動物は痛みを感じにくい?は大間違い!
動物は我慢強く、痛みを隠そうとします。一見平気そうでも、痛みの発生メカニズムは人間と同じです。
痛みは身体のSOSで、組織の修復には必要な生体反応ですが、それを放っておくとどうなるでしょう。痛くて食が進まず栄養状態の悪化、交感神経系を刺激し、局所の血流を低下させるため創傷治癒の遅延、神経内分泌系に影響し免疫力の低下といった、二次的な弊害も知られています。痛みによる過剰な神経興奮は、傷の治りを悪くする恐れさえあるのです。
また、発痛物質は連鎖的にどんどん増大するため、終わりの見えない痛みは精神的にもつらいものです。
私たちと会話できない動物にこそ、実質的な損傷に対する鎮痛だけでなく、精神面を考慮した鎮痛が必要であると考えます。
ペインコントロールで押さえたい2つの考え方
ペインコントロールでは、
・動物が痛みに暴露される前に鎮痛薬を投与する先取り鎮痛
・様々な薬剤を組み合わせ、それぞれの薬剤の投与量を減少させ、副作用の発生を低下させるマルチモーダル鎮痛
の実践が提唱されています。
先取り鎮痛法
これは手術のように侵襲刺激による痛みが発生するおそれがある場合、手術前に鎮痛薬を投与することで、鎮痛治療を開始する手法です。
手術後の痛みを緩和し、鎮痛薬の必要量を減らすことができます。痛みによって神経が過剰興奮状態になると、より多くの鎮痛薬が必要となるため、鎮痛薬の必要量を下げることは副作用のリスクを下げることにもつながります。
また、鎮痛薬の鎮静作用によって麻酔導入薬の量も減らすことができるため、麻酔導入薬による無呼吸や血圧低下を抑えます。
マルチモーダル鎮痛
作用経路の異なる複数の鎮痛薬を併用する手法です。
単一の鎮痛薬では、満足できる鎮痛作用が得られない場合や、痛みを抑えるために投薬量が増えてしまい副作用の発生が懸念される場合がありますが、作用の異なる鎮痛薬を複数併用することで、ひとつひとつの鎮痛薬の投薬量を減らし副作用の発生を抑え、より高い鎮痛効果を得ることが期待できます。
当院でのペインコントロール(避妊去勢手術時の例)
中枢作用性オピオイド
オピオイドそのもの、およびその代謝産物の両方の活性によってμオピオイド受容体で鎮痛効果が生み出されます。鎮痛補助役として有用で、後述のNSAIDsと併用すると相乗作用でより強力な鎮痛効果が現れます。
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
COX(シクロオキシゲナーゼ)の酵素反応を阻害することで、PGE2(プロスタグランジン2;起炎物質、発痛増強物質)の合成を抑制し、抗炎症、鎮痛、解熱作用を発揮します。
避妊去勢手術の退院後には、おうちで原則3日間NSAIDsの投薬を続けていただきます。
アミド型局所麻酔薬
手術創部に直接、無菌的に湿潤させる麻酔鎮痛薬です。
神経軸索の細胞膜ナトリウムイオンチャネルと結合しナトリウムイオンの透過性を低下させ、神経脱分極が起こらないようにすることで、興奮の発生と伝導をブロックします。
体調や痛みの原因・強さによってさまざまな鎮痛薬を適切に使っていきます。
ペインコントロール・麻酔についてご不安なこと、ご質問などございましたら遠慮なくお問い合わせください。
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