「犬の去勢手術はした方がいいの?」
このような疑問をお持ちの犬の飼い主様は多いのではないでしょうか。
実は去勢手術を受けたオス犬は、受けていないオス犬に比べて14〜18%も寿命が延びるという研究データがあります。
去勢手術は精巣腫瘍や前立腺疾患の予防はもちろん、マーキングなど困った行動の軽減にも効果が期待できます。
ただし特定の犬種では、去勢手術の時期によって関節疾患や一部の悪性腫瘍が発生するリスクが上がることもわかってきました。
この記事では、獣医師の視点から去勢手術のメリット・デメリットと犬種ごとの判断ポイントをお伝えします。
犬の飼い主様はぜひ最後までお読みいただき、去勢手術の参考にしてみてください。
犬の去勢手術で得られるメリットとは
去勢手術とは、精巣を摘出する手術のことです。
計画外の繁殖を防ぐことはもちろん、健康面でも多くのメリットがあります。
まず、去勢手術を受けた犬は寿命が延びることがわかっています。
研究データによると、去勢済みのオス犬は未去勢のオス犬と比較して寿命が14〜18%延長するとされています。
これは人間の寿命に換算すると数年分に相当する大きな違いです。
去勢手術は病気の予防効果も見逃せません。
去勢手術によって精巣腫瘍の発生リスクがなくなる以外にも、
- 前立腺肥大症
- 肛門周囲腺腫
- 会陰ヘルニア
などの予防にもつながります。
その他にも、胃拡張捻転症候群や拡張型心筋症のリスク低下も報告されています。
犬の去勢手術が行動に与える影響

去勢手術は、病気の予防だけでなく、オス犬特有の困った行動を軽減する効果が期待できます。
オス犬は4〜6カ月齢で性成熟を迎え、足を上げて排尿するようになることがほとんどです。
去勢をしない場合、約97%の犬が足を上げるマーキング行動をするとされています。
しかし、性成熟に去勢手術を行うことでマーキング行動を抑えられるケースが多いです。
去勢によって他の犬に対する攻撃行動も減少するとされています。
ただし、すべての攻撃行動が去勢で解消されるわけではありません。
攻撃行動の原因は性ホルモンだけでなく、恐怖や不安など多くの要因が関係しています。
去勢手術は攻撃性をゼロにするものではなく、軽減する可能性があるものと理解しておくことが大切です。
犬の去勢手術の適切な時期と犬種別の注意点

「犬の去勢はいつがいいの?」
このような悩みを持つ飼い主様もいると思います。
実は、犬の去勢の適切なタイミングは犬種や体格によって大きく異なることがわかっています。
ここでは犬の去勢のタイミングと犬種別の注意点を詳しくみていきましょう。
小型犬・中型犬の場合
小型犬や中型犬は一般的に、性成熟前の生後5〜6カ月齢が去勢手術の目安とされています。この時期に実施することで病気の予防やマーキング行動の抑制といったメリットを最大限に受けられます。
ただし、それぞれの犬によって最適な時期は異なるので獣医師と相談して決めましょう。
大型犬の場合
大型犬では、去勢の時期によっていくつかの疾患リスクが変化することが報告されています。
犬種別に去勢の時期による影響を詳しく解説します。
ゴールデン・レトリバー
ゴールデン・レトリバーは、12カ月未満の早期去勢で
- リンパ腫
- 股関節形成不全
- 前十字靱帯断裂
のリスクが高まるとされています。
これらの疾患はいずれも大型犬の生活の質を大きく左右します。
ゴールデン・レトリバーのオスは少なくとも1歳を過ぎてから去勢を検討するのがおすすめです。
ラブラドール・レトリバー
ラブラドール・レトリバーでは、6カ月未満の早期去勢で肘関節形成不全や前十字靱帯断裂のリスクが増加することが報告されています。
一方で、リンパ腫や血管肉腫などの腫瘍性疾患については去勢による影響は認められていません。
ラブラドール。レトリバーでは関節への負担を考慮し、少なくとも生後6カ月以降まで手術を待つことが推奨されます。
ジャーマン・シェパード
ジャーマン・シェパードは12カ月未満の去勢手術で前十字靱帯断裂のリスクが上がることが報告されています。
ただし、骨肉腫や血管肉腫などの腫瘍性疾患や股関節形成不全への影響は認められていません。
総合的に判断すると、ジャーマン・シェパードでは1歳未満での早期去勢は避けたほうが安心です。
ロットワイラー
ロットワイラーは、12カ月未満の早期去勢で骨肉腫の発生率が著しく高まることがわかっています(去勢雄で28%、未去勢で8%)。
さらに、去勢の時期を3.5歳以降まで遅らせるほど骨肉腫の発生率が低下するというデータも示されています。
ロットワイラーでは骨肉腫と寿命の両面から、去勢をできるだけ遅くすることが有効です。
犬の去勢手術後に気をつけたいこと
去勢手術後にもっとも注意すべきなのは体重管理です。
去勢後はホルモンバランスの変化により太りやすくなる傾向があります。
肥満はさまざまな病気の引き金となるため、適切なフード量の管理と定期的な運動を心がけましょう。
また、縫合糸に対するアレルギー反応がミニチュアダックスフンドなどの一部の犬種で報告されています。
最近では血管シーリング法という縫合糸を使わない手技も普及しており、手術時間の短縮や縫合糸に対するアレルギー反応の予防に有効です。
まとめ
犬の去勢手術は、
- 寿命の延長
- 病気の予防
- 問題行動の軽減
など、総合的に見てメリットの大きい手術です。
研究データが示すように、去勢済みのオス犬は未去勢のオス犬よりも長生きする傾向があります。
一方で、犬種や体格によって最適な手術時期は異なり、特に大型犬では関節疾患や一部の腫瘍リスクを踏まえた慎重な検討が必要です。
また、術後の体重管理を怠ると肥満からさまざまな健康問題につながる可能性があるため、食事と運動のケアも欠かせません。
犬の去勢手術についてお悩みをお持ちの方は、ぜひ当院にご相談ください。
よくある質問
Q.去勢手術は性格にどのような影響を与えるのでしょうか?
A.去勢手術によって攻撃性が軽減するケースもありますが、すべての性格が変わるわけではありません。
行動変化には個体差があり、元々の性格や生活環境も大きく関係します。
Q.去勢手術の術後、傷口のケアはどのようにすれば良いですか?
A.術後は傷口を清潔に保ち、舐めたり引っ掻かないようエリザベスカラーの着用が推奨されます。
赤みや腫れなど異常があれば早めに受診しましょう。
術後1週間から10日前後で抜糸や再診を行う場合が多いです。
Q.去勢手術を受けると将来的なホルモン系疾患は減りますか?
A.去勢手術により前立腺肥大や精巣腫瘍のリスクは大幅に低下します。
しかし、すべてのホルモン疾患が予防できるわけではありません。
クッシング症候群など他のホルモン疾患は去勢手術と直接の関連は少ないです。
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