こんにちは!
今回はアジソン病のわんちゃんの症例をご紹介します。
アジソン病というと皆さん聞きなれない病名かと思いますので、先ずはどういう疾患なのかご説明します。
アジソン病とは?
副腎とは腎臓の横にある臓器で、ホルモンを分泌しています。血糖値を上げる糖質コルチコイドと電解質バランスを保つ鉱質コルチコイドの2種類のホルモンを分泌し、身体の恒常性を保っています。しかし、アジソン病になってしまうと、それらのホルモンの分泌量が低下し、身体に様々な変化が出てきます。犬の場合、2つともホルモンが減ってしまう定型アジソン病(70%)と、糖質コルチコイドのみが減ってしまう非定型アジソン病(30%)の二つのタイプが知られています。
<原因>
アジソン病の原因は副腎自体に問題がある原発性アジソンと他の要因によって引き起こされる二次性のアジソンに分けられます。原発性アジソンでは自己免疫疾患によるものが多く、他の疾患を併発していることもよくあります。
<症状>
目に見える症状としては、食欲がなくなったり、元気がなくなったり、下痢をしたり、黒色便や、多飲多尿、ひどい場合にはぐったりしたり虚脱してしまうこともあります。
<診断>
診断は臨床症状から疑われる場合に、血液検査や超音波検査などを組み合わせて総合的に判断します。確定診断をするためには、血液検査では副腎から出るホルモン量を測定し、また、超音波検査では副腎の大きさを測定します。
<治療>
ホルモンを内服薬で補充して治療します。
今回は、そんなアジソン病になってしまった症例のお話です。
症例は10才のわんちゃんで、食欲不振、元気消失を主訴にご来院されました。来院時かなりぐったりしていたため、まずは血液検査などを実施してわんちゃんの状態を把握することにしました。
来院時血液検査にて低血糖、炎症数値の上昇、尿素窒素の上昇が認められました。低血糖は致命的になってしまうこともあるので、入院にて検査、治療を行うこととなりました。詳しいホルモンの検査の結果、副腎のサイズが小さく、副腎から出るホルモン量が不足していましたが、電解質のバランスは問題がなかったので、非定型アジソン病と診断し、治療を開始しました。
下の写真が実際の副腎の写真で、左右ともに4mm以下で萎縮している所見でした。黄色の矢印で指しているのが副腎です。
治療では、低血糖の治療を行うとともにホルモンの補充を内服薬にて行い、一般状態の改善をはかりました。入院2日目で血糖値も安定して、その他の数値も改善し、ご飯も食べられるようになり、入院3日目で無事に退院となりました。今では、数値も安定し、元気に過ごしてくれています。
今回のわんちゃんのように、突然元気食欲が低下し、アジソン病と診断されることがあります。初期の変化は、ストレスがかかった後になんとなく元気がない、なんとなく食欲がない、など非特異的な症状なので、気付くことが難しく、気付いた時には悪化しているということも少なくありません。
また、悪化した状態では、今回のわんちゃん同様低血糖であったり、あるいは電解質異常がある場合には不整脈が出ることもあり、処置が遅れると致命的になってしまうこともあります。
そのため、早めに治療を始められるように、何かいつもと違う、なんとなく食べない、などの変化があればお早めに動物病院ご相談ください。
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