吐き、下痢

【膵炎】症例紹介-急性膵炎-

今回ご紹介するのは、急性膵炎のワンちゃんの症例です。重度の急性膵炎であったにも関わらず、現在はご飯も食べてくれるようになったので、ご紹介します。

激しい嘔吐しており、ぐったりしているとのことで、当院を来院されました。来院時には40度を超える高熱で、血液検査の結果、かなり強い炎症を示唆する数値が見られ、膵臓の検査の結果、膵炎が強く疑われました。また、超音波検査では、軽度の膵炎であれば膵臓周囲の脂肪が炎症を起こして白く見えるのですが、この子に関しては、腹膜というお腹にある膜や、かなり広い範囲での脂肪で炎症の所見が見られました。
下の画像の、矢印で示している上のあたりに映っている白い部分がお腹の中の脂肪と腹膜です。

腹膜炎のエコー画像


急性膵炎で最も怖いのが、広い範囲で炎症が起こることで、全身での炎症反応になり、血液が固まり易くなり血栓が出来てしまったり、肺に水が溜まってしまうような合併症です。これらの合併症はすぐに致命的になってしまうことも少なくありません。

この子の場合、かなり強い炎症所見が見られましたので、入院にて集中的な治療を行っていきました。具体的には、痛み止めや吐き気止め、点滴や血栓を溶かすお薬などを注射したところ、その日の夜には少し顔つきが良くなって、お水を飲めるようになりました。

しかし、この子は血栓の数値も高く、体の中に血栓が出来ており、これは命に関わる病態でした。
その後、集中的な治療を続けた結果、1週間後には自力でご飯を食べてくれるまでになり、この時から少しずつ退院に向けてお薬を内服薬に切り替えて、頑張って飲んでもらっていました。この時点では数値もほとんど正常値に戻り、経過は良いように思われたのですが、数日間内服薬にしたところ、再び嘔吐し、食欲が落ちてしまいました。

膵炎の再燃を考慮し、検査を行ったところ、やはり膵臓の数値や炎症の数値が再び上昇していました。
その後、数日間の集中治療を経て、再び食欲は少しずつ回復してきました。
その時の超音波検査の画像が下の画像です。
黄色で囲ってある部分が膵臓です。周囲の脂肪が白くなっていないことがわかるかと思います。

治療後の膵臓のエコー画像

犬の膵炎の原因としては、およそ90%が原因不明と言われていますが、高脂血症や肥満、脂肪分の多い食事や人の食べ物を与えることが原因にもなります。また、再発も多く、再発を繰り返した結果慢性化することも珍しくありません。

この症例の場合、一時期膵炎が治りかけていましたが、治療強度を弱めた結果、再燃が認められました。そのため、現在は通院にて治療中ですが、再燃に注意しながら少しずつ治療強度を弱めて、今も治療を頑張ってくれています。

犬の急性膵炎は名前の通り、急に発症し、治療しなければ多くは急激に悪化していってしまいます。
それを防ぐためにも、少しでも原因を減らし、低脂肪食にしたり、人のご飯を与えないようにしたり、定期検診を行なって高脂血症になっていないかをチェックしましょう。

よくある質問

Q.犬の急性膵炎は特定の犬種に発症しやすいのでしょうか?

A.はい、急性膵炎は特定の犬種で発症リスクが高いことが知られています。
特にミニチュア・シュナウザー、プードルなどの小型犬での発症が多く報告されています。遺伝的要因も関与していると考えられているため、これらの犬種を飼っている場合は特に注意が必要です。

Q.急性膵炎の犬にはどのような食事管理が必要ですか?

A.急性膵炎の犬には低脂肪食が重要です。
脂肪含有量が10%以下の療法食を選び、消化しやすい高品質なタンパク質を含むフードが推奨されます。
回復期は少量ずつ頻回に与え、胃腸への負担を軽減します。

Q.急性膵炎から回復した後、運動制限は必要でしょうか?

A.急性期には安静が重要ですが、回復後は段階的に運動を再開していきます。
ストレスも膵炎の誘発因子となるため、犬が快適に感じる程度の軽い運動が理想的です。
ただし、個体差があるため運動量や強度については必ず獣医師と相談し、定期的な検査で膵臓の状態を確認しながら調整することが大切です。

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English Speaking Veterinarian
多くの選択肢をわかりやすくオーナー様に提供でき、大切な家族の一員である子たちにとって最適な治療計画を一緒に見つけられる存在であるために、寄り添える獣医師を目指しています。

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