今回は副腎の腫瘍についてお話します。
副腎とは?
あまり聞きなれない言葉だと思いますが、わんちゃん、猫ちゃん、私たち人間にもあります。
犬と猫の副腎は腎臓のそれぞれ内側に左右1つずつあります。
体格にもよりますが、副腎は3~7㎜ほどのとても小さな臓器です。
副腎は血圧、血糖、水分、塩分量などの体内環境を常にちょうどよい一定の状態に保つためのホルモンをつくっています。これらのホルモンは生命の維持に不可欠な大切なものです。


≪正常な左副腎≫ ≪正常な右副腎≫
副腎腫瘍とは?
副腎腫瘍は高齢のわんちゃんでみられやすいとされています。
発生率は0.17~0.76%と決して高くはないのですが、近年の画像診断精度の向上から発見率は上がり定期検診などの腹部超音波検査で偶発的にみつかることも多いです。
直径20㎜以下の副腎偶発腫は良性病変(過形成、腺腫)の可能性があり、直径20㎜を超える副腎偶発腫は悪性の可能性が高いと考えられ、副腎皮質腫瘍(約40%)、褐色細胞腫(約30%)、転移性腫瘍(約20%)が含まれます。
症状
症状としては副腎が腫瘍化し大きくなることで、ホルモン生成に影響を及ぼし、多飲、多尿、多食、パンティング、腹部膨満、脱毛、筋肉の虚弱、高血圧などの様々な症状が認められます。
また重症例では血栓塞栓症や、腫瘍破裂による腹腔内出血などの命にかかわる緊急症状を示す場合もあります。
治療法
治療法の第一選択は外科的治療とされています。
しかし副腎腫瘍は解剖学的に大血管に隣接していることや、後大静脈に腫瘍栓を形成する場合があることからその手術は技術的に難易度が高い手術となります。
内科的治療は臨床症状の改善、QOLの向上など一般状態を改善させることで外科的治療が必要な場合のリスク軽減などの意義があるとされていますが、内科治療は緩和的、サポート的治療となり、内科治療のみで腫瘍の増大、浸潤、転移を抑制することはできません。
以前は外科手術での周術期死亡率が高い手術とされてきましたが、昨今ではCT検査において腫瘍の大きさが30㎜以下で血管浸潤がない場合には周術期死亡率は7.8%との報告も有り、血管浸潤がなく腫瘍の大きさが小さい副腎腫瘍では比較的低リスクでの実施が可能となりました。

≪腫瘍化した副腎腫瘍 血液を含み嚢胞を形成している≫
お腹の中のとても小さい臓器であり、症状にも個体差があるので、発見しにくい病気ではあります。
定期的な健康診断で早期発見することが、副腎腫瘍の治療に結び付くと思います。
当院では、様々な検査を組み合わせ、その子その子に適した健康診断コースをお勧めしております。ぜひ一度ご相談ください。
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