お腹のしこり

【胃内腫瘍】高齢犬の食欲不振、よく吐く~胃内腫瘍~

こんにちは!

最近ますます暑くなってきましたが、夏バテしてませんか?

今回は、胃の中に腫瘍ができてしまったわんちゃんのお話です。

ご飯を食べると、口から食道→胃→腸→肛門という流れでそれぞれの場所で消化されながら進んでいきます。その中でも、胃は食べ物を蓄える重要な臓器です。

犬での胃腫瘍は全腫瘍の1%以下という低い確率でしか起こらないと言われていて、犬では悪性腫瘍としての腺癌を含む「胃がん」の発生もそもそも非常に少ないと言われています。

もちろん、胃ポリープもあまり多くは遭遇しませんが、そのほとんどは良性であり、将来的に悪性腫瘍に変化するという報告は現状ではほとんどありません。

では、胃の中に腫瘍やポリープがあると、どういった症状を示すのでしょうか?

腫瘤が小さければほとんど症状を示さないことも珍しくありませんが、腫瘤が大きくなってきたり、発生部位によっては胃の蠕動を阻害する場合もあります。

そういった場合には悪心や嘔吐、食欲不振といった症状が現れます。また、悪性腫瘍でかなり大きくなってしまった場合、腫瘤から出血してしまうこともあります。

胃の中の悪性腫瘍では、GIST(消化管間質腫瘍)やリンパ腫、上記した胃腺がんなど様々なので、実際に組織を検査してみなければ診断はできません。

今回はそんな胃の腫瘍が見つかったわんちゃんの症例をご紹介します。

症例は11歳のわんちゃんです。食欲不振を主訴にご来院され、環境の変化かもしれないとのことでしたが、高齢で痩せていることもあり、血液検査、レントゲン検査、超音波検査を実施させていただきました。

血液検査では貧血、低たんぱく血症が認められ、画像検査では胃内の腫瘤と腸管のリンパ管拡張所見が確認されました。下の超音波画像の〇で囲っている部分が腫瘤です。

食欲不振は胃内の腫瘤が原因と考えられましたが、画像だけでは診断はつきません。そこで、まずは対症療法を行い、腫瘤を摘出するためにも全身状態の改善を試みました。しかし、低たんぱく血症がひどく、その状態での手術は傷の治りなども悪くなってしまい危険を伴うため、まずは低たんぱく血症を是正して、その後手術を実施することとなりました。

低たんぱく血症の原因は、通常①腸からの漏出②尿からの漏出③肝臓疾患や大出血を考えますが、今回の症例では腸管の超音波所見から、腸管から漏れ出してしまっている可能性が高く、その場合はまず低脂肪食を食べてもらい、良くならなければステロイド治療などを実施します。この子にはまずは低脂肪食を食べてもらっていましたが、下痢が続き、低たんぱくが続いてしまっているため、今後内視鏡検査を実施する予定です。

今回のように環境変化の影響など、ほかの要因やストレスかと思っていると実は腫瘍であったり、別の慢性疾患が見つかったりすることがあります。

そういったことを出来るだけ早期に発見できるように、当院では特に6歳を超えたシニアの犬猫では半年に1回の定期健診をお勧めしています。

症状がなくとも疾患を抱えている場合もありますので、定期的な検診や、何か気になることがあれば早めにご相談ください。

渋谷、恵比寿、代官山の動物病院(年中無休、年末年始も診察している動物病院)
HALU代官山動物病院
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担当獣医師

内科・循環器科・軟部外科

游 (ユウ, Yu)HALU代官山動物病院 院長

English/Chinese Speaking Veterinarian
「たとえ病気になったとしてもその中で一番幸せに暮らせるように」
患者さん、家族、獣医師間の密なコミュニケーションを大切にしています。

内科・眼科

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English Speaking Veterinarian
動物たちからたくさんのことを感じ取り、からだへの負担をできる限り少なくすること、ご家族さまとのコミュニケーションの中で治療方針をご一緒に考えていくことを大切にしています。

腫瘍科

佐々木 (ササキ, Sasaki)獣医腫瘍科認定医1種、JAHA内科認定医

腫瘍の治療は画一的なものではなく、同じ疾患であってもその子やご家族の状況によって、最適と考えられる治療方法は異なります。
何かお困りの事があればご相談ください。

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