はじめに
FIPは腸コロナウイルスの変異によって発症します。
腸コロナウイルスは、純血種のほとんどの猫が保有しているウイルスですが、ストレスなどの要因によってFIPウイルスへ変異が起こるおそれがあります。
FIPはwetタイプとdryタイプ、またその混合タイプの3種類に分けられます。
wetタイプは腹腔内に水がたまり、各臓器の損傷・壊死などが起こるのが特徴で、dryタイプは腹腔内に肉芽腫を形成したり、眼にブドウ膜炎を引き起こすのが特徴です。
いずれも致死率が非常に高く、治療法・予防法のない病気と言われています。
FIPの症状についての詳しい説明は、以下のURLをご参照お願い致します。
https://www.halu.vet/1485
今回は、FIP猫伝染性腹膜炎に対する治療成果についてご紹介いたします。
初診時
猫・2歳・純血種
他院でFIP疑いと言われ、当院へご来院。
肉眼所見として黄疸・貧血があり、肋骨がはっきりと触れるほど痩せていました。(BCS1-2/5)
エコー検査では腹水がみられました。
血液検査ではHCT 21.6%(基準値:30.3 ~ 52.3)で、貧血も起きていました。
FIP wetタイプ疑いとして、外注検査での診断を待たずに投薬を開始しました。

翌日

おうちでの呼びかけに反応せず、四肢冷感で緊急来院。
黄疸も進んでいました。
エコー上で腹水の貯留量が増えており、腹腔内臓器を圧迫しているため腹水抜去。
状態が安定するまで入院管理をご提案しました。
入院開始から退院まで
入院時、脱水があり低体温、自力摂食もできず、かなり衰弱した状態でした。
貧血も初診時より進行しており(HCT:18.8%)、ビリルビン上昇、強い黄疸所見が出ていました。
またウイルス感染によるものなのか、神経症状(首を大きくのけぞる、突然部屋で暴れるなど)があり、外傷予防のため保護マットを敷き詰めたICUでの管理としました。
点滴での治療を積極的に行い、造血剤、鉄剤を投薬し、貧血からの回復を試みました。
経鼻カテーテルによる流動食の給与を開始しました。
また、FIP発症および食欲減退に伴う免疫力の大幅な低下で、おそらく患者さん自身が持っていたネコカゼの再発(目ヤニ・鼻水・くしゃみなど)があり、こちらの治療も同時に進めました。
入院開始から8日で自力採食が可能となりました。
また活動性が上がり、スタッフに擦り寄ったり、名前を呼ぶと反応してくれるようになりました。
入院時に見られた神経症状は見られなくなり、11日目に退院。
腹水も初診時と比較してかなり減っています。

現在 投薬開始から1か月と少し
体調良好、ごはんもきちんと食べられており、体重も増加。BCS3/5
血液検査上での異常値はなく、エコー上でややリンパ節の腫れはありますが、腹水貯留はほぼありません。

最後に
FIPは進行が速く、無治療での致死率はほぼ100%の病気ですので、早期発見と治療の開始が重要です。
投薬を開始しても、患者さんの予後はFIPの発症タイプ(wet・dry・混合型)、またその重症度によって大きく異なります。
少しでも気になられた方は、ぜひご相談ください。
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