【ケンネルコフ】ワンちゃんのその咳、気になっていませんか…?

普段咳をしないワンちゃんが急に咳をし始めたことはありませんか?

 

特に年齢が若いワンちゃんに多く発症する伝染性気管気管支炎、いわゆる”ケンネルコフ”と呼ばれる病気があります。

ケンネルコフは非常に伝染力が強く、肺炎徴候を伴わない発作的に生じる発咳が特徴の呼吸器疾患です。

原因として、単独あるいは複数のウイルス、細菌の複合的な感染であると考えられています。

感染経路は主に罹患している動物の鼻汁やくしゃみからの飛沫伝染で、極度に汚染された環境で拡散されていきます。

 

症状としてみられるのは、乾いた持続性の咳で、それに伴って微熱や漿液性(水の様な)鼻汁がみられることがあります。咳をする以外に主だった体調の変化はありませんが、症状が長期にわたって続くと二次的に細菌感染症を生じる場合があります。

また二次感染が生じると、空咳が水気を含んだ咳に変化し、水っぽかった鼻水は変色し、粘り気を持つようになり、目脂や重篤な気管支肺炎に進行してしまいます。そうすると、食欲の減少や元気が無くなるなど体調の変化がみられるようになります。

ケンネルコフはワンちゃんの”年齢”や”ワクチン接種歴”、”罹患犬との接触の有無”など様々な要因と臨床症状とを総合的に判断し、診断していきます。

 

治療として症状が軽度であれば、お家で加湿器などを用いて湿度を保ち、安静に過ごせば7~10日で改善されるといわれています。しかし、症状が重度であると抗生剤や気管支拡張剤、咳を抑える鎮咳薬を投与することもあります。

予防には、罹患した疑いのある動物との接触を避けることが重要になります。

 

今回、ケンネルコフに罹患、治療した症例をご紹介します。

 

【症例紹介】

ケンネルコフを発症した若齢犬への治療アプローチ

患者さんは朝から急に咳が始まり、止まらないとのことで来院されました。

咳以外に体調面で主だった変化は見られず、血液検査では大きな異常値は見受けられませんでした。

来院時に撮影したレントゲン画像です。

レントゲン検査では、本来なら肺にたまっている空気が真っ黒く映りますが、気管支粘膜が炎症や浮腫、気管支内に貯留物がある時には「気管支パターン」と呼ばれる見え方をします。今回は気管支パターンが軽度に確認されました。

また気管を外側から触った時に咳が生じるか確認するカフテスト(cough test)が陽性でもあったことから、軽度のケンネルコフと判断し、抗生剤と自宅安静で治療を開始しました。

 

数日後、以前より激しく咳き込み、更に鼻水も出てきたと再び来院されました。

血液検査にて、感染があれば上昇する”白血球”数値が以前と比べて上昇し、レントゲン検査でも初めて来た時と比較して肺の白さが増していて、ケンネルコフが悪化していました。

オーナー様と相談の上、入院し抗生剤の他に新しい抗菌薬、気管支拡張剤を併用しながらしっかりと治療する方針へと変更しました。

入院数日後のレントゲン画像です。

その後咳き込む回数も減少し、レントゲン検査でも肺の様子は改善したので退院しました。

現在は咳の症状も無く、レントゲン検査でも肺の状態は落ち着いているので治療終了となりました。

 

ケンネルコフは若齢の、特に免疫がまだ万全ではないワンちゃんにかかりやすい病気です。

ですので、診断がついた時点でその子に合った適切な治療法を考えていかなければなりません。

咳はほっとくと肺炎等につながってしまう病気でもありますので、ワンちゃんの咳が気になるようでしたら、一度ご相談ください。

 

画像参照サイト:https://bit.ly/2od2Bwp

 

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内科・眼科

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動物たちからたくさんのことを感じ取り、からだへの負担をできる限り少なくすること、ご家族さまとのコミュニケーションの中で治療方針をご一緒に考えていくことを大切にしています。

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多くの選択肢をわかりやすくオーナー様に提供でき、大切な家族の一員である子たちにとって最適な治療計画を一緒に見つけられる存在であるために、寄り添える獣医師を目指しています。

内科・歯科

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大学卒業後、各地の動物病院で小動物臨床に携わってまいりました。
ホームドクターとして、こどもの時代から老齢期までその子その子にあった予防や治療を丁寧に行うことを信条にしております。

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「たとえ病気になったとしてもその中で一番幸せに暮らせるように」
患者さん、家族、獣医師間の密なコミュニケーションを大切にしています。

内科・脳神経科

浅田獣医学博士

てんかんを中心とした神経疾患とその治療について研究をしました。現在も研究生として大学院および大学病院において研修を行っております。

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