避妊手術
今回は、太陽ちゃん(ヤンちゃん・ペキニーズ・女の子・6か月齢)の避妊手術の様子をレポートします!
<術前検査>
避妊手術を行う前に、まずは麻酔をかけても問題ないかどうか検査(血液検査と胸部レントゲン検査)を行います。血液検査で、麻酔を代謝し排泄する臓器の機能や、電解質のバランス、血液凝固が正常に行われるかどうかを評価します。胸部レントゲンで心臓の拡大や肺に異常がないかを評価します。
この検査に合格すれば、手術の日程を決めます。他の方の手術の予定にもよりますが、通常は検査の翌日~2週間くらいを目処に手術の日程を組みます。
<手術当日>
当日の朝は、消化の良いリキッドのごはんを食べてもらいます。これにより、絶食状態よりも手術中に体温が下がりにくくなり、麻酔からの覚醒がスムーズになります。
午前中に病院へいらしていただき、静脈点滴を開始します。手術中の血圧低下を防ぎ、安定した麻酔のために必要です。手術の前に痛み止めのお注射(効果発現に2時間程度かかるとされています)をお打ちします。
お昼の時間帯に手術を開始します。麻酔導入薬を静脈から入れて、体の力が抜け始めたら、寝ている間にも呼吸ができるよう気管にチューブを挿管します。このチューブから、酸素と吸入麻酔薬を入れます。吸入麻酔薬は体内から代謝・排泄される速度が速いため、麻酔中の心電図・呼吸・血圧・体温・反射の有無などの情報をもとに、麻酔の量を即座に調整することができます。当院では、いずれの手術においても獣医師が麻酔を管理いたします。
卵巣・子宮を摘出時、今回は血管シーリングシステムを使用しました。これまでは血管結紮のために縫合糸を使用していましたが、こちらを使用することで血管を焼き切り、挫滅させることができます。縫合糸を体内に残すことで、まれに肉芽腫を形成するおそれがありましたが、こちらを使用した場合、その心配はありません。
縫合時に術創には局所麻酔薬を注入し、疼痛軽減を行います。麻酔をかけ始めてから30分以内で手術は終了しました。傷口は2CMほどでした。
麻酔からの覚醒時、ネブライザー治療(霧状にした炎症を抑えるお薬を吸入する治療法)を行います。これは、気管にチューブを挿管した際に起こる気管の炎症を抑える働きがあります。
覚醒後には酸素濃度と室温を管理できるICUに移動し、落ち着くまで状態をみさせていただきます。ヤンちゃん、麻酔から覚めても少しぼんやりでしたが、手術終了から数時間で意識がはっきりしてきました。
<手術翌日>
エコーで腹水の貯留が起きていないか、また術創に問題がないか確認し、異常がなければ、朝はお腹にやさしいごはんを食べて、お迎えを待ちます。
退院時、エリザベスカラーかエリザベスウエアの着用をお選びいただきます。
患者さんが術創を気にして舐めてしまうと感染のリスクがあるため、術後から10日間前後(術創の状態によって獣医師から指示がございます)は必ず着用していただきます。
カラーは適切に着用していれば、このような事態からしっかり守ってくれますが、患者さんが慣れるまで、家具やクレートにぶつかったり引っかかってしまう場合が多く、ストレスになりかねません。
ウエアはそういったストレスは少ないですが、着用を嫌がる患者さんも少なからずいらっしゃるのと、やんちゃな患者さんでは破いたり脱いでしまうおそれがあります。
患者さんの性格によって、オーナー様が選んであげてください。
ヤンちゃんはエリザベスウエアを着て退院です!
<術後のチェック>
おうちでは痛み止めのお薬と、感染予防の抗生剤を飲んでいただきます。
手術後3日を目安に一度術創を見せにいらしていただき、感染の有無・異常がないか確認します。
順調であれば手術後10日ほどで抜糸を行い、避妊手術は終了となります。
よく頑張りました!
避妊手術は、女性ホルモン起因性の腫瘍を予防するために極めて有用です。
避妊手術をしていない場合では約25%の割合で乳腺腫瘍が発生するのに対し、初めてのヒートが訪れる前に避妊手術を行った場合、同腫瘍の発生率は 0.5%と非常に低くなります。
また、卵巣や子宮の病気を根本的に防ぐことにもなります。
当院では、繁殖の意思がおありでない場合には、早め(およそ6か月齢以降~初めてのヒートが来るまでの期間)の避妊手術をお勧めしています。
渋谷、恵比寿、代官山の動物病院(年中無休、年末年始も診察している動物病院)
HALU動物病院
03-6712-7299