人間ドックでよく耳にする胃カメラ。
これは内視鏡を使って胃や腸に悪いものがないかどうかチェックしていますが、動物たちも同じように内視鏡を使って、お腹に悪いものがないか確認することがあります。
以前から動物たちの嘔吐や下痢、誤食などに対して、レントゲン検査では判断が難しい場合に消化管バリウム造影検査を行ってきました。しかし、バリウム検査では満足するような結果が得られないこともあります。
近年では、そのような判断が難しい症例に対して、内視鏡検査が行われるようになってきました。
<内視鏡検査とは?>
麻酔をかけて、普段は見ることのできない体内の様子を、機器の先端に設置された小型カメラを通してリアルタイムに観察できる検査のことです。
病変やそれが疑われる組織を一部採取することが可能なので、確定診断につながる場合もあります。
また、誤食をしてしまった動物では吐かせることができなかった場合に、内視鏡治療が選択肢の1つとして挙げられます。
今回、検査や治療の目的として、内視鏡を使用した症例を複数ご紹介します。
【症例紹介】
Ⅰ. 1円玉を誤食した患者への治療的アプローチ
患者さんは1歳未満のワンちゃんで1円玉を誤食したことで来院されました。
超音波検査、レントゲン検査を行ったところ。直径1.2cmの1円玉が胃の中に存在していることを確認することができました。


レントゲンとエコー画像です。
胃から十二指腸へ続く出口(幽門洞)付近に1円玉を確認することができます。
その後すぐに催吐処置を施しましたが1円玉は吐き出されず、飼い主様とご相談の上そのまま内視鏡を行うこととなりました。
内視鏡下では、胃内は点状にやや発赤が観察され、1円玉も確認されました。内視鏡の先端から小さな鉗子を使用して1円玉を掴み、無事回収することができ、内視鏡手術は終了となりました。
患者さんは手術後絶食でしたが、翌日からは普段通りに生活を送っていただいています。
Ⅱ. 炎症性腸疾患(IBD: Inflammatory bowel disease)患者の消化管内観察と組織採取
患者さんは下痢と嘔吐が続くということで来院され、治療を行うと一時的に改善するも、また下痢と嘔吐を繰り返していました。

超音波検査を行った際の画像です。
腸管内を左右に移動する内容物が観察され、腸管がの動きが悪いことが確認されました。
下痢、嘔吐が長期間続いてしまうこともあり、飼い主様とご相談の上、消化管の観察及び組織の一部採取を目的とした内視鏡を行うこととなりました。


左が胃の中、右が消化管の中を映した内視鏡下での画像になります。この画像から、胃壁が部分的に点状に発赤している箇所がみられ、消化管の壁にも部分的な炎症所見が見られました。
ここから採取された組織は外部の検査機関へ送られます。
結果は炎症、壊死を伴う大腸炎でした。
その後、患者さんは下痢と嘔吐が安定していたことから、経過観察となりました。
上記の症例のように、内視鏡を行う際は、麻酔のリスクは避けられませんが治療や治療方針を決める手助けをしてくれ、更に手術でお腹を開くことと比較しても身体への負担は軽減してくれます。
まずは事前にしっかりと検査を行い、患者さんの症状から内視鏡が適応か否かを検討することが大切になります。
渋谷、恵比寿、代官山の動物病院(年中無休、年末年始も診察している動物病院)
HALU代官山動物病院
03-6712-7299
info@halu.vet