関東の梅雨入りはまだのようですが、最近どんどん暑くなってきましたね。
この季節からどんどん増えてくるのが熱中症です。特に短頭種と呼ばれるワンちゃんたちは注意してあげましょう!
そしてもう一つ、この暑い季節から悪化してくるのが「皮膚病」です。
今回はそんな皮膚病の中でもアレルギー性皮膚炎の治療として、副作用の少ない「舌下免疫療法」という治療法をご紹介します。
アレルギーとは
アレルギーとは、ノミダニなどのハウスダスト、花粉や食べ物などのアレルゲンと呼ばれる様々な物質に対して体が過剰に免疫反応を起こすことです。その結果、皮膚の痒みや蕁麻疹などの皮膚症状や下痢などの消化器症状、咳やくしゃみといった呼吸器症状などを引き起こします。
つまり、体の過剰な免疫反応の結果起こってしまう症状なのです。
では動物病院で診察することが多いアレルギーはなんでしょうか。
ワンちゃんや猫ちゃんでよく問題になるアレルギーが「アトピー性皮膚炎」と「食物アレルギー」です。
これらのアレルギーは痒みなどの皮膚症状や下痢などの消化器症状を示します。
実際の症状は下の写真のような症状です。左がワンちゃん、中央と右が猫ちゃんの写真で、犬と猫で皮膚症状の出方が異なります。
これらのアレルギー疾患への治療法の考え方は大きく分けて
・免疫抑制
・免疫寛容
の2つに分けられます。
これらの治療法の考え方を具体的にお話していきます。
免疫抑制とは・・・
先述したように、アレルギーは体の過剰な免疫反応の結果起こってしまった症状なので、その免疫反応を抑える治療法を免疫抑制と言います。具体的には「ステロイド剤」や「免疫抑制剤」といった飲み薬を使用して体の免疫反応を抑えて、アレルギー症状を抑える治療法です。
この治療法のメリットは何と言っても即効性です。特にステロイド剤はすぐに効果が得られるため、症状がひどい場合にはステロイド剤で症状を抑えてあげます。
一方でデメリットとしては、このステロイド剤や免疫抑制剤は長期的な使用で副作用が起こりやすく、モニタリングしながら使用していく必要があります。また、途中で副作用が見られた場合には薬を中止しなければならなくなることもあります。
では次に免疫寛容です。
免疫寛容とは・・・
毎日少しずつ体にアレルゲンを投与して、体にアレルゲンを慣れさせて、免疫応答が起こりにくくしていく治療法です。実際の治療法としては、舌下免疫療法(歯茎にお薬を落とす)や減感作療法(皮下注射)が挙げられます。減感作療法は皮下注射になるため、よりご自宅で簡単にできる舌下免疫療法が近年注目されています。
この治療法のメリットは副作用の少ないことです。実際ほとんど副作用は報告されていません。
しかし、この治療法の弱点としては、即効性がないことです。毎日少しずつ慣れさせていくので、効果が出るまで数か月様子を見ていきます。奏効率は60~80%と言われています。
免疫抑制と免疫寛容のどちらもそれぞれメリット・デメリットはありますが、副作用などで免疫抑制の治療の継続が難しくなってしまった場合などに舌下免疫療法に進んだり、長期的なお薬の使用を見越して舌下免疫療法を始めるというのも良いと思います。
では、実際に舌下免疫療法を実施した症例のご紹介です。
症例は中高齢の猫ちゃんで、他院にて好酸球性肉芽腫(アレルギー疾患)と診断され免疫抑制剤を数年間飲んでいて今は症状はないが、今後副作用が心配なので免疫抑制剤をやめたいとのご相談でした。
皮膚症状はなくコントロールができている状態だったので、当院では免疫抑制剤をやめて舌下免疫療法をご提案しました。
~舌下免疫療法の方法~
①血液でアレルギー検査を実施する
②検査会社から舌下免疫療法に使用する、検査結果に基づいたアレルゲンが入ったお薬が届く
③ご自宅で歯茎にお薬を1日1回滴下してもらう(猫の場合は皮膚炎になることがあるのでスプレーから出して滴下ボトルで実施)
④定期的に症状の改善があるか検診
通常2~3か月で何らかの改善傾向がみられることが多いです。
アレルギー検査を実施すると下の写真のような結果が返ってきて、環境中のアレルゲンや食べ物など全部で92項目を調べられます。
そしてこの結果に基づいて、下のようなお薬が届きますので、猫ちゃんの歯茎(黄色矢印)に毎日滴下します。
現在その猫ちゃんは免疫抑制剤を完全にやめていますが症状の再発はなく、次の検診時に舌下免疫の効果を再評価予定です。
アレルギーの治療というと、生涯お薬を飲み続けなければならないというイメージがあるかもしれませんが、今回ご紹介した舌下免疫療法を実施することでお薬から離脱できるかもしれません。
ステロイドや免疫抑制剤を長期的に服用していて心配な飼い主様、副作用が出てしまったわんちゃんや猫ちゃんのご家族様は一度当院にご相談ください。
また、当院では皮膚科専門外来も実施しておりますので、コントロールができていてもお薬の副作用が心配な方やなかなか皮膚病のコントロールができていない方は一度ご連絡ください。
皮膚という場所は、目に見えるからこそ一番ご家族様も気になる場所だと思います。一度しっかりと治療して、継続できる治療法を一緒にご相談しましょう!