多くの猫が、猫コロナウイルスを持っています。
猫コロナウイルスは容易に感染するものの弱毒性のウイルス(猫腸管コロナウイルス)であり、
無症状~下痢嘔吐など腸炎に似た軽い症状をもつものです。

猫伝染性腹膜炎(FELINE INFECTIOUS PERITONITIS:FIP)は、猫コロナウイルスが突然変異によって「猫伝染性腹膜炎ウイルス」となり、それによって引き起こされる致命的な免疫性ウイルス疾患といわれています。
生存率は極めて低く、発症すると生存期間がわずか数日から数週間といわれ、現在効果的な治療法はなく、死をまつ猫の病気といわれています。
FIPは症状の特徴から「ウェットタイプ」と「ドライタイプ」、その両方の「混合タイプ」に分類されます。
ウェットタイプは60%~70%程度、ドライタイプは30%~40%と、全体としてはウェットタイプが多い傾向にあります。
共通する症状の徴候として、
- 「抗生物質に反応しない」
- 「食欲の減退」
- 「元気の消失」
- 「寝てばかりいる」
- 「4日以上の高熱が続く」
などがあります。
滲出性(ウェットタイプ)FIP
ウェットタイプの徴候は、腹部または胸部内に水分が溜まり、これらが原因で呼吸困難を引き起こすことがあります。
血管内からタンパク質が流出し、主に臓器周辺に浸出液が溜まることから、腹水・胸水・心嚢水が起こりやすくなります。
他の症状としては、食欲不振、発熱、体重減少、黄疸、および下痢嘔吐があります。
診断後、急速に症状が悪化がみられ、迅速な対応が必要なFIPタイプです。
非滲出性(ドライタイプ)FIP
ドライタイプは食欲不振、発熱、黄疸、下痢、体重減少がありますが、水分の蓄積はありません。
ドライタイプの特徴としては、眼症状または神経症状がでることがあります。
症状の段階
FIPに特有の症状はありません。 どのFIPもFIPにかかった猫は一般に食欲不振、体重減少、嗜眠、抗生物質に反応しない変動性の熱などの症状があります。
感染の初期段階では、発熱、食欲不振、嘔吐、下痢、体重減少などの非特異的な症状が見られます。
中期段階では、食欲不振、著しい体重減少、倦怠感、胸部または腹部の腫れ、栄養失調、貧血、黄疸、変動的な発熱が見られます。
後期段階の症状、食欲不振、非常な痩身、嗜眠、胸部・腹部の腫れ、息切れ、栄養失調、貧血、黄疸、変動性発熱、慢性的な体調不良、眼の炎症などが見られます。
FIPは診断の難しく、発症すると治療の難しい病気です。
伝染性といわれていますが、現在確かな原因はみつかっておらず、確実に予防する方法はありません。
ワクチンは一部の国では販売されていますが、有効性が確実ではなく、日本ではまだ未認可です。
また最近ではmutianというお薬に治療効果があると言われていますが、日本では未承認でかつ高価であるためハードルが高いと言われています。
できるだけ、過密な多頭飼いなど猫にストレスがかからない、快適な環境を整えてあげましょう。
よくある質問
Q.FIPは遺伝的な要因も関係しますか?
A.FIPの発症には遺伝的な要因が関与している可能性があります。
特に兄弟姉妹や近親でFIPを発症した猫がいる場合、感染リスクが高まると報告されています。
しかし、遺伝だけでなく、ストレスや免疫力の低下も発症に影響するため、環境管理も重要です。
Q.FIPにかかっても一部の猫は自然に回復することはありますか?
A.非常にまれですが、軽度の変異型コロナウイルス感染では猫の免疫がウイルスを制御し、自然に回復することがあります。
ただし、本格的なFIP発症の場合は進行が速く、自然治癒はほとんど期待できないため、早期診断と獣医師による対応が不可欠です。
Q.FIPにかかりやすい猫の年齢や性別はありますか?
A.FIPは一般に1歳未満の若い猫で発症しやすいとされます。
しかし、老猫でも発症することがあり、年齢や性別だけで予防が可能というわけではありません。
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