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猫の動脈血栓塞栓症の余命は?|治療や回復の可能性について解説

愛猫が突然後ろ足を動かせなくなったり、強い痛みで鳴き続けたりした場合、「動脈血栓塞栓症」という緊急性の高い病気の可能性があります。
猫が動脈血栓塞栓症と診断されたら、余命や回復の可能性について心配になる飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、
「猫の動脈血栓塞栓症とは?」
「猫の動脈血栓塞栓症の余命は?」
「治療方法や回復後の生活は?」
といった疑問について、わかりやすく解説します。
最後までお読みいただき、万が一のときに落ち着いて行動するための参考にしていただければ幸いです。

猫の動脈血栓塞栓症とは?余命を左右する怖い病気

猫の動脈血栓塞栓症は、血液の塊である「血栓」が動脈に詰まり、その先の血流が突然途絶えてしまう病気です。
特に、後ろ足へ向かう太い血管に血栓が詰まるケースがよく見られ、非常に強い痛みを伴うことが多いです。

動脈血栓塞栓症を発症すると、以下のような症状が見られます。

  • 後ろ足が突然動かなくなる
  • 強い痛みで激しく鳴く
  • 呼吸が速くなり、苦しそう
  • 横になったまま起き上がれない
  • 足先や肉球が冷たくなる

猫の動脈血栓塞栓症の原因は心臓病が多く、特に肥大型心筋症と深く関係しています。
そのほか甲状腺機能亢進症や重度の脱水などが関係する場合もありますが、原因がはっきりとせず突然発症するケースも少なくありません。

いずれの原因であっても緊急性が非常に高く、できるだけ早い受診と治療が必要です。

猫の動脈血栓塞栓症の余命はどのくらい?

猫の肉球のアップ

一般的には、猫の動脈血栓塞栓症は予後が厳しい病気として知られています。
重症例では、数時間〜数日のうちに命に関わることもあります。
猫の動脈血栓塞栓症で特に多いのは、強い痛みのあとに後ろ足が麻痺し、全身状態も悪化していくという流れです。治療を受けることができても、強い痛みが続いたり、回復が見込めない場合には、安楽死について相談されるケースもあります。

一方で、すべての猫が急速に悪化するわけではありません。
治療によって状態が安定し、その後数ヵ月〜数年にわたって生活できる猫もいます。
後ろ足に麻痺が残る場合でも、生活環境を工夫しながら、日常生活を送ることは可能です。

動脈血栓塞栓症の余命や回復の可能性を左右する要素は、以下のとおりです。

  • 血栓が詰まった範囲
  • 呼吸状態
  • 心臓病の重症度
  • 治療開始までの時間
  • 治療への反応
  • 再発の有無

なお、一時的に状態が落ち着いているように見えても、突然呼吸状態が悪化したり、再び血栓ができたりするケースもあります。
そのため、動脈血栓塞栓症の余命について一概に判断することはできません。

いずれにしても、動脈血栓塞栓症を発症した際は、できるだけ早く受診し、適切な治療につなげることが重要です。

猫の動脈血栓塞栓症の治療方法は?

動脈血栓塞栓症の治療は、まず痛みや呼吸状態の管理を優先しながら、血流の改善を目指します。
加えて、心不全の併発がある場合は、利尿薬や心臓薬などを用いた治療も同時に行われます。
基本的には入院や集中治療が必要なケースが多いです。

痛みの管理

動脈血栓塞栓症は非常に強い痛みを伴うため、鎮痛薬などによる鎮痛管理がもっとも優先されます。
強い痛みが続くと呼吸状態や全身状態にも影響するため、適切に痛みを抑えることが重要です。
痛みや不安が非常に強い場合には、鎮静作用を持つ薬を併用して、猫ができるだけ安静に過ごせるよう管理するケースもあります。

酸素管理

呼吸状態が悪い場合は、酸素室などを用いた酸素管理を行います。
呼吸が苦しい状態は猫にとって大きな負担になるため、なるべく安静に過ごせる環境を整えることも重要です。

抗血栓治療

血栓の拡大を防ぐため、抗血栓薬や抗凝固薬を使用します。
ただし、できてしまった血栓を完全に取り除くことは難しいです。
また、これらの薬は出血リスクも伴うため、猫の全身状態を確認しながら慎重に使用していく必要があります。

血栓溶解療法

血栓溶解療法は、血栓溶解薬を投与して血栓を溶かす治療です。
血栓により詰まった血管の血流再開を目指せる一方で、出血や「再灌流障害(さいかんりゅうしょうがい)」というリスクを伴います。
再灌流障害とは、血流が急激に再開することで全身へ大きな負担がかかることです。
重度の不整脈や腎障害などを引き起こして命に関わることもあるため、血栓溶解療法の適応については慎重に判断されます。

猫の動脈血栓塞栓症では回復後の生活が余命を左右する?

飼い主に頭を撫でてもらい、気持ちよさそうな猫

猫の動脈血栓塞栓症は、発症直後の治療だけでなく、回復後の生活管理も非常に重要です。
特に、動脈血栓塞栓症の原因が心筋症だった場合は再発リスクが残るため、退院後の過ごし方がその後の経過や余命に影響します。

まず大切なのは、処方された薬を継続することです。
抗血栓薬や心臓薬は、血栓の再発予防や心臓への負担軽減を目的として使用されます。
自己判断で中断すると再発リスクが高まる可能性があるため、必ず獣医師の指示に従って継続しましょう。
定期的な心エコー検査も継続し、呼吸数や食欲などに異変があれば早めに受診することが重要です。

また、生活環境への配慮も欠かせません。
動脈血栓塞栓症から回復した後の生活は、猫によってさまざまです。
血流が改善して再び歩けるようになる猫もいれば、後ろ足に麻痺が残るケースもあります。
後ろ足に麻痺が残る猫では、滑りやすい床や高い段差が負担になることがあります。

動脈血栓塞栓症からの回復後は、

  • 滑りにくい床にする
  • 段差を減らす
  • トイレを移動しやすい場所に置く

など、安心して生活できる環境を整えてあげましょう。
無理をさせず、日々の小さな変化を見守りながら過ごしていくことが大切です。

まとめ

猫の動脈血栓塞栓症は、突然後ろ足が動かなくなるなどの症状を引き起こす、緊急性の高い病気です。
重症例では数時間から数日で命に関わることもあります。

一方で、早期に治療を開始することで、数ヵ月から数年単位で、自宅で穏やかに生活できるようになる猫もいます。
治療後に麻痺が残る場合でも、生活環境を工夫しながら過ごせるケースは少なくありません。

ただし、動脈血栓塞栓症は再発リスクが高いため、退院後も継続的な管理が重要です。
後ろ足の異常や呼吸状態の変化などに気づいた際は、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
動脈血栓塞栓症について、不安や疑問などがあればお気軽に当院までご相談ください。

よくある質問

Q.動脈血栓塞栓症の猫にストレスを与えないためには、どのような点に注意すべきですか?

A.静かで温度管理された環境を維持し、急な音や光の変化を避けることが重要です。
また、無理に運動させたり抱き上げたりせず、猫のペースに合わせた接触を心がけましょう。

Q.動脈血栓塞栓症を予防するために日頃からできることはありますか?

A.定期的な健康診断で心疾患の早期発見に努めることが重要です。
特に中高齢猫では年1〜2回の心エコー検査をおすすめします。
肥満は心臓への負担を増すため、適正体重の維持も大切です。

Q.動脈血栓塞栓症の治療費はどの程度かかりますか?

A.初期治療では検査費用、入院費を含めて数十万円程度かかることが一般的です。
退院後も継続的な薬物治療や定期検査が必要で、月数万円の費用が発生します。
治療期間や重症度により費用は大きく変動するため、治療開始前に獣医師と詳細な費用について相談しておきましょう。

渋谷区・恵比寿・代官山の動物病院
HALU代官山動物病院

 
 

担当獣医師

循環器科・内科・軟部外科

横井 (ヨコイ, Yokoi)

動物さんたちの日々の体調管理に助力させていただけたら幸いです。 分からないことや不安に思うことがあれば気兼ねなくご質問ください。

内科・循環器科・軟部外科

游 (ユウ, Yu)HALU代官山動物病院 院長

English/Chinese Speaking Veterinarian
「たとえ病気になったとしてもその中で一番幸せに暮らせるように」
患者さん、家族、獣医師間の密なコミュニケーションを大切にしています。

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