今回は、当院の皮膚科専門外来・荒井先生の診察から多いお悩みをピックアップしてご紹介いたします。
〇気が付くといつもやっている…かゆみのサイン
- 手足を舐める、噛む
- 首~背中を掻く
- 背中を床にこすりつける
患者さんは、様々な仕草で私たちにかゆみを訴えています。
かゆみを放置していると、舐め壊し・掻き壊し(舐め・掻きすぎて脱毛や出血すること)、そこから感染・炎症を起こし、ますますかゆみが強くなり…と悪循環に陥ってしまうため、早めに病院へおいでいただくことをお勧めしています。
〇何が原因?複数の要因が絡み合って起きている場合が多数!
乾燥肌
皮膚の真皮層の約70%を占めるコラーゲンが不足した状態は、トイプードルやミニチュアシュナウザーで多く見られます。肌の水分量および弾力性が低下によって、皮膚バリア機能が低下すると、様々な刺激に対して弱い肌になってしまい、かゆみ・フケ・薄毛を引き起こすことがあります。
亜鉛の不足
亜鉛は皮膚・毛を構成するコラーゲンとケラチンの合成において重要なミネラルです。特に換毛期に不足するおそれがあり、皮膚・毛の質に大きくかかわります。手作りフードを食べている子で、見落としがちな栄養素です。
外部寄生虫感染(ノミ、マダニ、シラミなど)
同居さん、ご家族にかゆみはありませんか。意外なことに、外部寄生虫は身近な草むらにも潜んでいます。ノミの唾液に対してアレルギー反応を起こす場合もあり、これは寄生した虫体数にかかわらず、かゆみ、発疹、脱毛などが見られます。また、マダニでは寄生によるかゆみのみならず、マダニが媒介するSFTS重症熱性血小板減少症候群感染症といった怖い人獣共通感染症の存在も知られています。月に1度の予防はしっかり行いましょう。
真菌(カビ)感染
マラセチア皮膚炎は常在真菌(健康な時もいつも皮膚にいる真菌)であるマラセチアが、アトピー性皮膚炎や甲状腺機能低下症などをきっかけに増殖し、かゆみと同時に皮膚の赤み、発疹をもたらす皮膚炎です。慢性化すると皮膚がゴワゴワと固くなります(苔癬化)。ワンちゃんやネコちゃん、人間にそれぞれ特異的な真菌ですので、同じマラセチア真菌がうつることはないと考えられています。
皮膚糸状菌症は、代表的な2属の真菌が表皮、毛、爪に侵入・増殖して起こる感染症で、円形の脱毛、フケ、脱毛部位の赤み(炎症)が特徴です。脱毛部位に二次感染(皮膚糸状菌の感染によって抵抗力が弱まっている部分に、別の微生物が感染すること)が起こると、かゆみを伴います。こちらは人にもうつる可能性があるので、皮膚に丸い赤みが出た場合には皮膚科の病院を受診されてください。
アトピー性皮膚炎
環境抗原(ハウスダスト、花粉、カビなど)に対する過剰な反応が皮膚に起こることによって、かゆみを伴う皮膚炎症状が引き起こされると考えられています。これらの抗原は皮膚から侵入してくるため、アトピックドライスキン(アトピーの乾燥肌)を改善し、皮膚バリア機能を高めることは症状緩和の一つになります。1歳以上3歳未満で最もよく発症し、手足(特に指の間)、耳・顔、脇・股の下、お腹周りが赤く、猛烈なかゆみを伴います。慢性化すると脱毛、苔癬化、色素沈着が見られます。環境抗原を完全に排除するのは不可能であり、完治は難しいと言われています。現状では、症状を鎮めることを目標に生涯付き合っていく病気です。
〇検査の内容
テープストリップ検査
皮膚のかゆい部分(患部)にテープの粘着面を貼り付け、皮膚表面の細胞を採取します。これを染色し顕微鏡で観察すると、皮膚の角質細胞の状態や、異常に増殖した細菌・真菌を評価することができます。患者さんは痛みをほぼ感じることなく進めることができる検査です。
アレルギー検査
アレルギー性皮膚疾患(アトピー性皮膚炎や食物アレルギー性皮膚炎)におけるアレルギー検査は今後の生活方針を決めるため有用です。当院で採血をさせていただき、検査機関に検査を委託するため、結果のご説明まで2週間程度お時間をいただきます。
VAS visual analog scale(問診)
かゆみの程度を10段階で評価する手法です。
現状を把握し、治療に対する反応性を評価するためにも有効ですので、ご受診前に患者さんの1日のご様子をぜひ見てあげてください。
様々な要因が絡み合って起こるかゆみ。複雑であるほど診断は困難です。
上記は一例ですので、皮膚科外来の問診・検査で一緒に原因を見つけていきましょう。
<荒井先生の診察>
皮膚のお悩みは、検査はもちろんのこと、患者さんをよく見ていらっしゃるご家族への問診もとても重要です。荒井先生は、丁寧な問診と患者さんへストレスの少ない診察に定評があります。
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