今回は誤食の症例の紹介です。
皆様のお家のわんちゃん、猫ちゃんも誤食癖がある、誤食したことがある、という方も多いのではないでしょうか?
誤食をしても便の中から出てきたり、すぐに病院で催吐処置をすれば問題のないものから、中毒で致命的になってしまうものまで重症度は様々です。そのなかでも今回はチョコレートを食べてしまった症例をご紹介しようと思います。
症例紹介
症例は6か月のトイプードルで、嘔吐と下痢を主訴に来院されました。
身体検査では、脈が速くなっており、震えがみられました。
ご持参いただいた嘔吐物を見てみると、チョコレート色をしており、かなりチョコレートのにおいがしたため、チョコレートの誤食、チョコレート中毒を疑い催吐処置を実施しました。
催吐処置では、うまく嘔吐をしてくれて大量のチョコレートが吐き出されましたが、症状が出ていることからすでにチョコレートの成分が吸収されていると考えられました。
下の写真が催吐処置で出てきたものの写真です。

フードも混ざっていますが、大部分が茶色で、チョコレートが多量に出ていることがわかるかと思います。
血液検査では中性脂肪の上昇が見られたものの、他の数値は異常が認められませんでしたが、この後にチョコレート中毒が悪化することも考えられたため、入院にて点滴治療を実施することとしました。
ここでチョコレート中毒について少しご説明しようと思います。ワンちゃんや猫ちゃんがチョコレートを食べるとどうなってしまうのでしょうか?
~症状~
症状は摂取してから数時間~半日ほどで現れることが多く、初期症状としては嘔吐や下痢などが挙げられます。症状が進行すると、頻脈(脈が速くなること)やけいれんなどが現れ、最悪の場合命に関わることになります。

~原因物質~
チョコレートに含まれるテオブロミンという物質が中毒を引き起こします。テオブロミンは人では中毒を引き起こすことなく分解されますが、ワンちゃんや猫ちゃんではその分解能力が低く、中毒を引き起こしてしまいます。
そのため、食べてしまったチョコレートの種類やカカオ含有量も注意が必要です。カカオ含有量が多いチョコレートでは食べてしまった量が少なくても重症になりやすいため、もし食べてしまった場合には、どのチョコレートをどのぐらい食べたのかわかる範囲で獣医師に伝えるようにしましょう!
~治療~
チョコレートを食べてしまった場合には症状がなくても、すぐに動物病院に連絡するようにしましょう。
食べてすぐの場合には、催吐処置でほとんどのチョコレートを出すことができます。
しかし、食べて時間がたってしまっている場合、嘔吐などの症状が出ている場合には、すでにテオブロミンが吸収されているため、催吐処置だけではなく、積極的な点滴治療が必要になります。残念ながらチョコレート中毒の特効薬というのはないため、点滴を行ってテオブロミンの代謝排泄を促進させる方法しかありません。
また、チョコレートには脂肪分が含まれていることも多く、胃腸炎や場合によっては膵炎を引き起こすこともあります。
今回の症例は、震えや頻脈が認められましたが、点滴治療を開始すると徐々に症状は落ち着き、幸いそれらの症状もなくなって、次の日にも胃腸炎や膵炎の兆候は認められなかったため無事に退院することとなりました。
今回の症例のようにご家族様が気づかないうちに、お家のワンちゃんや猫ちゃんが誤食をしてしまっているケースは少なくありません。
出来るだけ、人の食べ物や食べてしまいそうなものは手の届かない場所に置くように心がけましょう!
そして万が一食べてしまった場合や、食べてしまったかもしれない、という場合には中毒でなくても、異物が胃や腸で詰まってしまっていたりすると、緊急手術が必要になることもるため、早めに動物病院にご連絡下さい。
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