受け継がれることがあります。
そのため、これらの猫種では定期的な心臓検査が推奨されています。
ただし、甲状腺機能亢進症による二次性心筋症は遺伝しません。

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HALU代官山動物病院

 
 

担当獣医師

循環器科・内科・軟部外科

横井 (ヨコイ, Yokoi)

動物さんたちの日々の体調管理に助力させていただけたら幸いです。 分からないことや不安に思うことがあれば気兼ねなくご質問ください。

内科・循環器科・軟部外科

游 (ユウ, Yu)HALU代官山動物病院 院長

English/Chinese Speaking Veterinarian
「たとえ病気になったとしてもその中で一番幸せに暮らせるように」
患者さん、家族、獣医師間の密なコミュニケーションを大切にしています。

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