こんにちは!
最近一気に気温が上がり、夏の陽気を感じるようになりましたが、皆様体調はいかがでしょうか?
気温の変化であったり、暑さによって人と同じように動物たちも体調を崩しやすくなるので、気を付けましょう!
さて今回は、以前にも投稿したことがある「眼瞼炎」の症例のご紹介です。
以前の投稿をご覧になられていない方もいらっしゃると思いますので、まずは簡単に眼瞼炎のご説明からさせていただこうと思います。
眼瞼炎とは
その名前の通りまぶたにできる炎症のことで、瞼の一部または全部が赤くなったり腫れたりする状態のことです。
〇症状は
・目を掻く、こすりつける
・目の周りが赤くなっている
・まぶたが腫れている
・目の周り、あるいは中から出血している(重度)
などが見られます。これらは片側だけに見られることもあれば、両目ともに見られることもありますが、原因を考えるときに片側なのか、両目なのか大切になってきますので、お家のワンちゃんが目にこのような症状がある場合にはしっかりチェックしましょう!
では原因は何でしょうか?
〇原因は大きく分けると
・感染(寄生虫や細菌、真菌)
・自己免疫性
・アレルギー
などに分けられます。
診断は目の検査を実施します。感染がないかどうか、眼瞼炎なのかどうかも含めてみていきます。
感染と自己免疫性の場合では、使用するお薬が真逆になってくるので、治療をする前に感染がないかしっかりと検査をする必要があるのですが、感染性の場合は多くは片側のみ、自己免疫性やアレルギーの場合には多くは両側に出てくると言われています。
治療法は主に内服薬での治療と目のかゆみがひどい場合にはエリザベスカラーをつけてもらいます。目のかゆみがひどい場合には、こすることで悪化してしまったり、目の中に傷ができてしまったりするためです。感染であれば一時的なものなので、症状がなくなれば薬をやめることができます。一方で、自己免疫性の場合にはお薬を減らすことはできますが、完全にお薬を止めてしまうと再発することが多いため、完全に止めることは難しいです。
眼瞼炎は通常適切な治療を開始すれば軽度あれば1週間ほどで腫れが症状の改善が見られてきますが、稀に重度の眼瞼炎では1週間ほどお薬を続けなければお薬が効き始めず、1週間のうちに悪化していってしまうケースがあります。
今回はそのような重度の眼瞼炎の症例で治療が奏功しましたので、治療経過をご紹介していきます。
症例紹介
症例は若齢のトイプードルで、目から出血しているとのことで来院されました。
来院時の目が下の写真です。
目の周りが腫れて(緑丸)かさぶた(黄色矢印)ができているのが分かります。また、瞼の裏側も充血(赤矢印)しており、少し触るだけで出血してしまうような状態でした。
この症例は、4日ほど前に自己免疫性の眼瞼炎を疑い、高容量のステロイド剤と抗生物質を飲んでいたにも関わらず、目をこすり続けており、出血してしまったと考えられました。
通常であれば、高容量のステロイド剤であればすぐに効果が得られるのですが、今回の症例のように重度の眼瞼炎の場合には上述したように効果がなかなか現れず、効果が出始めるまでに1週間ほどかかってしまったり、ステロイド剤だけでは効果が得られず別の免疫抑制剤を追加することがあります。
今回の症例は飼い主様とご相談したうえで、ステロイド剤に合わせて免疫抑制剤を追加して、入院での治療に切り替えていくこととなりました。ただ、免疫抑制剤の効果が出るまでには2週間ほどかかってしまうので、それまではステロイド剤の効果を見ながらエリザベスカラーで目の保護を実施しました。
入院2日目の目の状態(左)と入院後7日の目の状態(右)です。まぶたのかさぶたもなくなり、腫れも引いたのが分かるかと思います。
この状態となって、目の中の充血も引いてきて痒みもなくなりましたので、退院となりました。
この症例は、現在も免疫抑制剤と減薬したステロイド剤を服用していますが、免疫抑制剤がしっかりと効いてくれているので、症状の再発もなくステロイドは順調に減薬できています。
ただ、この症例のように重度の眼瞼炎の場合には、前にもご説明した通り、今後も免疫抑制剤も完全になくしてしまうと症状の再発が出てきてしまうため、慎重に減薬していく必要がありますが、生涯お薬は飲まなければなりません。
このように、眼瞼炎でも軽症のものから重度のものまで症状は様々ですが、いずれにしてもしっかりと検査して治療することが重要です。
眼瞼炎は繰り返す場合が多いですが、続けられる治療を一緒にご相談しながら治療していきましょう!
また、当院では眼科専門外来も行っておりますので、何度も繰り返す眼瞼炎やなかなか治らない眼の症状でお悩みの場合には、一度当院の眼科にご相談ください。
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