お腹のしこり

【肥満細胞腫】猫の肥満細胞腫ー内臓型ー

何度かこのブログでもご紹介している肥満細胞腫ですが、今回は内臓にできてしまったパターンの肥満細胞腫をご紹介します。

肥満細胞腫とは

肥満細胞腫とは体の肥満とは関係なく、肥満細胞というアレルギーや炎症に関与している細胞が増え、腫瘍化してしまうことを言います。

肥満細胞にはヒスタミンやヘパリンといった化学物質が顆粒に含まれており、それらの化学物質が放出されることで、浮腫や内出血、血圧の低下、胃十二指腸潰瘍などを引き起こすことがあります。

猫の肥満細胞腫は猫の腫瘍のうち2-15を占める腫瘍であり、「皮膚型」「内臓型」とに分けられ、その発生率はほぼ同じと言われています。

内臓型の肥満細胞腫

内臓型の肥満細胞腫は主に脾臓、腸管に発生します。

脾臓に発生する肥満細胞腫は病気が発見された時点で転移していることや、血液中にも腫瘍細胞が出てしまっていることが多く、主に肝臓やリンパ節に転移します。

皮膚に転移することもあるので、皮膚に肥満細胞腫を見つけたら、それが転移したものでないかを確認するために全身の精査をする必要があります。

脾臓にできた肥満細胞腫は治療をすれば比較的いい経過を取ることが多いですが、腸管にできた肥満細胞腫は悪性度が高く、予後が悪いとされています。

診断方法

肥満細胞腫の診断には細胞診が有用です。

腫瘍に対して細い針を刺し、それを顕微鏡で観察します。

他にも全身状態の把握や転移がないかを確認するために、血液検査や胸やお腹のレントゲン検査、エコー検査を行います。

治療

局所治療としては外科手術が最も重要です。

皮膚型であれば皮膚腫瘤の切除を、脾臓型であれば脾臓の全摘出を行います。

消化器型は腫瘍が広範囲に及んでいることが多く、外科手術が不適応となるケースが多いですが、一部に限局した病変であれば外科的に手術を行うことが有効です。

腫瘍が大きすぎて切除しきれなかったり、転移や再発、多発している場合は化学療法を用います。

化学療法には、抗がん剤や分子標的薬、ステロイドを使用します。

実際の症例

今回ご紹介するのは、最近食欲や元気がなくなり、突然呼吸が苦しくなってしまったという猫ちゃんです。

全身の検査をしたところ、胸に水が溜まっており、肺にはいくつか影がありました。

そして脾臓に複数のしこりを認めました。

診断のために脾臓に針を刺し、また胸水を抜いて検査をしたところ、どちらからも肥満細胞が検出されたため、脾臓の肥満細胞腫の転移と診断されました。


↑赤い〇で囲っている細胞が肥満細胞です

本来であれば手術による脾臓摘出が推奨されるのですが、飼い主様のご希望のもと、この猫ちゃんは分子標的薬とステロイドによる化学療法のみを行うこととなりました。

猫ちゃんは病気を隠す生き物です。

特に内臓にできるタイプの腫瘍は気付かれづらく、ようやく症状が出て発見されたときにはすでに重症化していることが多いです。

病気を早期に発見するためにも、定期的に病院で健康診断をすることをお勧めいたします。

渋谷、恵比寿、代官山の動物病院(年中無休、年末年始も診察している動物病院)
HALU代官山動物病院
03-6712-7299
info@halu.vet

担当獣医師

腫瘍科

佐々木 (ササキ, Sasaki)獣医腫瘍科認定医1種、JAHA内科認定医

腫瘍の治療は画一的なものではなく、同じ疾患であってもその子やご家族の状況によって、最適と考えられる治療方法は異なります。
何かお困りの事があればご相談ください。

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