今回は猫ちゃんが急に吐いて止まらないという症状で来院した際の腸内異物についてのお話です。
腸内異物とは?
まず、腸内異物とは、本来食べているフードではない、消化管で消化できないもののことを言います。
猫ちゃんの場合、誤食してしまったオモチャや紐、普段の毛づくろいにより腸内に溜まってしまった毛玉などが腸内異物になることが多くあります。
腸内異物は、そのまま便として問題なく排泄されれば良いのですが、途中で腸に詰まってしまうと、命に関わる危険な状態になることがあるので注意が必要です。
腸閉塞
腸内異物による腸閉塞は大きく分けて2つのパターンがあります。
1つ目は、腸を通過できない大きさの異物が腸の中を塞いでしまうパターンです。
この場合は、腸内にある消化途中のフードや消化液が通り抜けられずに、閉塞部位の手前で渋滞を起こして溜まってしまい、腸が拡張してしまいます。腸があまりにも引き伸ばされてしまうと、腸壁が壊死してしまったり、最悪の場合は破けてしまうこともあります。
2つ目のパターンは、紐状異物による腸閉塞です。
ひもは細いので腸を通過できると思うかもしれませんが、紐が消化管の途中で引っかかってしまい、うまく出せないと、腸がひもを出そうと頑張って動く結果、ちぢれてしまいます。この状態を放っておくと、やはり腸が壊死したり破れてしまいます。
細菌性腹膜炎
腸閉塞により、腸が破れてしまうと、本来便として出される腸の内容物がお腹の中に漏れてしまいます。
腸の内容物には、細菌が沢山いるので、お腹の中に細菌がばらまかれてしまうことで、お腹の中に炎症が広がり、細菌性腹膜炎と呼ばれる状態になってしまう事があります。
細菌性腹膜炎になってしまうと、炎症が全身に広がってしまい、血圧が保てなくなる、敗血症性ショックと言われる病態に進行してしまうこともあります。これは生命を脅かす重篤な状態なので、こうなる前に早めに治療をしたいところです。
症状
腸閉塞をおこしてしまうと、どんな症状が出るのでしょうか。
最初は、食欲や元気がなくなったり、嘔吐や腹痛が起こることが多いです。下痢や便秘が認められることもあります。重篤な場合には、ぐったりして動けなくなる猫ちゃんもいます。
診断
異物による腸閉塞の診断は、超音波検査やX線検査を用いて行います。
場合によっては、消化管造影検査を実施することもあります。このような画像検査で、異物やその手前の腸の拡張などを検出して診断します。
治療
腸閉塞と診断されたら、外科手術により詰まりを解消する必要があります。
腸が壊死していない場合は、腸を切開して異物を取り出し、切開した部分を縫い合わせます。
腸が壊死してしまっている場合は壊死している部分を切除して、前後の腸をつなげて縫い合わせます。
術後
術後は状態にもよりますが、最低でも7日ほどの入院が必要です。術後に注意しなければいけないのが、離解と言って、縫合部が再度破けてしまうことです。
術後3日ぐらいまでは、腸を切った部分はしっかり糸で縫い合わされているので、離解することは少ないのですが、術後3日から5日後ぐらいまでは、腸が治る過程で腸が脆い組織に変わるんですね。
この時期に、離解が起こってしまうことがあるので、猫ちゃんが急にお腹を痛がったり、熱が出たりしないか、入院してしっかり診てあげることが大切です。
また、細菌性腹膜炎になってしまった場合は、身体が細菌感染に打ち勝って、炎症が落ち着くまで入院が必要になるので、入院期間は長くなることが多いです。
また、細菌性腹膜炎になってしまった猫ちゃんは、残念ながら治療をしても状態が改善せずに亡くなってしまうことも少なくありません。
予防
このように腸内異物は、腸閉塞を起こす危険なものですので、猫ちゃんが異物を口にしないように注意しなければいけませんね。
普段から、オモチャや、糸、リボンなど、猫ちゃんが遊んでるうちに食べてしまう可能性のあるものは、猫ちゃんの手に届かない場所に保管しておくことが大切です。
また、長毛の猫ちゃんなどは、ブラッシングをこまめにするなど、毛玉が腸のなかに溜まらないよう気をつけてあげましょう。
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