お家で飼われているネコちゃんが妊娠した時の症状と出産、出産方法の1つである「帝王切開」の症例についてご紹介します。
ネコちゃんは、生後5カ月~1歳前後までに最初の発情を迎え、発情を迎えると妊娠することが可能になります。また、発情期に交尾をしなければ排卵が起こらないのがネコちゃんの特徴です。そのため、発情期に交尾すれば、ネコちゃんの妊娠の確率は90%以上であるといわれています。
<ネコちゃんの妊娠時のサインや診断方法は?>
ネコちゃんが妊娠していると気づく行動・サインはいくつかあります。
・乳首がピンクに色づき、少しずつ膨れてくる(妊娠20日前後)
・お腹周りや乳房が大きく膨らんでくる(妊娠30日前後)
・食欲が増し、体重が増える(妊娠40日前後)
・行動量が減少してくる(妊娠40日前後)
・胎動を感じ始める(妊娠50日前後)
ネコちゃんの妊娠を診断する方法もいくつかあります。
・お腹を触っておおよその胎子数をカウント(妊娠16-30日)
・超音波をお腹にあてて、胎児の心拍や胎嚢を確認(妊娠15-22日)
・レントゲンで胎子頭部の骨化から胎子数を確認(妊娠40日)
ネコちゃんの妊娠期間は平均63日といわれており、それぞれの時期に上記の行動が見られることがあります。妊娠期間が60日前後となりいよいよ分娩が近づくと、ウロウロしたりと落ち着きなく、また、手近なものを集めての巣作り行動も見受けられるようになります。
ネコちゃんは比較的安産といわれていますが、時には出産時期が来てもなかなか陣痛が始まらなかったり、陣痛が始まっても生まれなかったりする場合があります。そのような時には適切な処置が必要となってきます。その治療方法の1つとして”帝王切開”が挙げられます。
【症例紹介】
患者さんは検診時に腹部膨満、乳腺が発達していることから超音波検査を行い、4頭の胎児を確認することで妊娠していることが発覚しました。
妊娠している時のレントゲン画像です。
頭の幅(頭幅)が1-2cmで、身体の骨格(背骨)が明瞭に観察できる4頭の子猫が確認できます。
この患者さんは10日後にも、変わらず腹部膨満、乳腺発達、元気食欲があり、この時点で妊娠40日前後だと予想しました。その4日後には超音波検査で胎児に動きがみられ、心拍数も確認することができ、また、この時食欲も減少していたのであと数日で出産の可能性を考えました。
しかし、10日経っても生まれず、レントゲン検査、超音波検査で体長10cm程の頭の子猫が生存していることを確認しました。
その5日後に飼い主様とご相談の上、帝王切開を行うこととなりました。
手術にて5頭の子猫を摘出し、残念ながら1頭は亡くなってしまいましたが、他4頭は元気に生まれてきてくれました。
母ネコは子猫を摘出した後、子宮・卵巣を同手術で摘出し手術は終了となりました。
この症例のように、破水、陣痛もなく帝王切開に至ることもありますが、帝王切開が適応となるような症状は様々です。
手術を行う場合に限らず、まずはしっかりと検査をし、適切な治療法を探していくことが大切になります。