吐き、下痢

【膵炎】犬・猫の膵炎の治療、当院の治療方法

膵炎は食欲不振、嘔吐、下痢などの消化器症状を典型とする疾患です。一般的に多い疾患ではありますが、しっかりと治療をしないと強い炎症によって重篤な併発疾患が問題となることがあるため注意が必要な病気です。

○膵炎になったら…どういう治療をするの?

膵炎は症状、血液検査、画像検査から総合的に判断されます。

これらの画像では、膵臓が炎症により腫大していることがわかります。また、炎症により周囲の組織が白っぽく見える場合も診断につながります。

症状や検査結果によって軽症であれば通院治療が提案されることもありますが、重症であれば入院治療を行って行く必要があります。

入院治療では

  1. 輸液
  2. 制吐薬
  3. 抗菌薬
  4. その他:鎮痛薬、タンパク分解酵素阻害薬、ステロイド薬、ブレンダZなど

が主な治療として行われます。

1.輸液

動物の体で炎症が起きると、血管の外に水分が浸透しやすくなります。その結果循環血液量が低下することが初期の病態の悪化につながると言われています。そのため入院治療では静脈点滴を利用し、十分な輸液を行う必要があります。また、嘔吐や下痢によっても脱水が起きてしまうため補正する必要があります。通院治療でも皮下点滴を行うことで、補液をしていきます。

2.制吐薬

特に犬の膵炎では、多くの症例で嘔吐が見られます。嘔吐による脱水や誤嚥性肺炎のリスクを防ぐためにも制吐薬を使っていくことが勧められます。猫では嘔吐する例は犬よりは少ないですが、悪心によって食欲が低下するため、猫の膵炎でも制吐薬を使うことが多いです。

当院では、『セレニア』という制吐薬を使います。消化器疾患では迷走神経を経由して脳の嘔吐中枢が刺激され嘔吐につながります。セレニアはこの神経刺激の伝達を阻害することで、消化器疾患による嘔吐を抑制します。

3.抗菌薬

犬・猫の膵炎では細菌感染が原因となることはほとんどないため、抗菌薬では膵炎の根本的な治療は期待できません。しかし、特に重症例では感染性の合併症の予防や治療のために使用します。

4.その他の薬剤

(1)タンパク分解酵素阻害薬

膵臓はタンパク質を分解する消化酵素を産生・分泌します。膵炎では、このタンパク分解酵素が膵臓から漏れ出たり、異常に活性化することでその病態が悪化します。このため、膵炎の治療にはこのタンパク分解酵素に対する阻害薬を用います。当院では『カモスタット』という内服薬がこの薬にあたります。

(2)ステロイド薬

膵炎による強い炎症は全身生に影響を与えるため、この炎症を抑制することが必要になってきます。ステロイドはこの炎症を抑える薬として膵炎の症例では使われることが多いです。

(3)『ブレンダZ』

ブレンダZとは世界初の膵炎急性期用抗炎症薬です。この薬は、炎症によって白血球が活性化することを抑制し、炎症の拡大を防ぎます。症状にはよりますが、基本的には5日間連続で投与する薬のため、入院もしくは通院が必要になります。

○膵炎の合併症

膵炎では、その強い炎症によって様々な合併症が起こる危険があります。特に、『播種性血管内凝固症候群(DIC)』や『急性呼吸窮迫症候群(ARDS)』は命に関わる合併症です。膵炎などの強い炎症が起きたりやそれにより組織が壊死したりすると、体の中では微小な血栓が作られます。この状態をDICと呼びます。この血栓の形成により様々な臓器の機能が落ちてしまう状態を多臓器不全と呼びます。さらに、血栓を溶かすための機構が活発に働くため、血液が止まりにくくなる止血障害が起こる例もあります。

また、体で炎症が起こった結果、血液中の成分が血管の壁を通り抜け外に出やすくなってしまします。これが肺で起こると、肺胞に水がたまり肺水腫を引き起こします。このような呼吸不全の状態をARDSと呼びます。

このように、膵炎は多い病気ではありますが、悪化すると命に関わる疾患です。嘔吐、下痢、食欲不振など気になる症状があった場合は、早めに膵炎を含めた検査を行い、早期から治療を開始することが大切となります。

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