今回ご紹介するのは猫ちゃんの歯肉炎・口内炎についてです。
歯肉口内炎は歯肉や口腔内、特に頬粘膜部に強い炎症が起こり、潰瘍やびらんを伴う状態をいいます。
↑◯の部分が口角頬粘膜部です。この領域と歯茎に炎症が起こりやすいです。
歯肉口内炎が起こる原因としては、
- カリシウイルスなどのウイルス感染
- パスツレラなどの細菌感染
- 口腔内細菌の乱れ
- 口腔内細菌に対する過剰な免疫反応
などが複合的に関与していると考えられています。
症状
症状としては、歯肉や口腔粘膜の赤み、痛み、よだれを垂らす、口から出血する、食欲低下、体重減少などがあります。
歯肉口内炎を起こした猫ちゃんのなかには、痛みにより口を前足で強く叩く様子が見られることもあります。
またよだれにより前足の毛が汚れたり、口臭が強くなることでオーナーさんが気づくこともあります。
歯肉口内炎の治療は、口腔内のウイルスや細菌などの微生物を減らし、症状を緩和させることが主な目的となります。
具体的には歯石除去、歯周ポケットの清掃(スケーリング)や抜歯(一部またはすべての歯)が治療の第一選択となります。
その補助としては、ステロイド剤や抗生物質の使用、免疫抑制療法、抗ウイルス作用のあるインターフェロン製剤の使用があります。
ですがこれらはあくまでも外科的治療の補助ですので、一時しのぎの治療法です。
スケーリングや抜歯をした後も歯肉口内炎が残ることはありますが、炎症が抑えられたり、痛みがなくなることで猫ちゃんの生活の質が改善されることが多いです。
歯肉口内炎を引き起こす他の病気としては、外傷、慢性腎臓病、好酸球性肉芽腫、歯が刺さることによる歯肉の盛り上がり、腫瘍、免疫疾患などが挙げられ、
治療に進むにはそれらとの鑑別が必要になります。
実際の患者さんのご紹介
今回の患者さんは3歳の日本猫で、半年ほど前から口内炎を指摘され、サプリメントにて対処してきたが、最近よく口を気にする動作をするとのことで、抜歯することも検討して来院されました。
実際に口の中を見てみると、全体的に歯肉炎があり、特に奥歯の領域で、強い炎症を伴う歯肉口内炎が確認されました。
血液検査では、体に炎症があると上昇するグロブリンという項目が高値でした。
その他の検査では異常が見られなかったため、飼い主様にご説明し、スケーリングと抜歯を行うことになりました。
まだ若いということと、前歯の方の炎症はあまり強くなかったため、今回は犬歯よりも後ろの上下の歯をすべて抜歯することとしました。
すでに抜けている歯もありましたが、合計で10本の歯を抜歯しました。
処置後の写真です。
歯を抜いた部分は一時的に穴が開いてしまい、ご飯が入ってしまったり、感染を引き起こすことがあるため、体に吸収されるとても細い糸で縫合しました。
たくさんの歯を抜いたため、処置後はお顔が腫れてしまいましたが、数日のうちに腫れは引き、ご飯も翌日からしっかり食べてくれました。
猫の歯肉口内炎は非常に治りにくい病気で、また完治も難しいです。
ですが外科的に処置をすることで痛みや出血を取り除き、生活の質を改善することができるので、猫ちゃんのお口の赤みやにおいが気になる方はぜひ病院までご相談ください。
また歯肉口内炎以外にも、お口の中の病気にはたくさん怖いものもあります。
日ごろから猫ちゃんとスキンシップを取り、お口の中の様子も観察することをお勧めいたします。
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