ワンちゃんの先天性の心臓病の中で動脈管開存症(PDA)が最も多い心臓病です。PDAとは、生まれてすぐに閉鎖するはずの肺動脈と大動脈の間をつなぐ動脈管が残ってしまう病気です。
そのため、全身へ流れる血液(大動脈の血流)が肺動脈へ流れ込んでしまい、心臓や肺への負担が大きくなってしまい、そのまま放置しておくと心不全に陥り肺水腫で死に至ることもあります。
この病気の治療は開胸による動脈管結紮術(胸を開いて直接動脈管を結紮する方法)やカテーテル治療(コイル塞栓術やAmplatz Canine Duct Occlude(ACDO)による閉塞術)が推奨されています。
前者は開胸手術となるため侵襲が大きいですが、後者は大腿動脈と肺動脈からカテーテルを挿入するだけなので侵襲が小さくて済むというメリットがありますが、体格の小さいワンちゃんでは挿入する血管が小さいためカテーテルの挿入が困難なので実施できません。この病気は外科治療することで健康なワンちゃんとほぼ同等の寿命を全うすることができます。
今回は私たちが経験した2症例をご紹介します。
【開胸手術症例:T・プードル ♀ 5ヶ月齢】
ワクチン接種時に心臓に雑音があるとホームドクターに指摘され来院。来院時には呼吸がはやく肩で息をするようではありました。


上2枚(手術前のレントゲン写真):心臓や肺に負担がかかり、通常より心臓が大きく(矢印)、肺が白く(矢頭)、心不全(肺水腫)が認められました。
検査の結果動脈管開存症(PDA)と診断し、利尿剤、強心剤(ピモベンダン)の投与を開始し、開胸術による動脈管の結紮を行った。


上2枚(術後1ヶ月のレントゲン写真):手術前と比べて、心臓や肺の負担がなくなったため、心臓は小さくなっています。
【Coil塞栓術症例:ポメラニアン ♂ 7ヶ月齢】


術前 術後(コイルが動脈管をふさいでいます)
カテーテル術は低侵襲で術後の回復はとって早いです。ただし体格によってはコイルが難しい場合があります。詳細は獣医師までお尋ねください。
よくある質問
Q.動脈管開存症(PDA)は犬種によって発症しやすい傾向はありますか?
A.はい、PDAは一部の犬種で発症しやすいとされています。
特にトイプードル、ポメラニアンなどの小型犬でよくみられます。
発症傾向がある犬種を飼育されている場合は、早めの健康診断がおすすめです。
Q.動脈管開存症は成犬になってからも見つかることがありますか?
A.動脈管開存症はほとんどの場合、子犬の時期に発見されますが、軽度の場合は症状が目立たず、成犬になってから偶然発見されることもあります。
成犬でも元気や食欲の低下、呼吸が荒くなるなどの変化があれば、心臓検査を受けることが大切です。
Q.PDAの手術後、日常生活で気をつけることや特別なケアは必要ですか?
A.手術後は、短期間の安静やお薬の内服など、獣医師の指示に従ったケアが必要ですが、多くのワンちゃんは手術成功後、通常通りの日常生活に戻ることができます。
定期的な健康診断や心臓の経過観察を続けることで、健康な生活を維持できます。
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