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猫の肥大型心筋症はラグドールに多い?|知っておきたい検査の考え方

ラグドールは、ふわふわの被毛と穏やかな性格で人気の高い猫種です。
一方で、心臓病のひとつである肥大型心筋症のリスクがやや高いことも知られています。
猫の肥大型心筋症は、初期には目立った症状が出にくく、気づいた時には進行していることも少なくありません。
重症化すると命に関わることもあるため、早期発見と適切なチェックがとても重要です。

この記事では、
「猫の肥大型心筋症とは?」
「肥大型心筋症とラグドールとの関係は?」
「肥大型心筋症は遺伝子検査でどこまで分かるの?」
といったポイントを、飼い主様にもわかりやすく解説します。
ラグドールと暮らしている方は、日頃の見守りと受診判断の目安として、ぜひお役立てください。

猫の肥大型心筋症とは?

猫の肥大型心筋症は、心臓の筋肉(心筋)が厚くなることで心臓の内側の空間が狭くなり、血液を全身に送り出しにくくなる心臓病です。
猫でもっとも多い心臓病として知られ、若い猫から高齢猫にまで幅広く発症します。
猫の肥大型心筋症は、初期には目立った症状が出にくく、健康診断で偶然見つかることも少なくありません。
進行すると呼吸が苦しくなる、血栓が詰まって足が動かなくなるなどの重い症状を起こすことがあり、早期発見と定期的な検査が重要です。

ラグドールは肥大型心筋症になりやすい?

ラグドールが室内で横顔を見せている様子

ラグドールは、その見た目や性格から人気の高い猫種ですが、肥大型心筋症の発症リスクが他の猫種よりやや高いことが知られています。
ラグドールやメインクーンでは、心筋の動きに関わる「MYBPC3」という遺伝子の変化(遺伝子変異)が、この病気と関連すると報告されています。
MYBPC3遺伝子変異があると心筋の働きに影響が生じ、その結果として心筋が厚くなりやすいためです。
このように遺伝子変異と肥大型心筋症の関連が判明しているため、現在では遺伝子変異を調べる検査も行われています。

ラグドールの肥大型心筋症、遺伝子検査でわかるの?

ラグドールでは遺伝子検査により、肥大型心筋症を引き起こす遺伝子変異を持っているかどうかを調べることが可能です。
ただし、遺伝子検査の結果だけで、将来必ず肥大型心筋症を発症するかどうかまでは判断できません。
遺伝子検査の結果には、次のような特徴があります。

  • 変異があっても、必ず肥大型心筋症を発症するとは限らない
  • 変異がなくても、肥大型心筋症にならない保証にはならない
  • まだ解明されていない肥大型心筋症の原因もある

つまり、遺伝子検査は「診断」ではなく、あくまで発症リスクを知るための補助情報という位置づけです。
遺伝子検査で陽性だった場合はよりこまめに心臓の状態をチェックをすることが望ましいですが、陰性でも肥大型心筋症を発症することがあるため、安心はできません。
また、遺伝子検査では肥大型心筋症の診断や評価はできず、実際の心臓の動きや壁の厚さを心エコー検査で直接確認する必要があります。
遺伝子検査の結果によって、肥大型心筋症の治療方針が決まることはありません。
そのため、遺伝子検査は「必須の検査」というより、理解したうえで選択する「任意の検査」と考えるのが妥当です。

ラグドールの肥大型心筋症はどうやって診断するの?

心電図用紙の上に置かれた聴診器と心エコー検査画像

肥大型心筋症の診断で、もっとも重要なのものが心エコー検査です。
心エコー検査では以下の項目を確認し、重症度も含めて診断・評価します。

  • 心臓の動き
  • 心筋の厚み
  • 心房の広がり
  • 血流の状態

心エコー検査は基本的に痛みがなく、多くの猫で無麻酔のまま実施できます。
軽い毛刈りを行うことはありますが、体への負担は比較的少ない検査です。
そのため、ラグドールでは目立った症状がない場合でも、早期発見を目的として受ける価値があります。
特にシニア期に入ったら、定期的に心エコー検査で心臓の状態を確認していくと安心です。
心エコー検査を受けることで症状が出る前の変化に気づける可能性が高まり、より早い段階から適切な対応につなげることができます。

ラグドールが肥大型心筋症と診断されたらどうするの?

肥大型心筋症と診断された場合、まず経過観察で様子を見るのか、すぐに投薬を始めるのかは、その時点の心臓の状態やリスクによって判断が分かれます。
いずれの場合でも、定期的な再検査とあわせて、ご家庭での体調チェックがとても大切です。
以下に、それぞれの状況におけるポイントをまとめました。

経過観察の場合

肥大型心筋症であっても症状や心拡大がなければ、経過観察になる場合があります。
経過観察中は、食欲や動き方の変化などを日頃から見ておき、気づいたことを記録していただくと診療時の評価に役立ちます。
なかでも重要なのが、安静時の呼吸数の確認です。
診察室では緊張によって呼吸が速くなりやすいため、落ち着いて眠っているときに1分間の呼吸数を数える方法が、より実態に近い指標になります。
変化があった場合に備えて、動画で記録しておくのも有効です。
安静時呼吸数は1分間に30回未満が目安ですが、1分間に40回以上の状態が続く場合は早めの受診が必要です。
また、口を開けて呼吸している、お腹を大きく動かしながら呼吸しているといった様子が見られる場合も、迷わず受診してください。

投薬が必要な場合

肥大型心筋症によって呼吸が速い、苦しそうといった症状がみられる場合は、投薬による治療が必要です。
また、症状がなくても、心エコー検査で心筋の肥厚や左心房の拡大が重度と判断された場合には、合併症を防ぐ目的で投薬を開始することがあります。
使用するのは心臓の負担を軽くする薬や血栓を予防する薬などで、病状に応じて選択されます。
投薬の目的は肥大型心筋症の完治ではなく、進行をゆるやかにして合併症を防ぎながら生活の質を維持することです。
薬を嫌がる子も少なくありませんが、投薬補助のおやつなどを使うことで負担を減らせます。

肥大型心筋症のラグドールが日常生活で気をつけることは?

肥大型心筋症のラグドールと暮らすうえで大切なのは、体重を適切に保ち、できるだけストレスの少ない環境を整えることです。
体重が増えると心臓への負担も増えるため、太らせないよう心がけましょう。
また、食事はなるべく心臓病用のフードを与えると安心です。

運動については、激しい動きは控えたいものの、完全に制限する必要はありません。
急なダッシュや連続したジャンプを避けることを目安に、無理のない範囲で過ごさせてあげることが大切です。

まとめ

ラグドールでは遺伝子変異により肥大型心筋症を発症する場合があることが知られており、特に意識しておきたい病気の一つです。
肥大型心筋症の遺伝子検査もありますが、あくまでリスク評価のための補助的なものです。
肥大型心筋症の診断や治療方針の決定には心エコー検査が欠かせません。
肥大型心筋症は気付きにくい側面もあるため、気になる変化があれば早めに相談し、継続的に見守っていくことが何より大切です。
検査や治療について、不安な点があればいつでも当院までご相談ください。

よくある質問

Q.ラグドールの肥大型心筋症は何歳頃から発症することが多いですか?

A.ラグドールの肥大型心筋症は通常3〜7歳頃に発症することが多いですが、1歳以下の若い猫や10歳を超えてから発症する場合もあります。
遺伝性の場合は比較的若い年齢で発症する傾向があるため、2歳頃から定期的な心エコー検査を受けることをおすすめします。

Q.肥大型心筋症のラグドールは寿命が短くなってしまうのでしょうか?

A.早期発見と適切な治療により、多くのラグドールは診断後も数年間良好な生活を送ることができます。
無症状の軽度例では正常寿命に近い場合も多く、重度でも投薬により症状をコントロールできれば生活の質を保てます。

Q.ラグドールの肥大型心筋症に効果的な予防方法はありますか?

A.遺伝性疾患のため完全な予防は困難ですが、適正体重の維持、良質な食事管理が心臓への負担を減らします。
また、繁殖を考える場合は両親猫の遺伝子検査や心エコー検査の結果を確認することで、次世代への遺伝リスクを下げることができます。

渋谷区・恵比寿・代官山の動物病院
HALU代官山動物病院

 
 

担当獣医師

循環器科・内科・軟部外科

横井 (ヨコイ, Yokoi)

動物さんたちの日々の体調管理に助力させていただけたら幸いです。 分からないことや不安に思うことがあれば気兼ねなくご質問ください。

内科・循環器科・軟部外科

游 (ユウ, Yu)HALU代官山動物病院 院長

English/Chinese Speaking Veterinarian
「たとえ病気になったとしてもその中で一番幸せに暮らせるように」
患者さん、家族、獣医師間の密なコミュニケーションを大切にしています。

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