今回は猫ちゃんの皮膚病、特にアレルギーによって出てくる症状についてご紹介します。
皮膚病というと、猫ちゃんよりもワンちゃんのイメージの方が強い方もいらっしゃるかと思いますが、猫ちゃんでも皮膚病は見られます。
猫ちゃんの皮膚病の症状は
- 頭頚部掻把痕:頭や首に引っかき傷ができる症状
- 粟粒性皮膚炎:皮膚に小さなぶつぶつがたくさん見られる症状
- 好酸球性肉芽腫群:下腹部や後肢、頚部にできやすく、皮膚をなめ壊して潰瘍のように見える症状
- 外傷性脱毛:皮膚をなめることで毛がちぎれて脱毛してしまう症状
の大きく4つに分けられます。
これらの原因は様々で、感染やノミなどの寄生虫、あるいはアレルギーなど検査をしなければ原因の特定は難しいです。
今回は4つの症状の中でも、③の好酸球性肉芽腫群についてご紹介していきます。
好酸球性肉芽腫群とは?
上にも書きましたが、好酸球性肉芽腫群とは、主に下腹部や後肢、頚部にできやすく、皮膚をなめ壊して腫瘍のように見える症状なのですが、「群」と言われているだけあって、この症状だけではありません。
好酸球性肉芽腫群とは
- 無痛性潰瘍
- 局面
- 線状肉芽腫
の3つの症状に大きく分けられ、これらの症状を総称して好酸球性肉芽腫群と言います。
①の無痛性潰瘍は下の写真のような症状です。
唇や口の中に潰瘍ができる症状で、無痛性という名前ですが本来は痛みがあるのではないかと言われています。
②の局面は下の写真のような症状です。
猫ちゃんの舌がザラザラしている影響で、皮膚をなめ壊してしまい脱毛したところに、湿った平たい潰瘍です。
③の線状肉芽腫は下の写真のような症状で、線状の肉芽ができています。
①~③はすべて痒みもあり、猫ちゃんがなめていて症状に気づかれて来院されることが多いです。
さて、好酸球肉芽腫群の症状についてご説明しましたが、原因は一体何なのでしょうか?
原因は上にも書きましたが、本当に様々で、感染やノミアレルギーや、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎などと言われています。特に、ちゃんのアトピー性皮膚炎は家族歴なども関与していると言われており、発症年齢は0.5-4.8歳と言われており、後発猫種はアビシニアンです。
診断法は、これらの症状がある部分から好酸球が検出されれば診断が可能で、下の写真のようなピンクの顆粒を含む細胞が好酸球です。
主な治療法
治療法は、基本的には内服薬での治療になりますが、最近では内服薬による副作用も考慮して、舌下免疫療法という治療法も注目されています。
内服薬では、ステロイドや犬アトピー性皮膚炎の治療薬によって痒みを抑えたり、免疫抑制剤の使用により免疫反応を抑え、アレルギー反応を抑えるといった治療になります。
では、実際に好酸球性肉芽腫群の局面が見られた猫ちゃんの症例をご紹介します。
症例紹介
症例は6歳のMIXの猫ちゃんで、下腹部とかかとの部分にできものができたとのことで来院されました。
下の写真が来院されたときの状態です。一見皮膚腫瘍のように見えますよね。しかし、これがご説明した局面で、頻繁に舐めているため周囲の毛が濡れていますね。
皮膚の検査では、これらの局面すべてから好酸球が検出されましたので、好酸球性肉芽腫群と診断しましたが、その原因はその時点でははっきりしませんでした。
まずはノミアレルギーを除外するためにノミダニ駆除薬の塗布、感染を否定するための抗生物質の投与、痒みを抑えるためのステロイドの内服を使用しました。
しかし、1週間後、明らかな改善は認められず、痒みは継続しているとのことでしたので、免疫抑制剤の併用を行いました。
このことから、この猫ちゃんはノミアレルギーや感染ではなく、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の可能性が高いと判断されました。
2週間後の再診時には痒みが少し減っているようで、少しずつ病変が乾いてきていました。
現在でもいまだに毛が生えるまでではありませんが、病変は小さくなってきていて、経過は順調です!
この猫ちゃんは症状が完治しているわけではないので、まだ免疫抑制剤は減らせていませんが、今後は減薬していく予定です。
好酸球肉芽腫群は、多くはアレルギーが関与していますが、食物アレルギーだけなのか、アトピー性皮膚炎なのか、あるいは両方の関与があるのかは、アレルギー検査や除去食試験(食物アレルギーの検査)をしてみないと分からないことも多くあります。
また、上でも少し書きましたが、ステロイドや免疫抑制剤は症状が好酸球性肉芽腫群についてはよく効きますが、良くなってきたら減薬できるとはいえ、ずっと続けると副作用が出ていないか、副作用によって薬の変更をせざるを得ないこともあります。
そういった時には、当院では舌下免疫療法という治療法をお勧めしています。
舌下免疫療法についてご興味があれば、詳しくは一度当院へご相談ください。
最後に
わんちゃんのアトピー性皮膚炎では、スキンケアの重要性が近年言われていますが、普段からグルーミングをして水を嫌う猫ちゃんのスキンケアはワンちゃんよりも難しいと言われています。
当院では、皮膚科専門診療も実施しておりますので、猫ちゃんだけでなく、ワンちゃんの皮膚に関してもなかなか維持やコントロールが難しい場合には、一度お気軽にご相談ください。
猫の診療所(HALU+代官山動物病院)
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